山口県知事選は地殻変動の前兆か?/花づな列島復興のためのメモ(121)
山口県といえば、保守王国のイメージが強い。
長州藩は薩摩藩と共に明治維新を主導し、明治新政府の要職を分け合った。
薩摩が西南戦争で西郷隆盛などの有為な人材の多くを失ったのに比し、長州は順調に勢力を増大させ、いわゆる長州閥を形成した。
戦後においても、岸信介、佐藤栄作の兄弟や安部晋三といった首相経験者を輩出している。
自由民主党の牙城であったといってよい。
その山口県知事選が、29日行われた。
結果は、元国土交通審議官の山本繁太郎氏が、脱原発を掲げる「環境エネルギー政策研究所」所長の飯田哲也氏らを破り、初当選を果たした。
当選:山本繁太郎 25万2461
次点:飯田哲也 18万5654
山本氏は、自公が推薦し、3月に出馬表明した。
中央とのパイプを生かした公共事業誘致や産業力の強化などを訴えた。
前回までのパターンなら、これで決まり、のハズだった。
ところが、告示前1カ月弱の飯田氏の出馬表明で、上関原発計画の是非が争点化されると、山本氏は計画凍結を訴えて防戦。
自公両党や100以上の業界団体の組織力を動員した。
この結果は、なかなか興味深いものではなかろうか?
先ず第一に、政権与党の民主党が、自前の候補を擁立せず(できず)、自主投票としたことである。
地方と国政は異なるとはいえ、そのオーバーラップしている部分の中央VS地方が大きなテーマになっている時である。
独自候補を擁立できないということは、政権党としては不戦敗と言わざるをえない。
第二は、従来の図式では楽勝のハズの山本氏が、飯田氏の追い上げにより必死の防戦体制を敷かざるを得ない事態となったことである。
典型的な中央の高級官僚出身の山本氏に対し、飯田氏は脱原発のシンボル的存在であった。
飯田氏の追い上げをかわすために、山本氏も原発計画の「凍結」を主張せざるを得なかった。
「凍結」がどういう形で具体化していくかは今後を待たなければならないが、民意が地殻変動を起こしつつあることの反映ではなかったか。
飯田氏が大阪府・市の特別顧問を務め、橋下徹・大阪市長のブレーンでもあったことが善戦の要因であったといわれる。
そのことも含め、民主党も自公両党も、潜在的な敗者であろう。
既存政党が音を立てて崩れていくように見える。
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