硅石器時代の産業の軸は?/花づな列島復興のためのメモ(58)
5月1日の日経新聞の社説は、『「産業の軸」をもう一度立て直そう』と題されている。
その趣旨は、以下のようである。
日本の産業の軸が大きく揺らいでいる。日本の技術力の象徴だった電機産業は、2012年3月期にパナソニック、ソニー、シャープの家電大手3社が合計で約1兆6800億円の巨額の最終赤字を計上する見通しだ。
円高や震災による生産の混乱など外部要因が足を引っ張っただけではない。得意だったはずの技術開発でも、次世代テレビの本命とされる有機ELパネルの開発などで韓国勢に大きく出遅れ、海外との実力差は広がりつつある。
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クルマと電機。日本の「2本柱」ともいえる2つの産業の足場が揺らぐ中で、どんな企業、どんな産業が21世紀の日本の駆動力になるのだろうか。若干の期待も込めながら、次の主役候補の顔ぶれを予想してみたい。
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自らが持つ強い技術、強い製品に磨きをかけて、世界市場で主導権を握る。過当競争の市場では内外企業との再編を模索し、事業基盤を立て直す。それが勝ち残りの要件であり、時間を浪費すれば再生のチャンスは遠のくだろう。
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もう一つ期待したいのは、サービスやIT(情報技術)など新たな分野から、新たな成長プレーヤーが登場することだ。例えば「ユニクロ」ブランドを展開するファーストリテイリングはアジアを中心に1日1店舗弱、年間200~300店舗の出店攻勢をかける。
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スマートフォン(高機能携帯電話)向けのソフトでは、NHNジャパン(東京・品川)の開発した無料通話ソフト「LINE」は今年中に利用者が世界で1億人を突破する見通しだ。スマホ時代の到来で、ゲームなどの関連サービス市場も活気づく。「日本はベンチャー不毛の地」という常識がひっくり返るかもしれない。
硅石器時代という時代認識があることは以前にも書いた。
⇒2009年5月21日 (木):実質GDPの大幅減と文明史の転換
⇒2012年2月28日 (火):硅石器時代とエルピーダの破綻/花づな列島復興のためのメモ(29)
⇒2012年3月12日 (月):変曲点の時代?/花づな列島復興のためのメモ(37)
上記で言いたかったことは、従来の発想では「産業の軸」は再構築が難しいのではないか、ということである。
エネルギー・資源多消費型の産業は、近代化=工業社会のものである。
脱工業化・脱近代化に進むと見られる硅石器時代は、当然指導原理が異なるものとなろう。
提唱者の西村吉雄さんは、農業社会に「似てくる」という。
しかし、単に近代以前に回帰するものではないことは明らかである。
民主党政権にはもはや期待はしていないが、政局ではなく大局、と言うなら、今後の「産業の軸」の議論のたたき台くらいは提起すべきだろう。
こういう時代に、原子力発電をどう位置づけるか?
4月30日付の東京新聞社説は、「それでも原子力か」というタイトルである。
どうしても原子力か、という問いがかつて発せられていました。ある物理学者の問いです。今もなお、それでも原子力か、とやはり問わねばなりません。
手元に一冊の本がある。
武谷三男(たけたにみつお)編「原子力発電」(岩波新書)で、一九七六(昭和五十一)年第一刷発行。日本の商業用原子炉が本格稼働し始めたころで、経済的な軽水炉時代の幕開けといわれたものです。
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本は原子炉の仕組みに始まり、続けて、その無数の配管が高温高圧の蒸気に耐えられず肉厚が薄くなることや、腐食、疲労の危険性を指摘します。
人間のミスも取り上げている。例えば試運転中の玄海原発1号機で放射能レベルが上がった。調べたら、炉内に鋼鉄製巻き尺の置き忘れがあり、それが蒸気発生器の細管を傷付けていた。だがそれはむしろ幸運な方で、もし炉心側に飛び込んでいたら大事故になっただろう、と述べている。
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原発の立地集中化についても当時から心配していました。日本では人口密度が高く適地がなかなか見つからない。とはいえ、日本ほどの集中例は少なく、地域住民にとってこれほどひどいことはない、とも述べています。
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さらに大物の学者が原子力推進計画に乗って、政府から多額の研究費を得ようとしたという、学者の弱みも明かしています。
四十年近くも前の、今と何と似ていることでしょう。何だ変わっていないじゃないかというのが大方の実感ではないでしょうか。
それらを列挙したうえで、武谷は「どうしても原子力か」という力を込めた問いを発しています。
「昔も今も変わらない」のではなく、「今こそ」「それでも原子力か」が問われなければならない。
武谷三男さんは、もちろん第一級の理論物理学者だったが、新たな技術論の提唱者であり、論争の仕掛人でもあった。
私の記憶では、唯物論研究会からの流れで日本共産党などの正統左翼は、武谷技術論には反対で、新左翼系に支持者が多かった。
菅元首相や仙谷政調会長代行らは、昔、武谷さんの著書に触れなかったのだろうか?
政治家の密談で、原発再稼働の安全基準や再稼働の是非をきめるべきではないことは明らかであろう。
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