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2012年7月20日 (金)

野田政権における「倫理の崩壊」/花づな列島復興のためのメモ(115)

給食費を払わない親とか、生活保護費不正受給などのことを「モラル・ハザード」というのは、誤用だという。
Wikipediaでは。以下のように解説されている。

節度を失った非道徳的な利益追求を指すという解釈がなされた。日本で「モラル・ハザード」といえばこの意味をさすことが多い。しかし、このような「倫理・道徳観の欠如・崩壊・空洞化」という用法は、以前から誤用として識者に指摘されていた。2003年11月13日、国立国語研究所による『第二回「外来語」言い換え提案』によって、モラル・ハザードは「倫理崩壊」「倫理の欠如」との意味で用いられていた状況が報告されている。

誤って使われている「モラル・ハザード」の格好の事例が、最近の政府だろう。
先ずは、原発再稼働の手続きである。
関係閣僚という専門的知見に特に秀でているとも思えない少数の大臣によって、大飯原発の再稼働の是非が判断された。
⇒2012年4月13日 (金):拙速に過ぎる政府の大飯原発再稼働判断/原発事故の真相(26)

もう一度、当時の報道を引用しよう。

枝野幸男経済産業相は13日、原発の再稼働を検討する関係閣僚会合後の記者会見で、関西電力大飯原発3、4号機の安全性について「最終的に確認した」と述べた。(2012/04/13-19:54)
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2012041301042

私たちは、(好意的に解釈すれば)政府がわれわれの知らない情報を持っていて、それに照らして判断したかのような印象を受けていた。
ところが、枝野氏の言う「最終的に確認した」というのは、安全性を何かの根拠で確認したという意味ではなく、仲間内の合意事項として確認した、という意味であったらしい。
これを詐術と言わずして、何と表現すればいいのだろう。

なにしろ、福島の事故について、「ただちに人体、健康に害が無い」を繰り返していた人である。
上杉隆氏の批判記事を引用しよう。

「・・・一般論としてただちに影響がないと申し上げたのではなくて、放射性物質が検出された牛乳が1年間飲み続ければ健康に被害を与えると定められた基準値がありまして、万が一そういったものを一度か二度摂取しても、ただちに問題ないとくり返し申し上げたものです」
 開き直りもここまでくると見事である。
 仮に、一般論としての述べたのでなければ、なぜ一般論として報じ続けたテレビ・新聞などの記者クラブメディアに抗議を行わないのか。
・・・・・・
 枝野氏は当時、大手メディアではなく、内部被爆の危険性を指摘したジャーナリストたち、とりわけ自由報道協会所属のフリーやネット記者たちの報道を「デマ」だと断定し、取り締まるよう宣言したのだった。
・・・・・・
 枝野氏の「ただちに影響はない」という言葉は、震災直後、一種の流行語になった。その言葉を信じて、被爆してしまった国民がいったいどれほどいることだろうか。放射能の健康被害が明らかになりはじめる4、5年後を考えるだけで背筋が凍る思いである。

http://diamond.jp/articles/-/14805/

その人が、「大飯原発の安全性を最終的に確認した」と言ったのである。
その結果はどうか?
大飯原発敷地内の断層が、活断層であることを否定できなくなってきた。

 関西電力大飯原発(福井県おおい町)敷地内の断層が活断層である疑いが出ていることに対し、牧野聖修・経済産業副大臣は19日、「活断層ではないのだろうが、念を入れて安全のために再調査したい」と語った。牧野氏は再稼働にあたって、現地で政府の特別監視の責任者を務めている。
http://www.asahi.com/politics/update/0719/TKY201207190457.html

さすがに副大臣は、大臣をフォローするようだ。
「念を入れて安全のために再調査」?
「最終的」と判断した人は、責任を明確にすべきである。
そういえば、牧野副大臣は、「最終的に確認した」仲間のひとりである細野環境大臣と同じ静岡県の選出議員である。
細野大臣は、総裁候補などと言われているようだが、静岡県民は覚醒せよ、といいたい。

そんなことは関係ないとばかりに、東電の電気料値上げだという。

 東京電力の家庭向け電気料金の値上げが、東電の申請時の平均10・28%から8・47%程度に圧縮された上で九月一日から実施される見通しとなった。値上げ幅の査定では消費者の意見が一部反映されたものの、最後は密室での政治決着に。動かない原発の費用を原価算入に認めるなど不透明さを残したまま、消費者は重い負担を強いられる。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2012072002000101.html

枝野氏は、「圧縮」を自慢げであるが、最初高いことを言って(俗な表現すれば、吹っ掛けて)、落とし所に誘導するのは、まったくありふれた手法である。
何よりも、稼働の見通しが立たない資産を、「経営が成り立たないから」といって原則を曲げて減価償却を認め(それを費用として料金算定の基礎とす)る、などということが許されるわけがない。
そんなことをすれば、どんなに放漫経営をしていても、破綻企業などあり得ないことになる。
モラル・ハザード、もとい倫理の崩壊も極まれり、である。

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