理解と同意/「同じ」と「違う」(46)
橋下大阪市長の発言が波紋を起こしている。
橋下市長は同日朝、報道陣の取材に対し、当初は「支離滅裂と言われて、僕は普段からそうだから、そうかなと思う」と話していたが、次第にヒートアップ。藤村氏が、再稼働をめぐる大飯原発の隣接府県の了解要件について「理解と同意は違う」と発言したことについても「理解と同意は、市民もうちのオカンもみんな同じ意味だと思っている。政治家としてあり得ない」とぶちまけた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120411-00000527-san-pol
問題は、「理解と同意は、市民もうちのオカンもみんな同じ意味だと思っている」という部分である。
辞書的には、「理解」と「同意」は明らかに異なる。
実生活でも、「理解はするが同意はできない」ということはザラにある。
「理解」の英訳は?
辞書には次のように載っている。
understanding
【形式ばった表現】 comprehension
understandingは馴染みがある。
comprehensionは馴染みがあるとはいえないかもしれないが、comprehensiveと銘打った参考書があったような気がする。
「同意」は、英語ではagreeだろう。agree to disagreeという表現がある。
agree to disagree [differ]
見解の相違であるとしてそれ以上争わないことにする
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch/1/1na/001369000/
あるいは、名詞形のagreement。
「協定、 契約」の意味で企業では普通に使われている。
たとえば、NDA=Non-Disclosure Agreement。
一般に公開されていない情報を入手する場合に、その情報を外部に漏らさせないために交わす契約のこと。新しいOS向けのアプリケーションソフトを開発してもらうために、開発中のOSのコードをアプリケーションソフト開発会社に引き渡すような場合に使われる。
http://e-words.jp/w/NDA.html
これらの用例からすれば、「同意」と「理解」は違うだろう。
という意味では、藤村官房長官は正しい、のか?
しかし、である。
言葉の意味は文脈によって定まる。
文脈が上位で、単語は下位である。
その言葉がどういう文脈で用いられているかが重要である。
「アナタなんて大嫌い!」という愛情表現だってあるのだ。
この場合は、文脈をどう考えるか?
私は常識的に、「地元の理解を前提として」と言えば、地元が納得して同意すれば、ということだと「理解」する。
藤村氏と橋下氏のやりとりをみてみよう。
そのことについて官房長官は支離滅裂とコメントされました。枝野大臣は京都と滋賀の理解を得なければならない。さらには国民全般の理解を得なければならないと発言。その後、理解と同意は異なると発言。官房長官は地元の同意は法的に義務付けられているものではないと発言。 via ついっぷる/twipple
2012.04.10 23:55僕の国語能力では、理解と同意の区別は分かりません。大阪市が地元の範囲に入るのかも分かりません。国がどこまでを地元とし、そして地元自治体との関係で何を要件とされているのかも分かりません。大阪には国の方針が何も伝わってきません。むしろ国の方針が錯綜していると感じます。 via ついっぷる/twipple
2012.04.11 00:00
引用は、橋下氏のtwitterだから公平ではないかも知れない。
しかし、私の感覚からすれば、激しく「同意」である。
枝野氏の発言のブレについては先日触れた。
⇒2012年4月 4日 (水):「大飯原発再稼働」の政治判断?/原発事故の真相(24)
ブレと言うよりも、二枚舌という方が合っている。
枝野氏が「国民全般の理解を得なければならない」と言ったときの「理解」は、明らかに「同意」の意味を持った「理解」のはずである
辞書に、次のような用例があった。
「地元の理解を求める」という場合は、to understandを求めるというよりも、to permissionを求めるに該当するのではないか。
だいたい、同意の意義を含まない理解をすればいい、とはどういうことだろう。
単に、説明を行えば、「一定の理解が得られた」などと言い出しかねないことは目に見えている。
枝野氏や藤村氏のような二枚舌、三枚舌の使い手が政府の要職に居座っていることを問題とすべきではないか。
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