火事場泥棒的に原子力規制委の人事を行おうとする野田政権/原発事故の真相(46)
野田首相は、大飯原発の再稼働を「私の責任で判断する」と言って、再稼動に踏み切った。
⇒2012年5月31日 (木):野田首相に理はあるか/花づな列島復興のためのメモ(75)
その首相が、原子力規制委員会の人事に原発推進派を起用し、本来は国会の同意が必要なのに、首相権限で強行するという。
国会軽視であるし、無責任の極みでもあるだろう。
国会は、野田首相の問責決議が可決したことにより、事実上閉会して、民自両党は、次の代表者選びに集中している。
問責された側と問責した側のどちらに非があるか?
一概には言えないにしても、問責可決した側が悪い、というように見える政府・民主党に明日はないと思う。
評価のフィードバックなき組織に発展的な存続はあり得ない。
⇒2010年8月 1日 (日):民主党におけるマネジメントの不在
民主党の代表選では、野田首相の対立候補を擁立する動きが活発化している。
「近いうち」に実施されることになっている総選挙の顔として、野田首相は相応しくないということのようだ。
対立候補としては、細野環境相などの名前が挙がっており、細野氏も乗り気のようだ。
しかし、細野氏には疑問を感ずる部分がある。
細野氏は野田政権内では仕事師であるといえよう。
過去に女性スキャンダルが写真週刊誌に載るという脇の甘さもあったが、ルックスの良さで女性受けもいいようだ。
しかし、次のような記事を見ると首を傾げざるを得ない。
細野豪志環境相は30日、東京電力福島第1原発事故の被曝による遺伝子への影響を調べるため、来年度から福島県民を対象に「全ゲノム(遺伝情報)解析調査」に着手する考えを明らかにした。
福島県立医大(福島市)で開いた私的懇談会の終了後、記者団に述べた。
細野環境相は「政府としてしっかりと(福島に)向き合っていく。遺伝子の調査はすぐに不安の解消にはつながらないかもしれないが、人間の根源的な遺伝子を調べることで将来への予防になる」と語った。環境省は子どもを中心に調べる方針。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120831/dst12083100360000-n1.htm
この調査が的外れであることは、次の批判を読めば十分であろう。
まったく馬鹿げたことだ。そもそも遺伝子の異常は、普通の状態でも発生する。とすれば、比較調査をするためには、福島だけでなく多くの地域で同時に調査をする必要がある。なのに、福島だけで調査しても、それは放射線のせいかどうか、区別できない。
また、仮に区別できるとしても、そもそもこの程度の低レベルの放射線では、遺伝子の異常は起こらない、ということは、とっくに調査で判明している。つまり、「無意味」とすでにわかっている調査をすることになる。
( ※ 生物学ではとっくに判明しているが、DNA に影響をもたらすような放射線レベルは、福島の数千倍ぐらいのレベルだ。現状のレベルでは、遺伝子に異常を起こさないことはすでに判明している。ごく稀に起こる分はあるかもしれないが、それは統計誤差に埋もれてしまうレベルだ。要するに、無視できる。……というわけで、政府の調査はまったく無意味。)
http://openblog.meblog.biz/article/11138124.html
こういう調査をすることによって、「福島では遺伝子変異の可能性がある」というメッセージが発信されることになる。
言い換えれば、政府の調査は、無意味というよりも有害である。
発案は細野氏というより、官僚かも知れない。
しかし、細野氏が担当大臣であり、責任を負う立場である。
現状では、「民主党代表=首相」であるが、民主党は次の総選挙で惨敗するであろうから、代表に誰がなってもそれほど問題にすることではないともいえるが。
それよりも、原子力規制委の人事は、まさに「火事場泥棒」のようなものといえよう。
しかもその「火事場」は自ら撒いたものだから、放火犯が泥棒を働くようなものである。
政府側は原子力規制委員会設置法付則二条を根拠としている。「国会の閉会または衆院解散のために両議院の同意を得られない時は、首相が任命できる」との例外規定があるためで、二十六日の委員会設置期限を前に、十一日の閣議で決定する方針だ。
・・・・・・
政府・民主党は、付則に緊急事態の場合は事後同意が必要ないとの趣旨が盛り込まれていることを理由に、次の国会でも同意を求めないことも検討している。東京電力福島第一原発事故後は緊急事態が継続しているとの解釈からだが、国会軽視も甚だしい対応だ。
内閣府原子力委員会新大綱策定会議の委員を務める金子勝・慶応大教授は同意人事に関し「原子力ムラを第三者の立場からチェックする機能だ。政府はそれを骨抜きにしようとしている。国民から信用されない」と指摘した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012090602000131.html
そもそも新設の原子力規制委員会を国家行政組織法第三条に基づく独立性の高い委員会にしたのは、国会事故調査委員会報告にも見られるように、従来の原子力安全・保安院や原子力安全委員会が原発推進派の強い影響下にあったことの反省を踏まえたからではなかったのか?
政府が指名したのは、委員長候補に原子力委員会委員長代理や日本原子力研究開発機構副理事長などを務めた田中俊一氏、委員候補に日本アイソトープ協会主査の中村佳代子氏、日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究部門副部門長の更田豊志氏らである。
しかし、彼らは、核燃料サイクルの推進機関や放射性廃棄物の集荷、貯蔵、処理をする団体の関係者であった。
つまり、原発推進を目指す「原子力ムラ」の住人である。
このような人事を、放火しながら泥棒を働く手口でやろうとしているのである。
現在は原子力緊急事態宣言発令中なので、事後同意も必要ないということらしい。
盗人猛々しいとはこういうことを言うのであろう。
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