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2012年6月 7日 (木)

何のための政権交代か?/花づな列島復興のためのメモ(79)

いよいよ消費税増税へ向けて、民・自・公の協議が始まるらしい。

 野田佳彦首相は15日までに合意し、今国会会期末の21日までに衆院で採決したい考えだ。ただ各党の主張に隔たりは大きく、難航は必至。民主党では小沢一郎元代表らが消費税増税への反対姿勢を強めており、修正で合意できても党内手続きに手間取る可能性がある。
 民主党の輿石東幹事長は7日の記者会見で修正協議について「やってみなければ分からないが、法案成立に全力を尽くす」と強調。合意に至れば、党内の了承手続きを進める意向を示した。
 一方、自民党の谷垣禎一総裁は会見で「社会保障を中心に議論を行い、わが党の対案である社会保障制度改革基本法案を受け入れるよう強く求める。これが議論の前提だ」と述べた。

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201206070183.html

社会保障と税の一体改革とはいうものの、社会保障の全体像はさっぱり見えないままで、「なし崩し」に消費税増税を先行して決めようということだろうか。
⇒2012年6月 5日 (火):「なし崩し」に壊れていく「国のかたち」/花づな列島復興のためのメモ(77)
協議という名の談合と言ってもいいだろう。

 中央紙の論調は、おおむね協議を急げ、というようだ。
6月4日付の読売新聞と朝日新聞は、共に社説で野田改造内閣を後押ししている。
とんだ呉越同舟である。

消費税率引き上げ関連法案の成立に向けて、野田政権は、体制を立て直し、自民党などとの協議を急ぐべきだ。-読売新聞

それでも、社会保障と税の一体改革関連法案の成立に向け、野田首相がようやく自民党との協調にカジを切る覚悟を鮮明にしたことを歓迎したい。 -朝日新聞

また、日本経済新聞は5日付け社説で、修正協議で首相が先頭に立って政権公約を撤回すべきだと主張する。

修正協議では民主党が2009年の衆院選マニフェスト(政権公約)で掲げた「後期高齢者医療制度の廃止」などの公約撤回が焦点になる。民主党内には根強い反対論があるが、譲るべきところは大胆に譲歩して成案をまとめるべきだ。首相は党内取りまとめの先頭に立つ必要がある。

政権公約の撤回の先頭に、首相が立つ?
政権公約があってこその政権であり、首相ではないのか?
こともあろうに、岡田副総理は、政権公約を無視するかのような意味不明の発言をしている。

岡田克也副総理は6日の衆院社会保障・税一体改革特別委員会で、政権交代を実現した平成21年衆院選について「マニフェスト(政権公約)というよりは、政権交代を望む国民の大きな流れで勝った」と述べた。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120606/plc12060623170031-n1.htm

政権交代に票を投じた国民の意思をないがしろにするものといえよう。
政権交代の原動力となったのは、政権公約そのものではないのか。
野田政権はもはや錯乱の域にあるとしかいいようがない。

中央紙の翼賛的な論調に比し、地方紙の冷静さが目立つ。
6月4日付の信濃毎日新聞の社説は次のようだ。

 消費税増税をめぐり、世論の賛否は割れている。有権者からすれば、自民党と民主党が消費税増税の一点で協力し、法案を成立させることには疑問がある。
 大型増税には、国民の理解が欠かせない。そのためには時間をかけて問題点を明らかにし、論議を深めていく必要がある。増税一直線の首相には、とくに冷静なかじ取りを求めたい。

6月5日付東京新聞社説も鋭く正鵠を射ている。

 野田佳彦首相が再び内閣改造に踏み切った。問責二閣僚の交代は当然としても、再改造が消費税増税を進めるための環境整備というのは納得できない。
・・・・・・
 さらに今回の内閣再改造には、首相が「政治生命を懸ける」と断言した一体改革法案の今国会成立に向けて、自民党など野党側との法案修正協議に入る環境整備という側面があることを見逃せない。
 財政状況に対する危機感はわれわれも首相と共有する。少子高齢化社会の進展で、現行の社会保障制度が持続可能だとは思わない。
 しかし、再三指摘してきたように、衆院で審議中の法案は現行の社会保障制度の維持を基本としており、一体改革の名に値しない。
 政府や国会の無駄削減や社会保障制度の抜本改革を後回しにし、消費税増税の前例づくりの法案をいくら修正したところで、国民の理解が得られる改革に仕上げるのは難しいのではないか。
 内閣再改造を機に、与野党が本格的に協議を始めるというのなら、まずは政党交付金や歳費、文書通信交通滞在費の削減など国会議員が身を削る姿勢を示すことから始めてほしい。
 さらに、「官」の抵抗で遅々として進まない行政改革にこそ与野党が力を合わせ、同時に、政権が代わっても大きく変える必要がないよう安定的な社会保障制度づくりに知恵を絞るべきである。
 もし消費税率を上げる以外に財源を見つけることが難しいというのなら、増税前にやるべきことをやり尽くした上で、国民に理解を求めるのが筋だ。
 国会は各党の主張がせめぎ合う場だ。特に「ねじれ国会」では、与党の思い通りにならないことも多いだろう。かといって民主党らしさを失っては意味がない。

もはや政権交代の意味はまったく失われたと言えよう。

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