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2012年6月 2日 (土)

不安な4号機の状況/原発事故の真相(34)

野田首相が、福島第一原発の事故について、安定した低温停止状態に達した、として「収束宣言」を発したのは昨年の12月16日のことであった。
⇒2011年12月17日 (土):フクシマは「収束」したのか?/原発事故の真相(14)
⇒2011年12月18日 (日):収束と終息/「同じ」と「違う」(37)

しかし、判断の基準である冷温停止状態という言葉に、一種の詐術的要素があるらしい。
⇒2012年3月14日 (水):冷温停止「状態」とは?/原発事故の真相(20)
こういうことを重ねているうちに、政府に対する不信感は、高まりこそすれ一向に解消されていないと言わざるを得ない。
⇒2012年3月28日 (水):冷温停止の大本営発表/原発事故の真相(22)

私たちは、日本国総理大臣の言葉が、いかに信頼できないものであるか、空疎なものにすぎないか、を知ってしまった。
とりわけ、政権交代という大きな期待を背負った民主党政権は、鳩山→菅→野田と全滅である。

ということで、福島第一原発の現状も、「収束宣言」にもかかわらず、決して安心できる状態ではないだろうと思っている。
はたして、「週刊現代120609」号に、『福島第一原発4号機が「爆発する危険性」をどう考えるべきか』という記事が載っている。
リードの文章は以下のとおり。

原発がないと電力が足りない! 再稼働の是非に揺れる日本を、世界が危ぶんでいる。「フクシマ4号機」をなぜ忘れたように放置するのか。そこで異変が起きれば、明日にも日本は消滅するというのに。

福島第一原発の各号機の状況表は下記のように説明されている。
Photo
http://www.jaero.or.jp/data/02topic/fukushima/status/hyou.html

上表を見る限りでは、4号機は最も問題が少ないような印象を受ける。
4号機については、5月26日に細野環境省が視察し、内閣記者会の代表社が同行した。
まだ危険な状態のため、代表社に限定したらしい。
これでは、安全性をアピールしようという目論見も馬脚が現れているというしかない。

5月26日時点の4号機の姿は写真のようである。
4_2
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/120526/cpd1205261619006-n1.htm

今西憲之+週刊朝日取材班『福島原発の真実 最高幹部の独白』朝日新聞出版(1203)には、「4号機の前で体が固まった」という見出しで以下のような記述がある。

 迫るように視界に入ってきたのは、4号機だった。地震・津波と爆発で、建屋のコンクリート壁はゴツゴツとした岩の塊のように様変わりして散乱し、鉄骨がむしり取られたように飛び出している。巨大なコンクリート片が鉄筋に引っかかったまま、壁面にぶら下がっていた。
 鉄骨のフレームが大きく陥没しているところがあった。その下には、薄い緑色で組まれた大きなフレームが見える。あの付近に燃料プールがあるという話ではなかったか。すぐに崩れてしまいそうに見えた。
 これまで見てきた新聞の社写真やテレビの映像とは、これはまったく違う。圧倒的な迫力。震えが止まらず、体が固まってしまった。
 「東京電力や政府の公表してきた写真や動画はなんだったのか。だまされた。」
 ただ、呆然とするばかりだった。

pp154~155

首都圏近郊には、M7クラスの直下型地震の危険性が迫っていることが指摘されている。
⇒2012年2月 6日 (月):地震の発生確率の伝え方
⇒2012年2月10日 (金):地震の発生確率の伝え方②/東大地震研平田教授の意見

上記でも触れたように、地震の発生確率をどう理解するかは、なかなかやっかいではある。
⇒2011年5月12日 (木):地震の発生確率の意味/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(26)

しかし、もはや「想定外」などという言い訳は通用しない。
最悪事態を想定して対策を講じなければならないのは、改めて言うまでもないことだろう。
もちろん、直ちに実施できる対策と実施できない対策とがあることは理解する。
いま直ちに万全の対策を、と言うわけではない。
しかし、想定はしておかなければならないと考える。

上記記事に、米国スリーマイル島原発事故の調査に参加したことがある原子力技術者のアーニー・ガンダーセンという米国人の「警告」が紹介されている。

4号機の燃料プールに問題が生じたら、チェルノブイリ以上の大惨事になることは確実です。そうなれば、周囲の広大な土地は居住不能になり、日本はその居住不可能エリアによって、北と南に大きく分断されてしまうでしょう

つまり、菅政権の官邸が隠ぺいした「最悪シナリオ」である。
⇒2012年1月24日 (火):議事録の不作成は故意か過失か?/原発事故の真相(17)
⇒2012年2月29日 (水):民間事故調報告書/原発事故の真相(18)
⇒2012年4月 7日 (土):官邸が隠した“悪魔のシナリオ”とは?/原発事故の真相(25)
少なくとも、枝野経産相、細野環境相という現職の大臣は、このシナリオを熟知しているはずである。

菅前首相は、国会事故調で、原子力ムラを軍部に喩えた。
⇒2012年5月28日 (月):国会事故調への期待/原発事故の真相(31)
⇒2012年5月29日 (火):依然として不明朗な「藪の中」/原発事故の真相(32)

原子力ムラが問題であることは同感である。
⇒2012年5月27日 (日):原子力ムラの懲りない人たち/原発事故の真相(30)
しかし、独走する権力という意味でなら、まさに政府が軍部に喩えられるべきではなかろうか。
改めて、恐ろしい国だなあ、と思う。

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コメント

日本民族の資質:下働きとしては優秀、政治指導者としては愚鈍

下の者は、現世に埋没している。「世の中は、、、、」の発想法に甘んじている。
忍耐と努力が必要である。不自由を常と思えば不足なしか。各国から賞賛されている。

上の者には、哲学がない。あるべき姿の内容を脳裏に蓄えることができないでいる。
我々の遠い未来に行き着く場所を示していない。だから、非現実の世界を基準にたてて現実を批判することは難しい。
「そんなこと言っても駄目だぞ。現実はそうなってはいない」と言い返されて終わりになる。やはり、現世埋没型である。
現在構文ばかりの言語で、非現実を語れば、それはこの世のウソとなる。
「現実を無視してはいけない」「現実を否定することはできない」などという精神的な圧迫がかかっている。

上の者には、自己の現実対応策 (成案) に説得力を持たせる意思が必要である。
自己の意思を示せば当事者になる。示さなければ傍観者にとどまる。
だが、意思は未来時制の内容であり、日本語には時制はない。
我が国は、世界にあって世界に属さず。

http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://3379tera.blog.ocn.ne.jp/blog/

投稿: noga | 2012年6月 5日 (火) 05時59分

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