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2012年3月13日 (火)

五木寛之と親鸞の思想/花づな列島復興のためのメモ(38)

昨日、五木寛之さんの『下山の思想』幻冬舎新書(1112)に触れたが、偶々今朝の産経新聞の「話の肖像画」という欄に、五木さんが登場している。
親鸞と現代(上)作家・五木寛之 震災で見えた「慈悲」の痕跡』という記事である。
この記事に付されている五木さんの略歴を引用しておこう。

昭和7年、福岡県生まれ。79歳。生後まもなく朝鮮半島にわたり、戦後に引き揚げた。早稲田大学文学部ロシア文学科中退。昭和41年『さらばモスクワ愚連隊(ぐれんたい)』で小説現代新人賞、翌42年に『蒼(あお)ざめた馬を見よ』で直木賞。51年には『青春の門』で吉川英治文学賞受賞。ほかの著書に『戒厳令の夜』『大河の一滴』など。リチャード・バック著『かもめのジョナサン』の翻訳でも知られる。

私は、『さらばモスクワ愚連隊』(正確には、単行本の同書に収められている雑誌掲載の『GIブルース』)で衝撃を受け、『蒼ざめた馬を見よ』等の初期作品はほとんど読んでいるが、『青春の門』の時代には積極的な読者ではなくなっていた。
⇒2011年3月22日 (火):津々浦々の復興に立ち向かう文明史的な構想力を
しかし、『戒厳令の夜』、『風の王国』、『さかしまに』、『旅の終わりに』などの作品集は記憶に残っている。
五木文学の魅力は、巧みなストーリー展開と共に、時代の風向きを鋭敏に捉えるアンテナであろう。
風見鶏という表現は概していい意味では使われないようであるが、エッセイ集のタイトルそのままに、まさに『風の吹くまま』という感じである。

産経新聞のインタビューは、1月に刊行された等辺小説『親鸞 激動編』(講談社)の話題からスタートする。
親鸞が生きた時代は、「王朝から武家への政権交代と度重なる災禍に見舞われた歴史の大転換期」だった。
ちなみに、親鸞の生没年は1173~ 1262年である。
昨年は没後750年ということで、西本願寺を中心に記念イベントが行われた。
⇒2011年11月30日 (水):龍谷ミュージアム/京都彼方此方(3)

五木さんが龍谷大学の聴講生(?)になったことや『百寺巡礼』など作品からして、仏教に並々ならぬ関心を抱いているだろうことは推測できた。
しかし、ここで話題にしている『親鸞 激動編』は未読だる。
読まずに言うのはおこがましいけれど、五木さんは「親鸞」のどういうところを描こうとしたのか?

親鸞は法然の弟子である。
法然は、1133年に生まれ、1212年に没した。親鸞より40歳年長ということになる。

はじめ山門(比叡山)で天台宗の教学を学び、1175年(承安5年)、もっぱら阿弥陀仏の誓いを信じ「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えれば、死後は平等に往生できるという専修念仏の教えを説き、のちに浄土宗の開祖とあおがれた。
Wikipedia

法然の誰でも死後には必ず浄土に迎えられるという教えは、当時の支配階級あるいは既存仏教と衝突するものでもあった。
法然は、顕密の修行のすべてを難行・雑行としてしりぞけ念仏を唱える易行のみが正行としたのであった。
ひたすら念仏のみを修せよという専修念仏である。
日本仏教史上初めて、一般の女性にひろく布教をおこなったのも法然であり、かれは国家権力との関係を断ちきり、個人の救済に専念する姿勢を示した(Wikipedia)。

五木さんは、関東地方などで実際に苦しみながら必死で生きている人々と接した親鸞にとっては、どこか「それでいいのか?」という思いがあったのではないか、という。
師の否定である。
親鸞の生きた時代と、現在は、日本の歴史の中でも重なる部分が多い、と五木さんはいう。
「明日がわからない」という不安な空気である。

国内で自殺者が毎年3万人を超えている。
⇒2012年2月 8日 (水):「あなたもGKB47宣言!」のから騒ぎ
原因は何か?
病気や貧困は、トリガー(引き金)ではあっても本当の原因ではない、と五木さんはいう。
年金制度の問題や地震への恐れなど、漠然とした不安が日本を覆っており、生きづらい、希望がない、ということなのだ。
⇒2012年1月 3日 (火):ぼんやりした不安の時代

親鸞は生きている間に、人間がなんとか生を投げ出さずに生きていく道がないか、と模索した人だから、現在のような不安に満ちた時代に指針となるのではないか。
東日本大震災において、互いを思いやる日本人の姿は世界を感動させた。
それは、長い歴史の中で空気のように仏教の根本の感情が、思想ではなく、遺伝子のような形で生き続けているのでは、と五木さんはいう。

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