何をもって安全性の証明とするのか?/花づな列島復興のためのメモ(117)/因果関係論(15)
オスプレイの配備・運用をめぐって混乱が続いている。
野田総理大臣:「オスプレイについては、きちんと安全性が確認されるまでは、日本での飛行は行わない、そういう方針で臨みます」
一方、民主党の前原政調会長は、党を代表する形で、安全性が確認されなければ、アメリカ軍が予定する10月からの普天間基地での本格運用を遅らせるよう野田総理に申し入れました。しかし、野田総理から配備に関する言及はなかったということです。政府は、安全性を確認するため専門家チームを派遣したり、普天間基地での飛行ルートをより安全なものに変更できないかアメリカ側と調整に入る方針ですが、沖縄など地元の反発は強く、理解を得られるかは難しい情勢です。
http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/220723050.html
野田総理のいう「きちんと安全性が確認される」とは、いかなる状態をいうのであろうか?
大飯原発再稼働について、「最終的に安全性を確認した」はずだが、敷地内の断層が活断層であることを否定しきれず再調査することになった。
にもかかわらず、稼働は継続するという。
誰が考えても、論理の一貫性がないだろう。
もしこのようなことが、「私の責任で」行われるならば、なんでもOKということになってしまう。
民主党政権こそ、かつての軍部と同じような独走の危険性を持っているのではないか。
55年体制を越えて、40年体制に逆行である。
前原政調会長も、何をもって「安全性が確認されなければ」という基準がクリヤーされるのか、明確にしないと「言うだけ番長」を返上はできない。
私は、安全保障の問題について、もっと分かりやすい形で国民的議論を起こすべきだと思う。
2030年のエネルギーについての意見聴取会は欺瞞的だと思うが、政府の態度・姿勢が欺瞞的であることが国民の前に晒された、という効果はあった。
安全性の問題については、物理学者の故武谷三男さんが、『安全性の考え方』岩波新書(6705)という著書を書いている。
現在は絶版で、Amazonを見ると、最安値が2287円である。
いかに名著とはいえ、新書の古書としては手を出しにくい値段である。
岩波書店も、復刊すべきではないだろうか。
同書のAmazonの書評の中に、次のような文章がある。
業界団体が大学の専門家をかつぎだして「ユリア樹脂製食器は絶対安全である」という ポスターをあちこちに貼りまくり、そのポスターには「ホルマリンで健康被害の例はない」とか、 「ホルムアルデヒドは殺菌作用があるのでむしろ健康に良い」とか、 いつも考えることは同じで笑ってしまいます。
たしかに、先日の中電課長の「放射能で死んだ人はいない」という意見聴取会での発言と瓜二つである。
⇒2012年7月22日 (日):因果関係がはっきりしない事態への姿勢/花づな列島復興のためのメモ(116)
多少でも公害の歴史等に関心を持つ者にとっては、「未だにこういう発言をする人がいるのか」という気がするであろう。
電力会社の社員が「個人として」発言することを制限すべきではない、という人もいるが、見聞した範囲では電力会社の意見を代弁しているだけであり、やはり国民の意見の聴取会には相応しくないだろう。
オスプレイの配備・運用については、余りにも背景的な事柄について説明不足である。
なぜ釜山から岩国へ搬入したのか?
おそらくは朝鮮半島情勢に関連するのであろうが、政府はどういう見解を持っているのか?
何やら北朝鮮で何らかの動きがあるようである。
そういう状況を踏まえて、オスプレイの配備・運用にはこういう効果が期待される、というような説明が必要ではないか。
軍用機に絶対の安全性など求められない。
いわゆる「安全神話」が崩壊したばかりである。
武谷さんは、次のような言い方をしている。
放射線というものは、どんなに微量であっても、人体に悪い影響をあたえる。しかし一方では、これを使うことによって有利なこともあり、また使わざるを得ないということもある。その例としてレントゲン検査を考えれば、それによって何らかの影響はあるかも知れないが、同時に結核を早く発見することもできるというプラスもある。そこで、有害さとひきかえに有利さを得るバランスを考えて、〝どこまで有害さをがまんするかの量〟が、許容量というものである。つまり許容量とは、利益と不利益とのバランスをはかる社会的な概念なのである。
ただ、「安全性が確認されるまでは、日本での飛行は行わない」というだけでは、何も言っていないのと同じである。
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コメント
【家村和幸】国家解体に繋がるオスプレイ配備反対の思想[桜H24/7/20]
http://www.youtube.com/watch?v=tkuYjoMiVZw
投稿: いちろう | 2012年7月25日 (水) 03時52分