AIJ投資顧問をめぐる闇(6)被害の構造/花づな列島復興のためのメモ(45)
AIJ投資顧問による多額の厚生年金基金消失問題について、私は、詐欺事件として立件すべきだと考える。
詐欺とは何か?
刑法では、詐欺罪について次のように規定している。
つまり、詐欺は、「人を欺いて」ということが基本的な要件であるが、山崎和邦『詐欺師と虚業家の華麗な稼ぎ方 人はこうして騙される』中経出版(0511)は、詐欺のプロセスを次のように分解している。
詐欺の第一段階:詐欺をしようとする相手を欺くこと
⇒2009年5月 4日 (月):詐欺の第一段階としての錯覚誘導
詐欺の第二段階:被害者が「瑕疵ある意思決定」をすること
⇒2009年5月 5日 (火):詐欺の第二段階としての瑕疵ある意思決定
詐欺の第二段階:財物の受け渡しによるクロージング
⇒2009年5月 6日 (水):詐欺の第三段階としての財物の受け渡し
AIJ投資顧問の浅川社長の国会招致の際の問答は以下のようであった。
--いつの時点からだまそうと行動したのか
「はっきり申しまして、だます気は全くありません」
・・・・・・
--公認会計士に運用報告書の改竄(かいざん)を依頼したか
「私が水増しした数字を渡して作っていただいた。だますというのではなくて、水増しして今の状態を維持したかった」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120328-00000115-san-soci
浅川社長が「だます気はありませんでした」と強調するのは、「だます」ことが詐欺の要件であるからである。
しかし、人を欺こうという人が、「最初からだますつもりでした」とは言うはずもない。
「だますのではなく、水増ししただけだ」という。
普通は「水増し」していることを隠して取引することを、「だます」というのではなかろうか?
詐欺の被害者は、錯覚によって、だまされる。
巧妙な詐欺とは、被害者が「だまされた」と気がつかないようなものといわれる。
♪どうせ私をだますなら 死ぬまでだまして欲しかった
西田佐知子「東京ブルース」
AIJ投資顧問の場合、浅川社長は、「だます気はなかった」けれど、運用報告書は「水増ししていた」というのである。
<加入者→母体企業→年金基金→AIJ投資顧問>という資金の流れを想定する。
なにをもって「だました」というかであるが、AIJ投資顧問が、「だました」側にいることは間違いないであろう。
それでは「だまされた」のは誰か?
被害に遭った年金基金は、AIJ投資顧問の被害者であると同時に、年金の母体企業と加入者に対しては加害者の立場でもある。今回の損失で引き起こされた積立不足(の拡大)は、第一義的には企業が穴埋めすることになるが、これは間接的に年金加入者の給料やボーナスに悪影響を与えるし、企業が負担し切れない場合に、損失が加入者の直接的負担になる場合もあり得る。年金制度は複雑で、AIJ投資顧問の被害者も誰なのか分かりづらい。
http://diamond.jp/articles/print/16455
年金基金も母体企業も、共に被害者であると同時に加害者でもある。
しかし、責任の大きさは、「年金基金>母体企業」であろう。
また次のようにいう人もいる。
AIJ投資顧問が年金資産2000億円の大半を消失させた問題では、運用を委託していた84の企業年金の約88万人に影響が出るというのが一般的な報道だった。新聞もテレビも複雑な年金制度を理解していないので、問題の本質をはき違えている。
・・・・・・
この認識には大きな間違いがある。
被害を受けるのは、たった88万人ではない。AIJが消失させた年金基金の一部は日本全国の3441万人のサラリーマンが加入する厚生年金が補填することになる。つまり、AIJにあなたの年金が喰われたことになるのだ。ただでさえ年金財政の破綻が迫っているのに、消失問題によってまた財政が苦しくなる。
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/postseven-20120305-92417/1.htm
つまり、サラリーマン全体が被害者だというわけである。
「そんなバカな」と思うが、それは年金制度全体のしくみの問題ということになる。
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