水俣病と福島原発事故/「同じ」と「違う」(49)/因果関係論(18)
将来の原発比率に関する国民の意見の聴取会が、1日福島市で開催された。
原発事故の被災地では、従来のような欺瞞的な方法はとても通用しなかったようだ。
3つの選択肢を「公平に」扱う方式ではなく、発言希望者から無作為に選ばれた30人が1人5分で意見表明した。
事故収束宣言や大飯原発再稼働など、福島原発事故を教訓にすることを全く考えないかのような政府に、不信感と怒りの声が集中した。
そもそも、選択肢の設定そのものが欺瞞的なのである。
⇒2012年7月13日 (金):将来の原発比率と「討論型世論調査」/花づな列島復興のためのメモ(109)
⇒2012年7月15日 (日):エネルギー・環境会議の意見聴取会の実態/花づな列島復興のためのメモ(111)
前日の7月31日は、水俣病特措法による救済の締切日だった。
私たちは、水俣病救済の教訓を福島原発に生かすことを考えなければならないだろう。
水俣病は未だに被害の全容が分からないといわれている。
大阪市大の除本理史准教授(環境政策論)は、福島原発事故と水俣病の共通性として、以下を指摘している(静岡新聞120801)。
1.健康被害の実態解明の必要性
2.国による被害者の線引き
3.原因企業を国が支援
水俣病の原因物質がメチル水銀化合物であることは、すでに1960年代には知られていた。
熊本大学研究班は、1962年夏頃に、アセトアルデヒド製造工程スラッジ(排出汚泥)から、塩化メチル水銀を抽出することに成功し、1963年2月、水俣病は水俣湾産魚介類を摂食することにより発症し、その原因毒物はメチル水銀化合物と正式に発表した。
しかし、政府が水俣病についての正式見解として、チッソ水俣工場アセトアルデヒド設備内で生成されたメチル水銀化合物と断定したのは、1968年9月26日であり、熊大発表の実に5年半後であった。
⇒2009年7月 9日 (木):水俣病の原因物質
相当因果関係説に立てば、ずっと早い段階で、水俣病がチッソ水俣工場の廃液に起因すると考えるべきであっただろう。
しかし、水俣病の病像や発生機序についてはさまざまに考えられ、厳密な意味での因果関係が完全に立証されているともいえない。
たとえば、西村肇、岡本達明『水俣病の科学 』日本評論社(0106)は、因果関係について完全に解明しえたかのように思われる労作であるが、これに対してもなお、工場からのメチル水銀の排出の実態等については異論が存在するのである。
⇒水俣病研究会編『水俣病研究Vol.3』弦書房(0406)
東洋医学に未病という概念がある。
http://kenko100.info/health/mibyou/
最近はTVのCMなどでもよく使われている。
健康と病気のグレイゾーンである。
公害による健康被害や放射能の被曝についても、同様のゾーンが考えられよう。
たとえば、被曝の影響は次図のように示される。
http://blog.livedoor.jp/bia/
線引きを厳格に行おうとするあまり、未然の被害者が救済対象から外されるようなことがあってはならないだろう。
その意味で、救済申請に締切日を設け、その後の申請を受け付けないということには疑念が残る。
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