筋の通らない東電の値上げ/花づな列島復興のためのメモ(118)
枝野幸男経済産業相が、東京電力が申請した家庭向け電気料金の値上げを正式に認可した。
9月1日からの実施、値上げ幅は平均8.46%で、政府の認可が伴う家庭向け電気料金の値上げは1980年以来32年ぶりである。
他に電気を供給してくれる選択肢がないのだから、そのまま受け入れざるを得ない。
東電の値上げの影響は、次のように試算されている。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/business/other/579144/slideshow/494903/
だが、利用者の負担はこれだけではない。検針票にはこのほか、原油価格の変動を顧客に転嫁する「燃料費調整」や、8月からは電力会社により太陽光などの再生エネルギー買い取り額転嫁分が「4人家族」で約100円上乗せされる。これらの結果、9月の実際の電気代は1万2842円となる計算だ。
東電は昼と夜の電気代に5倍近い差を付け節電を促す「ピークシフトプラン」への加入による負担軽減を奨励するが、メリットがでるのは契約容量50アンペア以上で月使用量が600キロワット時という「5%程度のヘビーユーザー」(東電)だけ。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/120725/bsd1207252223008-n1.htm
こういうニュースに、釈然としない気分の人は多いのではないだろうか?
先ず押さえておきたいのは、東電が失敗企業であるということだ。
レベル7という最悪の事故を起こした当事者である。
しかも「人災」だったと指摘されている。
今なお、16万人の人が避難生活を強いられている。
一般論として、不祥事を起こした企業が、経営再建のために値上げをしたいといったら、顧客はそれを受け入れるだろうか?
東電のステークホルダーのなかで、顧客はone of themである。
⇒2012年5月18日 (金):東京電力は誰のものか?/原発事故の真相(29)
株主や金融機関はいかなる責任を負ったのか?
普通、企業が破綻した場合、清算して残存価額を株主や金融機関等の債権者への配当原資とする。
東電は実質的には債務超過だから、配当原資はマイナスである。
つまり、株式や債権などは、1銭も回収できない。
株価は下落したが、一定価値を保っている。
金融機関が債権放棄をしたという話も聞かない。
著しくアンバランスではなかろうか。
しかも、費用として、電源開発促進税(電促税)や稼働する見込みのない施設の維持費、減価償却費などが含まれている。
さらに、廃炉費用を問題にするのは、岸博幸・慶應義塾大学大学院教授である。
廃炉費用の総額が今後どこまで膨張するか、まだ分からないことに加え、廃炉費用が含まれたら、除染費用もいずれ原価に入ってくるだろう。
自分の不始末を、値上げで処理する。
ここにも、倫理の崩壊が見られる。
⇒2012年7月20日 (金):野田政権における「倫理の崩壊」/花づな列島復興のためのメモ(115)
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