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2012年8月 1日 (水)

水俣病救済特別措置法の申請締め切り/花づな列島復興のためのメモ(122)

水俣病被害者救済特別措置法(特措法)に基づく救済策の申請が、7月31日締め切られた。
特措法は、水俣病の症状がありながら国の基準では水俣病と認められない被害者に一時金などを支給するものである。
最終的な申請者数は、熊本、鹿児島、新潟の3県で約6万人に上る見通しで、国の想定を大きく上回る。

細野豪志環境相は、申請者が国の当初見込みの3万人を大きく上回ったことについて、「周知広報を徹底してきた。あたう限り(可能な限り)の救済へ努力してきた結果だ」と述べた。
しかし、申請締め切りによって、すべての被害者が救済されることになるわけではない。
細野氏は、8月以降の対応は、改めて8月に説明したい、としているが、環境省の担当者は、今後の救済については行わない方針であるといっている。

「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法」は、「水俣病問題の最終解決を図り、環境を守り、安心して暮らしていける社会を実現すべく、この法律を制定する」とうたっている。
申請締め切りによって、「水俣病問題の最終解決」は図られたと言えるのだろうか?

「水俣病問題の最終解決」は、法律が第三条で規定しているように、「継続補償受給者等に対する補償が確実に行われること、救済を受けるべき人々があたう限りすべて救済されること及び関係事業者が救済に係る費用の負担について責任を果たすとともに地域経済に貢献することを確保すること」である。
とりわけ「救済を受けるべき人々があたう限りすべて救済されること」は重要である。
もし、7月31日で線引きを確定させるとなると、「救済を受けるべき人々があたう限りすべて救済されること」にはならないのではないか?

水俣病患者救済の経緯を見てみよう。
Photo_2
http://news.livedoor.com/article/detail/6781422/

水俣病の発生が公式確認されてから、56年が経過した。
この間の救済の歴史は、国の認定基準が厳格すぎて認定されない患者が、裁判などを通じて救済を求める、という図式であった。
特措法が、水俣病関西訴訟最高裁判決(2004年)で、国の認定基準より幅広い基準が採用されたことを受け、認定基準見直しと救済拡大を期待する認定申請者が急増したことに対応するために、議員立法で成立した。
国は、立法の趣旨に立ち戻って、今後の対応を考えるべきであろう。

そもそも、「損失(費用)の社会化と利益の私物化」が公害問題の基本構造である。
渡良瀬遊水地もしかり、福島原発事故もしかり、である。
⇒2012年7月11日 (水):渡良瀬遊水地と福島原発事故/花づな列島復興のためのメモ(107)

「水俣病問題の最終解決」に近づいていくために、以下のような条件・検証が必要であろう。
1.認定基準の適切性
2.補償の適切性
3.加害企業の負担の適切性

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