直下に活断層があっても原発運転?/原発事故の真相(44)
参議院本会議で、野田首相に対する問責決議案が可決した。
野党7会派がすでに提出していた案を修正し、自民党が賛成した。公明党は採決に加わらなかった。採決は賛成129票、反対91票だった。
問責決議により、野党は議員立法など一部の法案を除いて審議に応じない方針で、今国会は9月8日までの残り期間、事実上空転することになる。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE87S05G20120829
「今国会は残り期間、事実上空転することになる」というが、そんな場合か?
野田首相の問責決議可決は当然であるが、自民党の姿勢も分かりづらい。
3党合意を批判する問責決議に賛成?
法的拘束力のある衆院の不信任案決議には反対し、法的拘束力のない参院の問責決議には賛成する。
もともと「近いうちの解散」を条件に合意ということが、論理的にオカシイのである。
⇒2012年8月 9日 (木):民自を自壊に導く茶番的談合/花づな列島復興のためのメモ(126)
いよいよ、民自の自壊が本格的になってきた。
両党の歴史的役割は終わったのである。
それはともかく、原子力安全・保安院という役所は、何としてでも原発を運転させたいらしい。
活断層の上に原発は建ててはいけないという従来の方針を転換し、一律には考えないということだ。
現に既存の原発が活断層の上に立地している可能性が想定されるためであろう。
まるで後出しジャンケンのようで、ルールなどどうにでもなる、という感じだ。
原発直下に地盤をずらす「断層」があっても原発の運転を一律に禁止せず、継続の可能性を残す新たな安全評価基準の導入を、経済産業省原子力安全・保安院が検討していることが28日、分かった。
保安院は従来「活断層の真上に原子炉を建ててはならない」との見解を示していた。新基準では、これまでは活断層と判断される可能性があった一部の断層について、原発の直下にあっても、ずれの量が小さく原子炉建屋などに影響が生じないと評価されれば原発の運転継続も可能になるとみられる。
だが「ずれの量の正確な評価手法はまだ完全ではない」(保安院)など課題も多い。新組織「原子力規制委員会」が近く発足するのに伴い解体される保安院による「安全規制の抜け道づくりではないか」との厳しい声も出ている。
http://www.47news.jp/47topics/e/233990.php
原子力安全・保安院の発想は不可解である。
私たちは、「3・11」によって、未だ知らないこと、分かっていないことに対してどう対処すべきだったかの指針を得たのではなかったのか?
それは故武谷三男さんの古典的な名著、『安全性の考え方』岩波新書(6705)に示されている。
安全性の問題については、「疑わしきは罰する」という原則である。
⇒2012年7月25日 (水):政府事故調の報告書/原発事故の真相(41)
しかし、原子力安全・保安院は、「疑わしいだけでは罰しない」ということだ。
どういう結果であれば安全性が証明されたと言えるのか?
⇒2012年7月24日 (火):何をもって安全性の証明とするのか?/花づな列島復興のためのメモ(117)/因果関係論(15)
活断層の疑いのある原発は少なくない。
というよりも、地震多発国の日本では、活断層の疑いのある場所を避けるのは難しい。
日本経済新聞120829
そもそも、活断層であるかどうかについて、専門家の意見が分かれている場合も少なくないという。
電力会社は、曖昧な判定基準と専門家の見解の相違を、原発立地に利用してきたのではないか。
原子力安全・保安院がそれを追認するということでは、存在意義を問われよう。
今こそ、「安全性の考え方」に立ち戻るべきである。
ところが、わざわざ新しく分類を作って、稼働させる余地を広げようというのだから、不可解である。
保安院によると、原子炉直下や原発敷地内の断層について/(1)/「地震を起こす活断層」(主断層)/(2)/主断層とつながるなど、構造的に関係する「副断層」/(3)/ 主断層、副断層以外で、ほかの地震の揺れでずれる恐れのある「弱面」 ―の三つに分類。
直下の断層が主断層や副断層の場合は原発の運転ができなくなるが、弱面と分類された場合は、近くで起きる地震の揺れなどで生じるずれの量を予測し、原子炉建屋への影響を評価する。
静岡新聞120829
国会は、党利党略ばかりで、空転すると言われている。
言い換えれば、重要法案が棚晒しという状態である。
ムダの極みである。
もちろん、倫理の崩壊状態の野田政権は早く衆院を解散して、信を問うべきだろう。
⇒2012年7月20日 (金):野田政権における「倫理の崩壊」/花づな列島復興のためのメモ(115)
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