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2012年6月13日 (水)

原発神話と検察神話/花づな列島復興のためのメモ(85)

私たちは、2011年という年に、2つの神話の崩壊を目の当たりにした。
原発神話と検察神話である。
神話とはもちろん、『古事記』等に描かれている神話の意味ではない。
広辞苑に次のように説明されている派生的な意味での神話である。

比喩的に、根拠もないのに、絶対的なものと信じられている事柄
広辞苑第六版より引用

福島第一原発の事故により、原発が絶対に安全だという神話は脆くも崩壊した。
事故前から原発の危険性を訴求してきた内橋克人氏は次のように言う。

私は福島第一原発の事故はまさしく人災だと思う。「原発は安全でクリーンなエネルギーだ」と嘘を唱えてきたわけだが、その安全神話が崩れて、地震・津波という自然災害に加えて、原発事故という人災が追い討ちをかけてしまった。
・・・・・・
次に原発PA(public acceptance)戦略の徹底ぶりについて。原発を社会に受け入れさせるための戦略的働きかけは大きく3つの柱に分けられており、壮大な規模において展開されてきた。
1)電気事業連合会が行ってきた言論に対する抗議戦略。
様々な報道機関・メディアに抗議書や「関連報道に関する当会の見解」という共通見出しの文書を送り続ける。
2)小学校低学年から中学・高校までエネルギー環境教育という名の原発是認教育を授業として実施。
社会・理科・総合などの授業で児童・学生らに教師が教え込んでいく。それが生徒の成績も左右する。
3)有名文化人を起用していかに原発は安全かを語らせるパブリシティ記事をメディアを使って展開。費用も膨大だったはず。男女の文化人を原発の地下施設などに案内し、ヘルメット姿で語りをやらせ、それを記事にする。ある有名テレビ・キャスターは「原子力問題は論理的に考えよう」などとご託宣を下しているわけである。
内橋克人「原子力安全神話はいかにして作られたか」/ 正統性を喪失したエリート支配層

そして、民主党政権(事故時菅首相、現在野田首相)の対応は、「民主党よ、お前もか!」という形で政治不信を増大させることになった。
事故発生直後の政府の対応をめぐって、リアルタイムの証言(2011.03.14の記事)である。

 東京電力福島第1原子力発電所では引き続き深刻な状況が続いている。3号機が爆発する前の14日未明、同発電所の放射線量は2回、制限値を超えた。政府は「健康に影響を及ぼす状況は生じない」(枝野幸男官房長官)としているが、これまで、マニフェスト違反を続け、尖閣沖漁船衝突事故でも証拠映像を隠蔽した“前科”があるだけに、まだ全面的な信頼はできそうにない。
・・・・・・
 そもそも、第1原発1号機での爆発事故が発生したのは12日午後3時半すぎ、約1時間後にはテレビ局が爆発によって大きな白煙が湧き上がる映像を流し、インターネットなどを通じて全世界に広まったが、枝野氏の会見は事故から2時間後。
 それも、「何らかの爆発的事象」という表現で、明確に「爆発」と認めたのは何と5時間後の会見。その際も「格納容器の爆発ではない」「放射性物質が大量に漏れ出すものではない」「現時点で大きな変化はない。冷静な対応をしてほしい」などとした。
 避難指示の範囲も、当初は第1原発から3キロ圏内だったが、五月雨式に10キロ、20キロと広がった。枝野氏と保安院の会見内容が異なり、担当記者らが混乱・激怒する場面もみられている。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110314/dms1103141632025-n1.htm

上記の枝野氏が、今度は経産相として、再稼働の是非の判断をしているのだ。
⇒2012年4月13日 (金:拙速に過ぎる政府の大飯原発再稼働判断/原発事故の真相(26)
⇒2012年4月 4日 (水):「大飯原発再稼働」の政治判断?/原発事故の真相(24)
いくらなんでも、国民をナメているとしかいいようがないだろう。

もう1つは、検察が「正義の味方」であるという神話の崩壊である。
厚労省の不正郵便事件において、証拠を捏造するという検察庁を代表する特捜部の、信じられないような実態の一部が明るみに出た。
⇒2012年4月 8日 (日):厚労省不正郵便事件の不可解な着地点/花づな列島復興のためのメモ(49)

われわれは、たとえば元検事の郷原信郎氏などによって、司法権力の一端を窺い知っている。
⇒2009年3月25日 (水):西松建設献金問題における違法性の成否
小沢一郎民主党元代表に対する捜査では、検察審査会という本来検察神話の暴走を防止するための装置さえ援用されている。
⇒2012年5月14日 (月):虚偽報告書による権力の組織犯罪/花づな列島復興のためのメモ(67)

郷原氏とそれぞれ有罪判決を受けている人との対談集『特捜神話の終焉』飛鳥新社(1007)のAmazonの紹介欄を引用する。

知られざる検察の世界を語り尽す!! 元検事・郷原信郎と堀江貴文、細野祐二、佐藤優が対談!! ライブドア事件、キャッツ事件、外務省背任事件の真相から、小沢一郎・陸山会の政治資金事件、2000年代特捜検察の惨状、政権vs検察まで、検察の正体を撃つ―― くすぶり続ける検察問題を読み解く決定版!! ●対談ゲスト 堀江貴文(元ライブドア社長)/2006年、ライブドア事件で東京地検特捜部に逮捕。誤解され続ける事件の真相を解明する(現在、最高裁で係争中)。 細野祐二(公認会計士)/2004年、キャッツ事件に関連して東京地検特捜部に逮捕。2010年、最高裁で上告棄却、有罪判決が確定。 佐藤優(作家・元外務省主任分析官)/2002年、外務省背任事件で東京地検特捜部に逮捕。2009年、最高裁で上告棄却、有罪判決が確定。

直近の話題としては、いわゆる「東電OL殺人事件」のネパール人被告の再審決定のニュースがある。
厳正な証拠を根拠にし、法律によって判断するという常識が、砂上の楼閣でしかない。
「東電OL殺人事件」という名称からして時の流れを感じるが、事件当時5歳と3歳だったゴビンダ被告の2人の娘は、20歳と18歳になっているという。
かけがえのない、そして取り返しのつかない時間が流れたのだ。

本事件に関しては、佐野眞一氏が、早くから捜査批判をしてきた。
東電OL殺人事件』新潮社(0005)のAmazonの書評の中の言葉である。

本書は、事件の発端から一審判決に至るまでの一部始終を追ったものである。その3年もの間、著者は、事件にかかわりのある土地に足繁く通い、さまざまな証言を集めた。事件現場となった円山町は言うにおよばず、ゴビンダの冤罪を晴らすべく、はるかネパールにまで取材に行った。立ちはだかる悪路難路を越えて、彼の家族友人から無罪の証言を得ようとする著者の姿には、執念を感じてしまう。
ネパール行脚が終わると、裁判の模様が延々と書かれている。ゴビンダを犯人と決めつけている警察の捜査ひとつひとつに、著者はしつこく反論していく。このくだり、読み手は食傷気味になるかもしれない。だがその執念も、ともすればステロタイプにくくられがちな「エリート女性の心の闇」に一歩でも迫りたいという一念からきたのだろう。著者は、確信犯的に堕落していった渡辺泰子に対して、坂口安吾の『堕落論』まで引用して、「聖性」を認めている。その墜ちきった姿に感動している。この本は、彼女への畏敬と鎮魂のメッセージなのである。(文月 達)

この批判の書が出版されてからでも12年ということになる。
権力を持った人間は、謙虚にならなければならないだろう。
同時に、いわゆるクリティカル・シンキングの重要性を再認識させられた。

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