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2012年7月29日 (日)

ポスト「3・11」の課題としての過労社会からの脱却/花づな列島復興のためのメモ(120)

脳・心臓疾患等は、生活習慣病の代表である。
しかし、過重な仕事が原因と考えられる場合も多い。
どのような場合、労災認定がなされるか?

厚労省の「脳・心臓疾患の労災認定-「過労死」と労災保険-」というサイトに、認定の基準について解説がある。
基本的な考え方として、以下が示されている。

(1) 脳・心臓疾患は、血管病変等が長い年月の生活の営みの中で、形成、進行及び増悪するといった自然経過をたどり発症する。
(2) しかしながら、業務による明らかな過重負荷が加わることによって、血管病変等がその自然経過を超えて著しく増悪し、脳・心臓疾患が発症する場合がある。
(3) 脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす業務による明らかな過重負荷として、発症に近接した時期における負荷のほか、長期間にわたる疲労の蓄積も考慮することとした。
(4) また、業務の過重性の評価に当たっては、労働時間、勤務形態、作業環境、精神的緊張の状態等を具体的かつ客観的に把握、検討し、総合的に判断する必要がある。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/0112/h1212-1.html

特に、長時間の過重労働については、具体的な労働時間の規定がある。

(1) 発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること
(2) 発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できることを踏まえて判断すること。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/0112/h1212-1.html

業界や業務・立場等によって、労働の態様はさまざまであろうが、「発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働」というのは、さほど稀な場合ではないような気がする。
事実、東京新聞によれば、一部上場の大手企業の7割が、社員に過重労働を認めている。

 東証一部上場の売り上げ上位百社(二〇一一年決算期)の七割が、厚生労働省の通達で過労死との因果関係が強いとされる月八十時間(いわゆる過労死ライン)以上の残業を社員に認めていることが分かった。厚労省の指導が形骸化し、過労死しかねない働き方に歯止めがかかっていない現状が浮かんだ。
 本紙は今年三~六月、百社の本社所在地の労働局に各社の「時間外労働・休日労働に関する協定(三六協定)届」を情報公開するよう求めた。さらに各社の労務管理についてアンケートし、三十六社から回答を得た。
 開示資料によると、労使で残業の上限と決めた時間が最も長いのは、大日本印刷の月二百時間。関西電力の月百九十三時間、日本たばこ産業(JT)の月百八十時間、三菱自動車の月百六十時間と続いた。百社のうち七十社が八十時間以上で、そのほぼ半数の三十七社が百時間を超えていた。百社の平均は約九十二時間だった。
 国は労働基準法に基づき、労使間の協定締結を条件に月四十五時間まで残業を認めており、特別な事情があれば一年のうち半年まではさらに上限を延長できる。一方で、厚労省は過労死認定基準として「発症前一カ月に百時間か、二~六カ月に月八十時間を超える残業は業務との因果関係が強い」と通達している。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012072590070017.html

労働基準法で規制している労働時間は、原則1日8時間、1週40時間である。
これ以上の労働のためには、いわゆる「三六協定」を労使間で締結し、労働基準監督署に届出ておくことが必要である。
労働基準法第36条に規定されていることから、「三六(サブロク)協定」と呼ばれている。
上記の記事は、一部上場企業の「三六協定」の中身の問題である。
「三六協定」が過労死認定基準に抵触している。

東京新聞社説「過労社会 まず休息から考えよう」は以下のように説いている。

 残業に追われる日本のサラリーマンたちの健康をどう守るか。心身を病んだり、命を落としたりする労働災害が後を絶たない。まずは休息。そこから仕事を組み立てる発想も大切だ。
 「エコノミックアニマル」。かつての高度成長期の日本人を世界はそんな蔑称で呼んだ。利己的に振る舞い、利益ばかりを追い求める国民気質を皮肉ったのだ。
 長時間の残業や休日抜きの勤務は美徳でさえあった。その揚げ句に命を失う「過労死」という現象は、今やそのまま「Karoshi」とつづられて外国語の辞書に載っている。
・・・・・・
 労働時間の規制論議に対して経営側はいつも反発してきた。生産性が落ちるとか労働意欲がそがれるとかいった具合だ。
 ならば、まず一日の休息時間を確保してから働き方を考えてはどうか。「勤務間インターバル規制」と呼ばれ、実際に欧州連合(EU)では終業から翌日の始業までに十一時間以上の休息を取るルールがある。働き手が健康でいてこそ企業も存続できるのだ。

私自身「長時間の残業や休日抜きの勤務は美徳」というような風土で生きてきた。
挙げ句の果てが脳梗塞の発症である。
もちろん、私の発症の要因はいろいろ考えられる。
それは個人的に反省をしなければならないが、長時間の残業等による過労は社会的にも大きな問題であろう。
ポスト「3・11」の課題の1つとして、過労社会からの脱却があるのではないか。

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