厚労省不正郵便事件の不可解な着地点/花づな列島復興のためのメモ(49)
既に遠い過去になってしまった感があるが、社会的に大きな反響を呼んだ厚労省不正郵便事件という事件があった。
振り返ってみよう。同事件について、Wikipediaでは以下のように解説している。
障害者郵便制度悪用事件(しょうがいしゃゆうびんせいどあくようじけん)とは、2009年に大阪地方検察庁特別捜査部が、障害者団体向けの郵便料金の割引制度の不正利用があったとして、障害者団体・厚生労働省・ダイレクトメール発行会社・広告代理店・郵便事業会社等の各関係者を摘発した郵便法違反・虚偽有印公文書作成事件。
事件関係者とされた人のうち、虚偽の内容の公文書を発行させた事件については厚生労働省の局長・村木厚子と自称「障害者団体」会長・倉沢邦夫、発起人で幹部・河野克史については無罪となった。その後、本事件を担当した主任検事・前田恒彦、および上司の特捜部長・大坪弘道、特捜副部長・佐賀元明(いずれも当時の役職)が本事件の捜査中における違法行為の疑いで最高検察庁に逮捕される極めて異例の事態になった。
つまり公文書を偽造する形の郵便割引制度をめぐる不正があった。
事件の骨格は、偽造公文書は誰の責任で発行され、誰がメリットを享受したか、である。
検察は、発行責任者が不正公文書の発行の条件として、何らかの便益の提供があったという仮説を立てた。
ここまでは特に問題となるような点はないように思える。
しかし、検察側は、この仮説に合致するように、証拠を改竄していた。
改竄は、担当検事の独断で行われたのか、組織ぐるみで行われたのか。
「法と証拠」に基づいて行われるべき司法判断の根底が揺らいだ。
⇒2010年9月22日 (水):クリシンはどこへ行った?
⇒2010年10月20日 (水):佐藤優氏の大阪地検特捜部擁護論
検察の実態を知らしめたという意味では、同事件は大きな役割を果たしたといえる。
しかし、それは事件の副産物というべきものであって、事件の本線はどう決着したのか?
郵便制度を不正利用した障害者団体側に対する高裁の判断は無罪だった。
これに対し、大阪高検が上告せず、無罪が確定した。
実態のない障害者団体に郵便料金割引を適用させるための偽証明書が発行された「郵便不正事件」で、有印公文書偽造・同行使の罪に問われた「凜(りん)の会」(解散)の発起人、河野克史(こうの・ただし)被告(71)を無罪とした大阪高裁判決について、大阪高検は5日の上告期限までに手続きを取らず、無罪が確定した。
大阪地検特捜部が捜査した郵便不正事件では、今年1月の大阪地裁判決で上村(かみむら)勉・元厚生労働省係長が単独で偽証明書を作成したと認定され、共犯として起訴された元同省局長の村木厚子さんら3人は無罪が確定した。
http://mainichi.jp/select/news/20120406k0000e040186000c.html
この事件は何だったのだろうか、という気がする。
検察が、「法と証拠」に基づくべきことは言うまでもない。
したがって、捏造された証拠に基づいた判断は排除されるべきことは当然である。
しかし、「郵便制度を悪用した不正事件」は確かに存在したのであるから、その不正を実行した人間、その不正により不当な利益を享受した人間は、相応の罰を受けるべきであろう。
「凜の会」という障害者団体は、家電量販店や紳士服販売店のDMを、心身障害者用低料第三種郵便物として利用し、割引額は37億5千万円を不当に受益した。
上記のWikipediaでは、「障害者団体・厚生労働省・ダイレクトメール発行会社・広告代理店・郵便事業会社等の各関係者」とあるが、それぞれの「罪と罰」はどうなのか?
罪を犯した者は、相応の罰を受ける。
その公正・公平を維持することは、社会秩序の基本であろう。
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