活断層の上の原発/花づな列島復興のためのメモ(57)
福井県敦賀市の日本原子力発電敦賀発電所)の真下に、おびただしい活断層が存在する疑いが原子力安全・保安院の調査で浮上した。
活断層とは以下のようなものをいう。
活断層は〈最近の時代まで活動しており,将来も活動する可能性のある断層〉と定義される。ここでいう〈最近〉とは,厳密な規定はないが,現代の地質・地形学の分野では,一般に第四紀または第四紀の後期(およそ数十万年前以降)を指す。 1906年のサンフランシスコ地震のときに,以前から地質学的には知られていたサン・アンドレアス断層が再活動し,新たな変位を生じた。それまで断層とは,過去の地質時代に岩石がずれ動いたことを示す単なる痕跡と考えられていたのが,このとき,断層のなかには現在もまだ活動をやめていないもの,したがって将来にも活動するかもしれないものもある,という考え方が生まれた。・・・
http://kotobank.jp/word/%E6%B4%BB%E6%96%AD%E5%B1%A4
要するに、過去の遺物とはいえないということだ。
敦賀原発の敷地の地質状況は以下のように報じられている。
日本原電によると、敦賀原発の敷地内には判明分だけで約160の断層(破砕帯)が見つかっている。この日は、保安院の意見聴取会のメンバーである産業技術総合研究所と京大、福井大の専門家4人が調査を実施。1、2号機と3、4号機の建設予定地、日本原子力研究開発機構の新型転換炉「ふげん」=廃炉作業中=付近の6地点の斜面などを調べた。
その結果、2号機の原子炉の直下にほぼ南北に走る断層について「地震が起きた場合、ずれる可能性が否定できない」などの意見が相次いだ。敦賀原発の敷地内では活断層の「浦底断層」が確認されており、4人は、浦底断層が地震を引き起こした場合、原子炉直下の断層も同時に動く可能性が高いとの見方で一致した。保安院の小林勝・耐震安全審査室長は、過去に断層が動いた可能性を指摘し、「比較的新しい時代に浦底断層に引きずられたのではないか」と話した。
http://www.asahi.com/national/update/0424/OSK201204240118.html
この地層については再調査されるが地震国のわが国には、数多くの活断層が存在する。
下図は今までに公表されている活断層である。
http://www.jishin.go.jp/main/p_hyoka02_danso.htm
当然調査が進むにつれ、さらに活断層は増大していくであろう。
今回の調査結果を、原発再稼働に関連させるか否か?
私はもちろん少しでも危険性の高い原発は再稼働させるべきではない、と考える。
というよりも、本気で原発ゼロの社会を構築していくべきだろう。
エネルギーを無尽蔵に使う社会からの転換である。
メディアの論調も2極化しているようだ。
産経新聞は、敦賀原発と大飯原発は無関係であり、大飯原発の再稼働の阻害要件にはならないと主張する。
結論が出るまで敦賀原発の運転は見込めない情勢だ。だが、同じ福井県内にある関西電力大飯原発3、4号機の再稼働問題に、この件を絡めてはならない。
大飯原発再稼働の検討は、地元おおい町で26日に行われる国の説明会などを経て粛々と進められるべきである。いたずらに議論を拡散させ、再稼働への判断を遅滞させる愚は避けたい。
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日本列島は、地震の活動期に入っており、東日本大震災をもたらした巨大地震の影響で、さらに続発しやすくなっている。電力各社には地震への原発の防備を一段と強化してもらいたい。
同時に電力不足という、もう一つの危機の接近も国民が失念してはならない重大な案件である。基幹電力である原子力発電の長期停止は、日本社会を、根底からの崩壊に導く可能性をはらんでいる。大飯原発はその危機回避の分岐点だ。適切な判断に基づく再稼働の意味は極めて大きい。
http://sankei.jp.msn.com/smp/politics/news/120426/plc12042604000003-s.htm
政府・民主党の路線も似たようなものと言えよう。
これに対し、朝日新聞は、敦賀原発に限らず、調査を拡充すべしという意見だ。
忘れてならないのは、この問題は敦賀原発だけに限った話ではないということである。
国内で原発立地が大きく進んだ1970~80年代に比べて、最近は活断層をめぐる新しい知識が蓄積してきた。
・・・・・・
東海、東南海、南海地震などのプレート境界型地震とは違って、活断層による地震は、発生周期を読みとるのは難しい。しかも日本列島のあちこちに走っているので「いつ」「どこ」で起こるかがわからない。
今こそ、科学者の3・11後の新しい目でもう一度、全国の原発周辺の断層を調べ、活断層の影響や揺れがどうなるかを見直すべきだ。
http://www.asahi.com/paper/editorial20120426.html#Edit1
東京新聞は、詳細な調査が済むまでは、大飯原発を含めどの原発も再稼働すべきではない、としている。
敦賀原発の直下を含む敷地内には、破砕帯と呼ばれる古くてもろい断層が、少なくとも約百六十本走っているのが知られていた。さらに、敷地内には活断層の「浦底断層」が通っている。浦底断層が起こす地震に、破砕帯が連動する恐れがあることは、以前から知られていた。しかし、原電は設計上の考慮に入れていない。
ところが東日本大震災が、風向きを変えつつある。動かないはずの断層が動いたからだ。
・・・・・・
地中深くに何があるかは、まだよく分かっていない。二〇〇七年の新潟県中越沖地震を起こした海底断層が柏崎刈羽原発の直下まで延びていることも、その余震を分析してみて初めて分かった。津波、電源だけでなく、巨大地震の揺れへの配慮が必要なのは、中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)だけではない。
保安院から指摘を受けた四原発のうち、泊1、2号機と敦賀2号機が安全評価(ストレステスト)を保安院に提出し、再稼働を求めている。だが敦賀の結果を見れば、活断層の詳細な実地調査と連動の影響評価がすむまでは、泊や敦賀、渦中の大飯原発などに限らず、どの原発も再稼働を許すべきではない。全原発で詳細に調査し直して、結果を公表すべきである。
連動を考慮に入れれば、敦賀原発は活断層の真上にあるといえるだろう。ルール上、1、2号機ともに廃炉は免れない。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012042602000117.html
「3・11」を体験したわれわれは、原発に対して、というよりも未知なる地球の営みに対してもっと謙虚になるべきではなかろうか?
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