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2012年5月18日 (金)

東京電力は誰のものか?/原発事故の真相(29)

5月9日、政府は東京電力の再建に向けた「総合特別事業計画」を認定した。
東電は、1兆円の公的資金投入によって、事実上国有化される。
これから、政府主導で経営の見直しが図られることになる。

  再建計画では人件費などの経費を10年間で総額3兆3650億円削減するほか、家庭向け電気料金を12年7月から平均で10.28%値上げすることなどが柱になっている。13年度以降に柏崎刈羽原発(新潟県)を順々に再稼動させる方針も盛り込んでいるが、計画通り実現不透明だ。
http://www.j-cast.com/2012/05/10131633.html

事実関係は上記のようであるが、この「総合特別事業計画」によって、あるいは政府主導の形で、山積する難題を解決していけるのだろうか?
東京新聞の5月10日付社説は「東電再生計画 目に余る国の責任逃れ」と手厳しい。

 枝野幸男経済産業相が東京電力再生に向けた総合特別事業計画を認定した。原発は国策なのに政府の責任は素通りだ。東電悪者論を振りかざすだけでは新たなエネルギー政策の展望は開けない。
 東電の西沢俊夫社長は公的資金注入などを列挙した総合計画について「国の支援をいただかないと立て直しができない」と語った。計画の本質を言い表している。
 東電には損害賠償など福島第一原発事故の処理に兆円単位の費用が重くのしかかるので、国に頼らざるを得ない。
 政府は六月の株主総会後に一兆円出資し、議決権の過半を取得して経営陣の人事権を支配する方針だ。事実上の東電国有化である。
 その伏線は早々と事故から二カ月後の昨年五月に張られた。政府への東電の支援要請に対し、当時の菅政権が「支援組織を設け、何度でも資金支援をして東電を債務超過にはさせない」と応じ、原子力損害賠償支援機構を創設した。
・・・・・・
 計画は表向き、支援機構と東電との共同策定だが、現実には政府が経産省幹部を送り込んだ支援機構の主導で進められた。原発政策は国策として政府と電力業界の二人三脚で進めてきたのに、政府は東電を牛耳り、まるで裁判官のような振る舞いを続けている。
 原発運転の直接の当事者である東電は責任を免れないが、安全神話を言い広めた政府も同罪ではないのか。大津波の危険性を認識していながら、海岸近くに原子炉冷却用の予備電源設置を認めたのは経産省の原子力安全・保安院だ。
・・・・・・
 福島第一の事故の検証は国会などでなお進行中で、新たな安全基準づくりも道半ばにある。全国で五十基ある原発は、地元自治体などの反対で今や一基も動いていない。西沢氏の後任、広瀬直己次期社長の「原子力は国のエネルギー政策の大きな土台だ」との発言は無神経にすぎないか。
 野田政権は原発依存度引き下げをどう具体化していくのか。発送電分離を含むエネルギー政策をどう築く
のか。その道筋や時期に深く踏み込まず、国民に値上げを強いるのでは納得できない。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012051002000115.html

基本的には東京新聞社説のとおりであるが、もう少し別の角度から考えてみたい。
そもそも、東電は誰のものなのだろうか?
ライブドア(ホリエモン)の野放図な資本市場至上主義的な経営をきっかけとして、企業は誰のものか、ということが真剣に問い直されることとなった。

企業の代表的な形態である株式会社においては、会社の最上位の意思決定機関は株主総会である。
社長などの経営者、より一般的にいえば、取締役は、株主総会で選任される。
ということを考えると、会社は株主のもの、といえそうである。
いわゆるシェアホルダー第一主義であり、ホリエモンらの基本的考えもその線であったといえよう。

しかし、企業を構成しているのは株主だけではない。
というよりも、上場企業においては、株主は一時的に株を所有するだけであって、むしろ会社の本質とは無関係ともいえる。
会社の利害関係者には、株主(シェアホルダー)だけでなく、金融機関、従業員、顧客、官公庁等規制機関、地域住民などがある。
これらを総合して、ステークホルダーという。
会社は、ステークホルダー全員のものとして考える必要がある。
これが、現在一般に受け入れられている考え方である。

それでは、東電の場合はどうか?
公的資金投入により、事実上国有化される。
しかし、株主としての国のものではないと考えるべきだろう。
まして、原発政策に責任を負う自民党や、原発事故対応の検証も終わっていない民主党政府のものではない。

そもそも公的資金の原資は税金ではないのか。
とすれば、第一に国民の、次いで電力のユーザーの意見が尊重されるべきであろう。
いまこそ、企業の社会的責任を本気で問わなければならない。

経済同友会が、2003年に、『「市場の進化」と社会責任経営-企業の信頼構築と持続的な価値創造に向けて』と題する「第15回企業白書」を出した。
経済同友会といえば、経営者が個人の資格で参加するという点で、経団連等の経済団体とは異なる特徴を持っていることで知られる。
レポートの具体的な内容は上記を参照していただきたいが、小林陽太郎代表幹事による「まえがき」に、CSRについての認識がある。

 CSRをわが国の状況下で捉え直すと、日本企業には二つの変革が求められる。
第1に、市場機能の活用を通じて、その収益力と競争力を高め、より効果的な経済的価値創造を行うことにより、低迷する経済を活性化させることである。
 第2に、企業が上記を行うにあたってすべてのステークホルダーに対する義務を履行するという理念を固め、それを実現するためのガバナンスを確立していくことである。

経済同友会は、15年間にわたり代表幹事を務めた東京電力の木川田一隆氏によって存在感を高めた。
今こそ、小林陽太郎氏の上記言葉や木川田氏の精神を踏まえるときではなかろうか。

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