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2012年5月 1日 (火)

個体識別/「同じ」と「違う」(47)

早いもので、霧島にきてから12日が過ぎた。
鹿児島といえば西郷さんだ。鹿児島空港にも、鹿児島市内にも、たくさんの銅像がある。
いかにも西郷さん(鹿児島風に発音すると、セゴドン)らしいと思うが、どうやらそれは作られたイメージであるようだ。
⇒2012年4月16日 (月):『西郷の貌』と万世一系のフィクション/やまとの謎(61)

この「らしさ」とはどういうことか?
われわれは、西郷さんなら、西郷さんという個体を、たとえば大久保利通や勝海舟と識別できるのは、その風貌についてのイメージが確立しているからだろう。

川平和美教授は、1990年に京都大学霊長類研究所に国内留学して、サルを対象に脳の可塑性を研究したことが、川平法l着想の大きな契機になった。
京都大学の霊長類グループは、サルの個体識別によって、社会構造や個体の行動の差異を明らかにしたことは有名である。
その世界に誇るサル学において、宮崎県串間市の幸島は貴重なフィールドだった。
幸島で重要な役割を果たした女性が4月7日に亡くなった。

野生ザルの生態を宮崎県串間市の幸島(こうじま)で観察し続けた三戸サツヱ(みと・さつえ)さんが7日午後1時35分、老衰のため宮崎市のケアハウスで死去した。97歳。広島市出身。
・・・・・・
日本統治下だった朝鮮半島などで小学校教諭を務め、敗戦後は串間市で教諭の傍ら自宅対岸の幸島でサルを観察。1953年、子ザルが芋を海水で洗って食べ始め、群れに広がる様子を確認。京都大の研究者によって国際学会で発表され「文化を持つサル」として世界の研究者を驚かせた。
70-84年、京都大霊長類研究所の幸島野外観察施設(現・野生動物研究センター幸島観察所)研究員や非常勤講師。48年からつけ始めたサルの系図は受け継がれ、サル研究の財産となっている。吉川英治文化賞(74年)や西日本文化賞(同)を受賞。

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/296065

個体識別とは、サルの一匹一匹を見分けることである。
普通、われわれは、人間の顔すなわち人相については、敏感に違いを感知することができる。
西郷と大久保の貌、すなわち人相を「分ける」ことは容易である。

ところが、サルの貌(猿相)は識別しづらい。
動物園に行っても、どのサルも同じように見えてしまう。
この違いは何か?

個体の差異という意味では、人間もサルも同じはずである。
違うとすれば、馴染みの程度や関心の大きさであろう。
たとえば、人間でも外国人の顔となると、日本人の人相よりも見分けが難しいようである。

しかし、外国人でも自分がよく知っているジャンルの人と、不案内なジャンルの人では違いがある。
ゴルフの好きな人にとっては、ジャック・ニクラウスとアーノルド・パーマ-の識別は容易であるが、ピエール・カルダンとカルバン・クラインを識別するのは難しいだろう。
だから外国人だから、ということではなく、馴染みや関心の程度であって、日本人でも同じことである。

私は、AKB48のメンバーの中で、前田敦子嬢をやっと見分けられるようになった。
ブームとなった『もしドラ』のお陰である。
⇒2011年6月13日 (月):『もしドラ』ブームとAKB48総選挙
⇒2011年6月20日 (月):そうだったのか! 『もしドラ』とAKB48
せっかく覚えたのであるが、彼女はAKB48を卒業ということらしい。

それはともかく、「分けられる」ということは「分かる」ことの条件である。
あるいは逆に、「分ける」ためには「分かる」ことが必要なのかも知れない。
古代天皇陵の比定が混乱しているのも、分からないから比定できないのである。
しかし、宮内庁は分かろうとする努力を封殺してしまっている。

あるモノをそのモノだとする「同定=アイデンティファイ」は創造的思考の原点である。
⇒2011年1月30日 (日):馴質異化と異質馴化/「同じ」と「違う」(27)
しかし、鳩山由紀夫元首相は、「同定」が難しい人だ。
ひと頃、永田町界隈で次のようなジョークが流行った。

「日本に正体不明の鳥がいる」。「ハト」ジョークは冒頭、謎かけめいた問いかけで始まり、こう続く。
中国から見れば「カモ」に見える。
米国から見れば「チキン」に見える。
欧州から見れば「アホウドリ」に見える。
日本の有権者には「サギ」だと思われている。
オザワから見れば「オウム」のような存在。
でも、鳥自身は「ハト」だと言い張っているようだ。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/352926/

本人は、相変わらず意気軒昂のご様子である。
民主党も、外交問題担当の最高顧問などに遇するから、本人もその気になる。
民主党としては、2階に上げたつもりだったのだろうが。
もうそろそろ、“公約”通り、引退したら如何かと思う。

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