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2012年9月28日 (金)

論理の通らない原子力行政/花づな列島復興のためのメモ(145)

原子力行政は分かりにくい。
原子力発電等の仕組みはともかく、行政とかその前提となる政治判断の論理が矛盾だらけなのだ。

たとえば、新設された原子力委員会の再稼働の判断基準である。
原子力委員会の田中俊一委員長は、年度内に新たな安全基準を定め、来春にも再稼働の判断を行うとした。

 原子力規制委員会の田中俊一委員長は26日の記者会見で、設置法で来年7月までとされた原発の新たな安全基準の策定について、「年度内にほぼ完成形をまとめる」と述べた。再稼働が可能になる時期については「安全審査で合格すれば再稼働できるが、審査に何年かかるとは一概に言えない」と明言を避けた。
 また田中委員長は、原発事故時に住民避難などの対応の基本となる防災指針や、これに基づき立地市町村が定める地域防災計画について「防災指針だけでは不十分。(再稼働の)法的条件ではないが、地域の防災計画ができないと最低限の条件はそろわない」と指摘。10月までに行う指針の改定だけでなく、来年3月までに策定される防災計画の整備が終わらなければ、再稼働すべきではないとの見解を示した。

http://www.jiji.com/jc/eqa?g=eqa&k=2012092600905

これだけ読めば、再稼働の是非について判断基準が定められ、それがクリヤされるまでは稼働は「否」ということになると思うだろう。
ところが、あれだけ再稼働反対の声が高まっている大飯原発に関しては、再稼働は「是」だという。
その理由は、「政治的判断を覆せない」ということだから、本末転倒である。
さっそく、橋下大阪市長から、批判の声が上がった。

 新党「日本維新の会」代表となる橋下徹大阪市長は27日、7月に再稼働した関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)をめぐり、原子力規制委員会の田中俊一委員長が「政治的判断での稼働」を理由に再停止に難色を示したことについて「委員会の存在意義を問われる論理矛盾だ」と批判した。「政治を考えずに安全性を追求するのが委員会の設立趣旨」とも強調し、維新合流議員を通じて国会で真意をただす考えを示した。
 田中委員長は26日の記者会見で、大飯原発の再停止について「政治的に社会的条件を判断して稼働させたものを、何の根拠もなく止めなさいというのは難しい」と発言した。
 これに対し、橋下氏は「委員長自ら政治に判断を委ねてしまっている。委員会がご破算になるくらいの大問題だ」と批判。維新幹事長の松井一郎大阪府知事と連携し、大阪府市として大飯原発の再停止を求める意見書を同委員会と関電に提出する考えを示した。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120927/lcl12092721000000-n1.htm

どう見ても橋下氏の方がスジが通っている。
政治的判断を追認するということでは、何のための規制委かということになる。

原発から出る廃棄物処理の問題も論理が逆転している。
現在は、廃棄物は再処理して、再利用されることになっている。
⇒2012年9月 4日 (火):核廃棄物をどうするか?/花づな列島復興のためのメモ(137)
ところが、この核燃料サイクルが長年頓挫したままで、サイクルが閉じていない。

であれば、サイクルが完結するまで廃棄物を出さないようにするか、再利用計画を見直すかしかないだろう。
ところが、枝野経産相は、核燃料サイクルをそのまま継続すると説明している。

 枝野幸男経済産業相は20日、原発関連施設がある青森県の4市町村長と経産省で会談し、原発で使い終わった燃料を再利用する「核燃料サイクル政策」を続ける方針を改めて説明した。「2030年代に原発稼働ゼロ」をめざす革新的エネルギー・環境戦略の考え方については、「原発ゼロは目標」などと語ったという。
 会談後にむつ市の宮下順一郎市長が明らかにした。会談で宮下氏らは「原発ゼロと核燃料サイクルの継続との整合性はなぞめいていて、理解できない」と主張した。枝野氏は「(核燃料サイクル継続の)約束を守りながら、ゼロにしていきたい。ゼロにできるか見極めは難しいが、まずやってみる。ゼロは目標である」と答えたという。

http://www.asahi.com/politics/update/0920/TKY201209200623.html

枝野氏の発言は看過できない。
それは「核燃料サイクル政策」と「革新的エネルギー・環境戦略」が矛盾しているだけではない。
「核燃料サイクル政策」の継続自体、すでに破綻していることをあたかも順調に進んでいるかのように言い繕っていることが、誠実な態度とは言えまい。

 核燃料サイクルの中心にあるのが、福井県敦賀市の高速増殖原型炉「もんじゅ」である。ところが二十一年前に試運転を始めて以来、事故や事故隠しが相次ぎ、発電できた期間は延べ約四カ月間しかない。
 青森県六ケ所村の再処理工場も、たび重なるトラブルのため、開業が十九回も延期されてきた。十兆円ともされる事業費をつぎ込みながら、リサイクルの輪が閉じる見込みは立っていない。
 現実的に考えるなら「もんじゅ」は速やかに廃炉にし、核燃料サイクル計画は直ちに中止すべきである。欧米諸国はとうに手を引いている。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012092802000119.html

現時点ですでに国内には約1万7千トンの使用済み核燃料があるという。
今までの計画は、再処理して再び燃やせるプルトニウムなどを取り出し、残った廃棄物はステンレス製容器に入れて地層に埋めようということであるが、再処理ができても最終廃棄物の放射能が弱まるまで数万~数十万年以上の長期が必要である。
安全性を危惧する声が強いのは当然であろう。
つまり、最終処分場のメドが立っていないのである。

枝野氏に見られるように、民主党政権の中枢は不誠実であり、論理矛盾を犯していることにも無頓着である。
いくら末期だとはいえ、こんなデタラメを放置しておいていいとは思えない。
付言すれば、原子力政策・行政の骨格は自民党政権時代の負の遺産ともいうべきものである。
その自覚がないのだから、民主党がダメだから自民党に、というわけにはいかない。

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