なぜ事故調報告を待てないのか?/花づな列島復興のためのメモ(81)
昨日、多くの人の反対や疑問を無視して、野田首相は、大飯原発再稼働すべし、とした。
この「判断」について、国会事故調委員長の黒川清氏が、疑問を呈している。
福島第一原発事故の原因を調査する国会の原発事故調査委員会の黒川清委員長は8日、野田首相が記者会見で、「国民の生活を守るために、大飯原発(福井・おおい町)3・4号機の再稼働が必要だ」と国民に理解を求めたことについて、「ぜひ国会から委託された独立した調査、その報告をしっかり見て、何も待たないで(再稼働を)やるのかなと。国家の信頼のメルトダウンが起こっているんじゃないのというのが私の感じです」と話した。(06/09 03:12)
http://www.ytv.co.jp/press/society/TI20077299.html
国会事故調は、6月中に最終報告書をとりまとめるとしている。
黒川委員長ならずとも、不快あるいは不信に思うのは当然だろう。
ちなみに、黒川氏は日本学術会議会長などを歴任した有識者であるが、同時に気骨ある人として知られる。
⇒2012年5月28日 (月):国会事故調への期待/原発事故の真相(31)
野田首相の「判断」は、最終報告を待っていたら、夏の電力供給に間に合わないということだろう。
確かに関西電力の試算では、今夏の電力供給は、大飯原発を稼働させないと15%の不足が見込まれるということである。
15%というのは節電では乗り越えられない量かも知れない。
しかしまだまだ手を尽くしているとは思えない。
福島第一の事故を教訓とするならば、相当思い切った手段を講じることも是とされるのではないか。
たとえば電力需要がピークになるといわれている「全国高等学校野球選手権大会」の中継である。
朝日新聞社と高野連が主催し、NHKが放映する。
先頃、数土文夫・JFEホールディングス相談役という人が、NHK経営委員長と東京電力社外取締役との兼職が問題視され、経営委員長を辞任したことが報じられた。
数土氏は、兼職を「問題ない」としていたが、批判の高まりによって辞任したものである。
「全国高等学校野球選手権大会」は魅力的なコンテンツである。
私も、プロ野球に興味を失っても、高校野球には魅力を感じる。
しかし、現実に国土の一部をかなり長期間にわたって失うという事態が発生したのである。
故郷を離れて生活しなければならない人が多数いるのである。
今年くらい、やり方を考えたらどうだろうか。
野田首相は、意図的に福島第一から目を逸らしているようにみえる。
今日の東京新聞社説は次のように批判している。
経済への影響、エネルギー安保など、原発の必要性は、執拗(しつよう)に強調された。だが国民が何より求める安全性については、依然置き去りにしたままだ。
「実質的に安全は確保されている。しかし、政府の安全判断の基準は暫定的なもの」という矛盾した言葉の中に、自信のなさが透けて見えるようではないか。
会見で新たな安全対策が示されたわけでもない。緊急時の指揮所となる免震施設の建設や、放射能除去フィルターの設置など、時間と費用のかかる対策は先送りにされたままである。これでどうして炉心損傷を起こさないと言い切れるのか。どんな責任がとれるのか。首相の言葉が軽すぎる。
未来のエネルギーをどうするか。脱原発依存の道筋をどのように描いていくか。次代を担う子どもたちのために、国民が今、首相の口から最も聞きたいことである。それについても、八月に決めると先送りしただけだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012060902000148.html
福島第一は、野田首相の欺瞞的な「収束宣言」にもかかわらず、決して収束しているわけではない。
⇒2011年12月17日 (土):フクシマは「収束」したのか?/原発事故の真相(14)
⇒2012年3月14日 (水):冷温停止「状態」とは?/原発事故の真相(20)
⇒2012年3月28日 (水):冷温停止の大本営発表/原発事故の真相(22)
⇒2011年12月18日 (日):収束と終息/「同じ」と「違う」(37)
依然として大惨事が発生する危険性を抱えているのである。
特に、4号機が一触即発というか一揺即発の状態にある。
⇒2012年6月 2日 (土):不安な4号機の状況/原発事故の真相(34)
「週刊現代120616」号のグラビアに、『反骨の外交官・村田光平』という記事が載っている。
村田氏は、駐スイス大使等を歴任した外交官であるが、外務省在職中から私人として原発の危険性について訴えてきた。
記事の冒頭部分は次のようである。
今、世界は破滅の危機に瀕しています。
昨年3月、福島第一原発の事故で大量の放射性物質が撒き散らされ、深刻な被害が生じましたが、実は、現在、それを上回る大惨事が起こる可能性が高まっているのです。原因は、福島第一原発4号機の使用済み燃料プールにあります。
プールは4号機の建屋の3階と4階にあり、そこに1535本の核燃料棒が残っています。・・・・・・
4号機の問題は東電1社で解決できるレベルを超えている。
これを放置したまま、原発再稼働に猛(盲)進する野田首相は即刻退陣して頂きたい。
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