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2012年5月30日 (水)

東電の儲けの方程式/花づな列島復興のためのメモ(74)

一般企業は、「儲け」を出すために、四苦八苦している。
単純化すれば、「儲け」は以下の式で示される。

儲け(利益)=売上げ-費用

すなわち、「儲け」を伸ばすためには、売上げを増やすか、費用を削減することが必要である。
しかし、企業活動は真空の中で行われているわけではない。
競争的環境の中で、売上げを伸ばすのも、費用を削減するのも、相手のある話となり、自社よりも有利な条件のところがあれば、自社以外に移ってしまう。

ところが、電力会社は地域的な独占という形で事業を展開しているため、競争的環境を免れている。
その代わりに、売上げの元になる料金は、勝手には決められない。
しかし、基本的に、価格(料金)は以下の式を元に決められている。

価格=費用+利益

つまり、常に、費用に利益の額を上乗せしたものとして、われわれの支払う料金は決められるのである。
たとえば、人件費はどこの企業でも頭の痛い問題であろう。
優秀な人材を確保しようと思えば、なるべく給与・賞与は厚くしたい。
しかし、厚くすればするほど利益を圧迫する。
このトレードオフのどこで着地させるか、悩みの種であるのが当たり前である。

実質的に破綻している東電はどうか?
今まで人も羨む高給を手にしていたことはよく知られている。
しかし、破綻してしまったので、今までのようにはいかないだろう。
普通の感覚であればそう考える。

しかし、東電は、今夏の賞与を支給しないだけで、冬からは復活するのだという。
現下の経済情勢で、賞与が出ない(出せない)企業がどれくらいあるのか、想像力すら欠如しているのだろう。

人件費を冗費とはいわないが、独占企業の場合は、いくら冗費と思われるものでも、削減しようという自律的な努力が働かない仕組みになっているのだ。
しかも、その構造をなかなか開示しない。
総括原価主義という形で、一般に開示されている資料だけでは、原価の構成が分らないのだ。
しかし、その一端が垣間見えた。

東京電力の利益の構造が、23日に開かれた経済産業省の電気料金審査専門委員会で明らかにされた。
まったく声なき声のサイレント・マジョリティも、声を上げて意思表示をすべきではないだろうか。

東京電力は販売電力量4割の家庭向けからなんと利益の9割を上げていた。
・・・・・・
家庭向けから利益の大半を確保するのは東電に限らない。2006~10年の全国10電力会社の平均でも、販売量4割の家庭向けから利益の7割を稼いでいる。
家庭向けの電気料金は、コストに一定の利益を上乗せする総括原価方式で決まるため安定的利益が見込める。一方、企業向け電力は自由化されており、新電電の参入で価格競争も進んでいる。こうした電気料金設定の仕組みの違いが背景にあるとはいえ、取りやすいところから取るという構図になっていることは否定できない。
・・・・・・
委員会では東電の高コスト体質が取り上げられたが、それに関する説明で高津は「安定供給を最重要視して、品質、安全リスクを冒してまでコスト削減に取り組む意識が弱かった」と、まるでコスト削減のためには品質や安全を犠牲にしてもいいのかと居直ったような発言をして、委員の怒りを買っていた。

http://www.j-cast.com/tv/s/2012/05/24133117.html?p=all

政権交代によって、政-官-財の利権トライアングルの構造が変わると期待したのは、まったくの幻想であった。
民主党政権もまた、その構造の維持に腐心しているのだ。
しかし、永劫にそのような構造は持続できるはずがない。

私は、原発事故を体験した現在こそ、CSR(企業の社会的責任)を真剣に考える好機だと考えた。
⇒2012年5月18日 (金):東京電力は誰のものか?/原発事故の真相(29)
しかし、当の東電にはそういう問題意識がないらしい。

家庭向けの電力供給事業は地域独占であって、競争にさらされていない。
それが企業の存立基盤である「顧客」をないがしろにしている根本ではないか。
サイレント・マジョリティから甘い汁を吸って、強者が分け合うという構造は、税の問題にも共通するのではないか。
社会科学者の時評』というサイトでは、『地域独占企業:電力会社の横暴』の「むすび」の言葉である。

 東電が取引先全般にとって〈おいしい相手〉であった理由が,そこにあった。また,そうした取引経済関係を逆用して東電という超大企業も,日本の産業社会全体を縦・横断的に支配する実力を温存させてきた。いわゆる〈原子力村〉を維持する経費がその〈総括原価方式〉からであれば,たやすく捻出されたわけである。
 電力を生産するための燃料コストが高くなれば,そのまますぐに「総括原価方式」を介して「電気料金」に上乗せすればいい,しかも,この総括原価方式はじかに販売価格に反映させられる。これでは,電力会社においては「原価削減への必死の努力」が生まれる余地もない。
 電力会社は,そういった〈コスト・マインド〉とは無縁であるかのような経営体質を固着させてきた。営利事業の特性面から観察すれば,極度に弛緩した経営姿勢=「費用削減努力の伴わなずとも簡単に利潤が獲得できる」企業体制をもって,日常管理すべてが処理されうる企業体質であった。
 しかも,電力会社が,産業企業用電力は相対的に格安に提供しているのに対して,個人家庭用電力の価格はずいぶん高く設定しており,しかもこちらから,電力会社の「利益の絶対金額:9割」も上げている。となれば,これはまさしく,支配体制=エスタブリッシュメント側の利害一辺倒,利害の不当な重視であって,国民・市民・住民の生活は平然と軽視する経営方針である。
 東電は,福島第1原発事故を起こした企業責任など,いまではどこ吹く風といった風情はないか? この電力会社の幹部は,電気料金値上げの申請について「電気事業法にもとづく事業者の義務というか権利だ」と堂々といってのけていた。民間営利企業で収益獲得=利益計上に苦労している経営者にとって,まことにうらやましい地域独占企業の立場であった。

http://pub.ne.jp/bbgmgt/?entry_id=4340999

国家は究極の独占である。
徴税しやすいところから徴税するというのは、「トーゴーサン=10:5:3」という言葉でよく知られている。
すなわち、税の捕捉割合が、サラリーマン10割、自営業者5割、農林水産業者3割である、ということだ。
「トーゴーサン」が正しいかどうかは別として、口先だけ「身を切る改革」を唱えているが、一向に実体的に進める雰囲気の感じられない国会や行政の改革に比べ、消費税増税だけが突出して表面に出てきているのではないか。

原発再稼働問題も同様である。
安全基準も真剣に議論せず、福島原発事故の調査さえ終了していない段階で、今夏の需給だけで大飯原発再稼働を急ごうとする野田政権は、経済的な評価基準という論理だけで突破しようと考えているようだ。
しかし、被害の全容が分からないで、どうして経済性の評価ができるのか?

いま、政-官-財の利権トライアングルの構造の一端が明らかになった。
私たちは、選挙という意思表示の手段しかないのかも知れないが、もはやサイレントでい続ける訳にはいかない。

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