今の時点で、消費増税すべきなのか?/花づな列島復興のためのメモ(127)
消費税増税法案が参院で可決・成立した。
消費増税を含む一体改革関連法案は10日夕の参議院本会議で、民主、自民、公明など与野党の賛成多数で可決、成立した。投票総数237のうち、賛成188、反対49。
本会議で採決したのは増税、年金、子育て関連6法案と3党で共同提出した社会保障制度改革推進法案、認定子ども園設置法改正案。
法案の成立で消費税は2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げられる見通しとなった。ただ、実際の引き上げは経済状況を勘案して時の政権が判断することになる。景気条項として名目3%、実質2%の成長を政策の努力目標とする。
消費増税で見込まれる新たな税収は13兆5000億円。全額を社会保障4分野に充てる。消費増税に伴う低所得者対策を実施することも法案には盛り込まれているが、8%への引き上げ時は一時的な現金給付、10%に引き上げる際は給付付き税額控除もしくは軽減税率の導入となる見通し。
社会保障制度を議論するための社会保障制度改革国民会議を設置する。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPT9E8H101820120810
実際の引き上げは経済状況を勘案して実施されるが、増税はわが国経済にどのように影響するだろうか?
日経新聞はもちろんのこと、朝日、毎日、読売、産経といった全国紙はこぞって増税を後押ししてきた。
他方、地方紙には批判的な論調が少なくない。
⇒2012年6月 7日 (木):何のための政権交代か?/花づな列島復興のためのメモ(79)
⇒2012年6月18日 (月):消費税と政界再編成/花づな列島復興のためのメモ(88)
私は、消費税増税については、よく理解できない部分があるが、反対派の方が説得力があるように思う。
⇒2012年6月25日 (月):造反有理?/花づな列島復興のためのメモ(93)
たとえば、原英次郎・ダイヤモンド・オンライン編集長も『小沢グループの造反に理あり 理念を掲げて総選挙を実施せよ』と述べている。
http://diamond.jp/articles/print/20611
その論旨は大要以下のようである。
今回の消費増税には、反対せざるをえない。
最も大きな理由は、明確な民主主義のルール違反である。03年の衆議院選挙以降、各政党が発表するマニフェスト選挙がようやく根付き始め、09年の衆議院選挙では、国民はマニフェストを参考にして民主党に投票し、政権交代を実現させた。
そのマニフェストでは行政のムダをなくし、財源を組み替えることで、16.8兆円の財源をねん出して、増税は行わないと言っていたはずだ。実際の消費税率引き上げが、民主党の政権担当期間中より後に行われるから、マニフェスト違反ではないというのは、全く国民を馬鹿にした詭弁としか言いようがない。
二つ目の理由は、社会保障・税一体改革の問題の本質が、国民1人1人に十分に理解されているとは言えないことだ。日本の社会保障制度は、長い自民党政権下において、対症療法を重ねてきた結果、非常に複雑な仕組みとなっている。
社会保障制度の中心は年金、医療、介護だが、最も大きいのは年金であり、また問題の本質はほぼ同じである。年金を理解するキーワードは、「賦課方式」と「積立方式」、それに「社会保険方式」と「税方式」の4つである。現在、日本の公的年金は、賦課方式でかつ社会保険方式である。
国民が知りたいのは、今後、ますます労働力人口が減り、高齢人口が増える中で、現状の社会保障制度のままでよいのか、それとも抜本的な改革が必要なのか、それぞれの場合に、長期的な負担と受給の関係はどうなるのかということだ。結局、その道筋は示されることなく、消費増税だけが先行されようとしている。しかも消費税の使途が社会保障に限定されたために、社会保障が赤字だから、大切な社会保障を維持するために、という理由でいくらでも増税が可能になりかねない道を切り開いてしまった。
社会保障と税のあり方は、国のかたちでもある。自己責任を重視し、格差を受け入れるのか。格差を小さくするために、再配分を重視する社会を目指すのか。まずは、その理念が求められる。理念が明確にならなければ、4つのキーワードを組み合わせて政策を練り上げることができない。
理念と政策を同じくするものが結集しない政党は、結局のところ分裂せざるを得ない。今回、消費増税が実現したとしても、国民の信頼を失った政党・政治家が、さらなる国民負担を求めることに国民は納得しないだろう。
大筋において納得的ではないだろうか。
消費税増税は、消費者、生活者を直撃する。
すでに電気料金の値上げが決まっている。消費行動を抑制せざるを得ない。
企業にとっては仕入れコストが上昇する。
経団連のように価格に転嫁できる企業は別として、多くの中小企業はそうもいかないだろう。
廃業せざるを得ないという企業も少なくない。
東京新聞120810
消費増税問題は、引き続き私なりに考えていくつもりだが、原発再稼動問題、オスプレイ配備・運用問題等の経緯を見ていて、野田政権がまったく信用できないことを確信した。
有田芳生氏など何人かの民主党議員は反対票を投じた。
逆に言えば、民主党議員はごく少数しかいなかった。
彼らは、国民の期待をどう受け止めているのか。
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