柳条湖事件から81年、拡大する反日デモの行方/満州「国」論(2)
81年といえば、平均的な人の一生の時間である。
81年前、日本史の転換点となる事象が発生した。
柳条湖事件である。
百円均一の店で売っている山田美佐子編『日本の歴史事典』大創出版(0411)は、日本史を概観するのに便利であるが、同書の満州事変の項の説明は次の通りである。
一九二八年末に張学良が国民政府と合体し、中国の統一を一応完成した。日本の関東軍は危機感を深め、武力で満州を勢力下に置こうとした。そして、石原莞爾らが一九三一年九月一八日、奉天郊外の柳条湖で南満州鉄道を爆破し(柳条湖事件)、これを中国軍のしわざとして軍事行使を開始し、満州事変が始まった。
関東軍は内閣を無視して占領地を拡大し、世論も軍の行使を支持したので、若槻礼次郎内閣は総辞職し、替わって政友会総裁犬養毅が組閣した。
一九三二年に、軍は満州の主要地域を占領し、清朝最後の皇帝溥儀を執政として、満州国を建国させた。中国からの訴えで国際連盟はリットン調査団を派遣した。
地図で当時の状況を見れば以下のようである。
http://gakuen.gifu-net.ed.jp/~contents/kou_chirekikouminn/sekaishichizu/sww/01_manshyu.html
上掲『日本の歴史事典』の解説は、ほぼ現在の通説的な見解といって良いであろう。
これに対し、たとえば元自衛隊航空幕僚長・田母神俊雄氏が、アパグループ主催の第1回『「真の近現代史観」懸賞論文』において、最優秀藤誠志賞を受賞した「日本は侵略国家であったのか」等に見られる見方がある。
⇒2009年1月10日 (土):田母神第29代航空幕僚長とM資金問題
田母神氏は、この論文において、次のように書いた。
1928年の張作霖列車爆破事件も関東軍の仕業であると長い間言われてきたが、近年ではソ連情報機関の資料が発掘され、少なくとも日本軍がやったとは断定できなくなった。「マオ(誰も知らなかった毛沢東)(ユン・チアン、講談社)」、「黄文雄の大東亜戦争肯定論(黄文雄、ワック出版)」及び「日本よ、「歴史力を磨け(櫻井よしこ編、文藝春秋」などによると、最近ではコミンテルンの仕業という説が極めて有力になってきている。
⇒2009年1月13日 (火):田母神氏のアパ論文における主張②…張作霖爆殺事件
文脈からすれば、柳条湖事件についても、石原莞爾ら関東軍主導説を否定するものであろう。
この事件は、日中戦争の導火線となり、戦火はやがて東亜・太平洋地域に拡大し、第二次世界大戦の一部となって、日本国は壊滅的な敗戦に至る。
つまり81年前の9月18日は、近現代の日本史上の大きなターニングポイントだった。
いままた、尖閣諸島の国有化をきっかけとした反日デモが中国全土に拡大している。
日本の尖閣諸島の国有化に抗議する中国の反日デモは16日、前日に続き数十都市で起きた。一部が暴徒化し、日系商業施設などが襲われた。日系企業には被害を恐れ、休業などの動きが出ている。広東省深セン(センは土へんに川)市ではデモ隊が中国共産党委員会の建物に押し入ろうとして治安当局と衝突。当局が催涙弾を撃つなどの騒乱状態となった。
今回の一連の反日デモで、党機関にデモ隊が押しかけたことが確認されたのは初めて。中国社会の反日感情が、党や政府への不満の噴出につながりかねないことを浮き彫りにした。![]()
http://www.asahi.com/international/update/0916/TKY201209160320.html
雲霞のごとく押し寄せてくる船団の映像は、遙かいにしえの白村江における唐の船団のことを想起させるものがあった。
尖閣に領土問題は存在しないというのがわが国の立場である。
しかし現実に反日デモは拡大している。
隣国との関係は難しいのが一般的ではあるが、対立よりも友好が望ましいのはいうまでもない。
私は東京都が交渉しているものだとばっかり思っていたが、知らぬ間に国有化ということになっていた。
国有化の是非はともかく、野田政権はコトを急ぎ過ぎたのではと感じる。
少なくとも、唐突な国有化の意思決定の過程を国民に説明すべきではないか。
反日デモが反政府デモに転化するかどうかは分からない。
しかし中国政府・共産党にとっては、内政に対する不満を外に向けるという常套手段が、両刃の剣になる可能性も否定できない。
毛沢東の肖像画を掲げるデモに、文化大革命時代の残像を見るような気がした。
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