民自を自壊に導く茶番的談合/花づな列島復興のためのメモ(126)
野田首相が、昨8日夜自民党の谷垣総裁と会談し、消費税増税を柱とする税と社会保障の一体改革関連法案について「(民主、自民、公明の)3党合意を踏まえて早期に成立を期し、成立した暁には近いうちに国民に信を問う」ことで合意した。
国民の支持を失っている2大政党の談合である。
ロンドン・オリンピックと時を同じくして、国会の迷走が続いていた。
日本選手団の健闘ぶりと対照的な醜い姿を晒し続けた。
自民党は、3党合意によって次回総選挙での与党復帰を目論んだのだろうが、その命脈が尽きていることを国民に改めて知らせることになった。
おそらく自民党復活の目は無くなったとみていいだろう。
民主党はまたしても詐欺的なレトリックで急場を凌いだ。
「近い将来の解散」を「近いうちに解散」と言い換えて、自民党の矛を収めさせたのだ。
短期的には民主党の勝ちと言えようが、こんなことが長く続くはずがない。
急場は凌げても、大局を凌ぐことはできない。
「近いうちに」民主党は自壊していくだろう。
昨年の菅首相に対する不信任決議の状況を彷彿とさせる。
菅氏は、「東日本大震災からの復旧・復興と東京電力福島第一原子力発電所事故への対応に一定の目途がついた段階で」という曖昧な条件の下に「退陣」を表明した。
実際この条件は、現在に至るまでクリヤされていないと考えることもできる。
その後、この条件の曖昧さをめぐって重要な時期に不毛な争いが続いた。
まさに「機会損失」である。
野田首相は、菅氏の詭計に学んだのか。
「近いうち」とはいつのことか?
日本経済新聞120809
曖昧な表現の解釈をめぐって、紛糾は必至だろう。
民主党側の声は次のようである。
輿石氏に近い党執行部の一人は、今国会での解散の可能性を否定した。閣僚経験者も「来年1月の通常国会冒頭だって近いうちといえば近いうちだ」との見方を披露した。
消費税増税法案の衆院採決で反対した松野頼久衆院議員は「『近いうち』というのは理解不能だ。(来年8月の)衆院議員の任期満了も含まれていると思う」と語った。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120809/stt12080909570003-n1.htm
これに対し、自民党は以下のようである。
谷垣氏は8日夜、党本部で臨時に記者会見を開き、首相の提案を評価した。ただ、「近いうちに」とはいつを想定しているのかという問いには「皆さんの解釈に任せる」とはぐらかし、「(解散について)私の考え方をいろいろ開陳した。それについて首相からもいろいろ開陳があった」と思わせぶりに語った。わざと臆測をかき立てようとしているかのようでもあるが、3党合意破棄を主張してきた若手らの賛同を得るには曖昧すぎる表現だ。
同上
密室での会談の内容は分からない。
しかし、常識的に考えれば、谷垣総裁が「矛を収める」に足る内容に踏み込んで野田氏が何らかの条件を提示したのだろう。
それは解散の時期に関すること以外には考えられない。
首相の専権事項と言いつつ、その専権事項と引き換えに増税を選択した(ように思わせることに成功した)。
まさに、菅氏が退陣表明した時に、鳩山氏が納得し、直後にペテン師と非難したのと瓜二つである。
谷垣氏も、野田首相を「近いうちに」ペテン師呼ばわりすることになるのではないか。
しかし、時すでに遅し、である。
おそらく、野田氏は菅氏に倣い、居座りを続けるだろう。
だが少数野党が一致して不信任決議案を提出したことは、やがてボディブローのように効いてくるだろう。
不信任決議案は自民党の欠席により反対多数で否決されたが、民自の2大政党が、少数野党に化すのも「近い将来」のことだと確信する。
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