活断層との共生/花づな列島復興のためのメモ(65)
日本列島が花づな列島という美しい名前で呼ばれることを知ったのは、小針寛司『花づな列島の奇跡-日本経済の半世紀』日経事業出版社(9611)によってである。
⇒2011年6月 1日 (水):花づな列島の奇跡
花づな列島は、増田悦佐『奇跡の日本史―「花づな列島」の恵みを言祝ぐ 』PHP研究所(1012)という著書もあるように、多くの「恵み」を私たちにもたらした。
私は、この美しい国に生まれたことを素直に喜びたい。
多くの「恵み」の一方で、数多くの自然災害も宿命のようにあった。
地震、台風、津波、竜巻、土砂災害、猛暑・・・。
毎年、何らかの心が痛むようなニュースがある。
特に昨年は東日本大震災という未曾有の大災害が起きた。
自然災害の原因である自然現象の発生そのものは、現在の科学技術では防ぎようがない。
だとしたら、上手に共生していくことを考えるしかない。
⇒2012年5月 8日 (火):火山活動との共生/花づな列島復興のためのメモ(62)
最近、活断層のニュースが多く聞かれる。
⇒2012年4月28日 (土):活断層の上の原発/花づな列島復興のためのメモ(57)
未発見のものも含めれば、日本中いたるところ活断層だらけである。
先日も私の故郷であり現住地でもある富士山麓に活断層があることが報じられた。
富士山(3776メートル)の直下に活断層が存在する可能性が高いことが文部科学省の調査で9日、分かった。地震の揺れで「山体崩壊」と呼ばれる巨大な山崩れが発生、東山麓の静岡県御殿場市などで大規模災害の恐れがある。約2900年前に起きた山体崩壊と泥流の引き金だった可能性もあり、調査チームが地元自治体に説明を始めた。
文科省が実施した3年間の調査で判明した。チームの佐藤比呂志・東大地震研究所教授は9日、結果を静岡県に伝えた。千葉市で20日から始まる日本地球惑星科学連合大会で発表する。
調査報告書などによると、富士山の東山麓で人工地震波などを使って地下構造を探査し、御殿場市付近で地下に隠れている断層を発見した。数十万年前以降の火山噴出物の地層を動かした形跡があり、活断層の可能性が高いと分析した。北東-南西方向に伸びる長さ約30キロの逆断層で北西に傾斜しており、下端は富士山直下の深さ十数キロと推定。マグニチュード(M)7級の地震を起こすとみられ、揺れで東斜面が崩壊し、大量の土砂が雪崩のように下る「岩屑(がんせつ)雪崩」や泥流が発生する恐れがあり「甚大な被害を周辺地域に引き起こす危険性がある」と結論付けた。http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120510/dst12051011290006-n1.htm
地元自治体等では大騒ぎらしいが(遠く離れた霧島にも漏れ伝わってくる)、活断層が見つかったからといって、今までの生活をどうしようもないだろう。
最悪の事態を想定して、減災を図るしかない。
静岡県で問題になるのは、浜岡原発である。
菅元首相の要請により、中部電力は運転を「停止」した。
しかし、あくまで現在は一時的な「停止」に過ぎない。
5月4日付河北新報社説は次のように主張する。
だが、活断層が存在する可能性など危険性を指摘する一部研究者の声は、国策推進の大義名分の前にかき消されてきた。福島第1原発事故で安全神話が崩壊し、事の重大性への認識がようやく高まってきたと言える。
立地場所としての適性が強く疑われている原発の一つが中部電力浜岡原発(静岡県)だ。東海沖から四国沖の海底に延びる「南海トラフ」沿いの巨大地震発生が懸念される中、想定震源域の真上に建つ。「国内で最も危険な原発」との指摘もある。
内閣府の有識者検討会が巨大地震が起きた場合の想定最大津波高を21メートルとしたのに対し、中部電はその高さの津波が来ても燃料損傷は防げると主張。経済産業省原子力安全・保安院も先月末、これを認めた。だが、厳密な根拠は示されていない。
しかも、原子炉が安定した冷却状態にあることを前提にした評価だ。稼働中ならどうなるのかは分からない。巨大地震の直接的な被害についても全く考慮されていない。
中部電は再稼働をにらんだ対策を急いでいる。しかし、立地の特殊性や危険性を考えれば、再稼働を選択する余地は乏しいのではないか。廃炉を見据えた対応こそ検討されるべきだ。
・・・・・・
浜岡原発は東京と名古屋の中間に位置する。過酷事故が起きた場合の影響は福島を大きく上回るだろう。
地元自治体などには再稼働しなかった場合の地域経済への打撃を懸念する声があるが、地元の意向を判断の基準にするレベルを超えている。
津波、地震対策が急務なのは当然だ。だが、停止状態での安全を確保し、廃炉を着実に進めるための対応と割り切ることこそ求められるのではないか。
活断層を消すことはできない。
できるだけ、カタストロフィーに至らないことを考えるべきだ。
政府は、「廃炉」の要請をこそすべきだろう。
5月8日付南日本新聞社説は以下のように主張している。
多くの原発で敷地が選定されたのは60年代にさかのぼる。過去の安全審査を知る関係者からは「活断層と地震の問題は、ほとんど注意されていなかった」との証言もある。各地の原発で、建設場所選定や1号機建設の時代にさかのぼって、最新の知識で安全性を検証し直す必要がある。
東日本大震災後、保安院は日本各地で断層の力のバランスが崩れたとして、従来考慮してこなかった活断層の連動も想定するよう電力各社に指示している。原発の安全を考えれば当然の判断だろう。
再調査で断層の危険性が確認されれば、敦賀原発の設置許可は取り消され廃炉となる可能性も否定できない。原発政策の方向性とも合わせ、国は重大な決断を迫られる事態になるかもしれない。再調査の結果を注目したい。
花づな列島に原発は必要か?
リスクとメリットを冷静に比較すべきだ。
私たちはフクシマの事故により、美しい国土を半永久的に失ったことを見つめなければならない。
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