川平法の印象/闘病記・中間報告(47)
早いもので、霧島での生活も10日余が過ぎたことになる。
この間、自分なりに精一杯リハビリに取り組んできたつもりであるが、生来の不器用さもあってまだ目に見えた効果はない。
しかし、まったく動かなかった右手の中指に、かすかな蠢動の気配は感じる。
季節外れの啓蟄といったところか。
あと2週間続ければ、目に見えるレベルになるのではないか。
今日は振替休日ということで、リハは連休である。
あいにく朝から雨天であったが、昼には雨は上がったようである。
朝方の病棟からの風景
GWは、あと5日(土)と6日(日)が連休となるので、今週はリハは4日になる。
個人的にはやっていただきたくてウズウズする気持ちではあるが、世の中は「風薫る」ころであり、療法士の方々にも家族がいらっしゃる。
わたし自身、若いころは、休みになると待ちかねたように、家族を連れ出して出かけていたのだから。
一般論でいえば、日本人のライフワークバランスは、まだまだワークに傾いているだろう。
むしろ、○連休などと言われている中で、最大2日の連休しかないのは立派である。
それにしても、看護師は大変である。
そういう仕事といってしまえばそれまでであるが、本当に頭の下がる思いである。
わがままをいう患者に辛抱強くつきあっている。
なるべく煩わせないでいたい。
昼食後病室で一休みしていると川平教授が部屋に現われて、今からトレーニングできるか、と言う。
どなたかに、川平法の実際を見させるのが目的らしいが、願ってもないチャンスなので、「もちろん、できます」と答えた。
約1時間半、私ともう1人の患者2人に対して、交代で施術をしていただいた。
まだ「川平法=促通反復療法」についてはぼんやりとしか理解できないが、今までに得た知識をまとめておこう。
まず、去年の9月4日のNHKスペシャル「脳がよみがえる~脳卒中・リハビリ革命~」をみた時のメモである。
筆記ができないので、詳細なメモは不可能である。
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279万人/脳卒中/リハビリ/6カ月過ぎると麻痺が直らないという常識/藤田太寅元NHK解説委員-4年前に脳卒中発症/2009年「戦うリハビリ」/4年間ではかばかしく改善しなかった/指で輪を作る/1分で可能にする/脳の再生力/脳卒中リハビリの最前線/脳卒中の死亡率は改善された/要介護の30%は脳卒中/回復曲線における6カ月の壁/乗り越えるリハビリ/鹿児島大学病院霧島リハビリテーションセンター/入院患者50人のほとんどが6カ月の壁を過ぎた人/鹿児島大学医学部川平和美教授/ある患者10点/手首を回す/脳の活動/全体から部分へ/脳から手足への神経連絡/理化学研究所脳科学総合研究センター脳信号処理研究チーム/ブレインマシンインタフェイス/脳波を取り出してその指示とおりにロボットのアームが動く/2009年9月20日の日曜日の新聞記事/慶應義塾大学病院/力を抜く/脳波→増幅→促通反復→回復/機能テスト/大阪森ノ宮病院/褒められること-教育/具体的にほめる/すかさずほめる
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脳卒中により脳のある部位の細胞が死ぬ。
その結果として、壊れた部位に対応した機能に障害が起こる。
川平和美『片麻痺回復のための運動療法・第2版』医学書院(1005)
死んだ脳細胞は復活することはない。
障害が後遺症として残ることになる。
ところが、脳には可塑性があるらしい。
可塑性とは、物質などが、外部からの入力に対応して変形適応すること、である。
脳の可塑性とは、脳に新しい回路が形成されることである。
損傷した部位に替わって、新しく機能を再構成する能力があるということだ。
言いかえれば、頭の柔らかさということになろうか。
身体の機能回復のトレーニングは、実は頭の体操だったのである。
上掲書に、片麻痺回復のための4つの視点として、以下が挙げられている。
1)片麻痺の回復は、大脳皮質から脊髄前角細胞までの新たな神経回路の形成・強化である。
2)麻痺の回復促進は、促通手技や注意喚起によって、目標の神経路の選択的興奮を実現し効率よく強化するかに依存する。目標の運動と実際に生じた運動の誤差が確認できる状態で、その誤差の修正を繰り返す。
3)神経側芽やアンマスキングによるダイナミックな神経路の組み換えが行われている時期に、できるだけ多くの刺激と運動を反復する。
4)筋肥大による筋力増強を目的とした訓練と、損傷された神経路の再建と強化を目的にした運動パターン反復を区別する。最大の筋力を求める訓練は、強化したい神経路だけでなくほかの神経路の興奮を伴うため選択的な神経路の形成・強化には効果的ではない。
私にとって新鮮だった点を思いつくままに記すと以下のようなものである。
1)右肩が亜脱臼していること→力が入りにくい
2)驚くほどの反復を実行すること
3)極力不自然な力が入るのを避けること
4)上記の一環として、歩行時に健側に重心を置くよう留意すること
今までは、どうしても麻痺側をかばうので、麻痺側に重心を置くように注意されてきた
5)低周波の電流を流すことにより、筋収縮を促進すること
6)誤差の極小化はマネジメント手法と同一であること(Do→Check or See)
効果は時間を要するだろうが、死んだ細胞の齢を数えても始まらない。
なんとか新しい神経路を形成すべく努力するしかない。
それが、頭のヤワラカサの指標でもあるのだから。
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投稿: 住兵衛 | 2012年5月 5日 (土) 10時19分