再稼働の裁量権とクリティカル思考/原発事故の真相(35)
クリティカル思考という言葉がある。
訳せば、批判的思考になるだろうが、批判的というのは、事象を多面的に吟味することといえよう。
⇒2010年9月22日 (水):クリシンはどこへ行った?
原発が安全だとか、検察が正義の味方で無謬のものだ、という通念が神話に過ぎないことが明らかになった。神話化したということの背景には、クリティカル思考の欠如があったといえよう。
疑うべきではないように仕向けられていたといってもいいだろうか。
原発神話も検察神話も、抽象化すれば、裁量権を独占してきたものの裁量(判断)が、結果的に間違っていたということである。
たまたま産経新聞に連載中の黒木亮『法服の帝国』は、6月13日掲載分が、「福島第二原発訴訟第一審」の判決言い渡しのシーンであった。
訴訟は、伊方原発一号炉、東海第二発電所に次ぐ三番目の原発訴訟である。
アメリカのスリーマイル島で事故があった後、最初の判決で、判断の行方が注目された。
判決の内容は、原告の主張を退けるものだった。
原発設置の許可処分は「政策的、専門技術的判断を要するもので、国の裁量権」とし、安全審査については「原子炉等規制法の体系上、審査の対象は原子炉に限られ、核燃料などは、段階的に別途規制される」とし、住民側の「安全審査は核燃料から放射性廃棄物処理までの原発全体で行われるもの。審査の基準もあいまいで、法的根拠も乏しい」という主張を退けた。
連載が終わったらいずれ単行本化されるだろうからその時点でまとめて読もうと思い、毎日読んでこなかったのが悔やまれるが、実にタイムリーに話が進行している。
ほとんど事実に沿って構成されているようである。
12日には、前川誠一という名前の京大の2回生が登場しているが、前原誠司民主党政調会長がモデルであるのは分かりやすい。
大飯原発が再稼働しようという今の時点で読めば、原発設置の許可処分と再稼働問題が同じ論理構造である。
つまり、原発再稼働が「政策的、専門技術的判断を要するもので、国の裁量権」と考えていることが分かる。
しかし、再稼働を決めた関係閣僚会議において、政策的判断はあったかも知れないが、専門的技術的判断が可能であるはずがない。
小説の中で、前川誠一青年がどのような行動をとるかは分からないが、前原政調会長の親分(?)仙谷由人政調会長代行は、今の時点では原発がないと「ロウソクの生活になる」としている。
民主党の仙谷由人政調会長代行は13日、産経新聞のインタビューに対し、政府が近く関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を決定することを受け、「ストレステスト(耐性検査)が済めば、その他の原発も粛々と動かすべきだ」と述べ、経済産業省原子力安全・保安院が安全性を確認した四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)など各地の原発再稼働を急ぐべきとの考えを示した。政府・与党の幹部で大飯以外の再稼働推進を明言したのは仙谷氏が初めて。
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仙谷氏は党代表として、大飯原発再稼働に関する野田佳彦首相と枝野幸男経済産業相ら3閣僚の会合に出席するなど、再稼働を主導してきた。
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「脱原発」の動きが、福島第1原発事故の深刻さと絡み、国民の感性的な部分で確かに存在する。しかし、今さらロウソクの生活には帰れない。アジア各国と違い、日本では良質で安定的な電力供給が確保されているからこそ、多くの製造業があるということを忘れてはならない。日本には石油、石炭、天然ガスなどの天然資源がほとんどない。石油価格がどんどん上がってアラブ諸国へ利益が流出している。結果として「働けば働くほど貧しくなる」という経済構造にある。原子力か火力を基盤に置かなければならない。
http://sankei.jp.msn.com/smp/politics/news/120614/plc12061400260000-s.htm
なぜか会長より会長代行が上のような物言いである。
仙谷氏も法曹出身であるから、この判事のような判断をするのであろうか。
今の時点で振り返れば、法曹の専門家よりも住民の方が正確な判断をしていたことは明らかである。
国家がある部分の裁量を独占することはやむを得ないことであろう。
しかし、慎重なクリティカル思考が要求されるのは当然である。
つまり、批判者の意見をよく聞くということである。
それにしても、仙谷氏などは、福島原発事故をどう総括しているのだろうか?
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