「サトウの切り餅」と 越後製菓の特許(3)/「同じ」と「違う」(44)
「切り餅」の特許をめぐって争われていた事件で、知財高裁は佐藤食品が越後製菓の特許を侵害していると認定した。
判決によると、越後製菓は側面に切り込みを入れた切り餅を開発し、02年10月に特許出願したうえで03年から販売を開始。08年に特許登録された。これに対して佐藤食品は、03年7月に側面と上下面に切り込みを入れた切り餅の特許を出願し、同9月から、ふっくら焼けることを強調して販売した。
佐藤食品は「02年10月に切り込みを入れた商品の販売を開始していた」と主張したが、判決はその商品には上下面しか切り込みがなかったと指摘。判決で飯村裁判長は「側面の切り込みが5品目の売り上げ増加の一因となった」として、販売への寄与を約7億3000万円と認定した。
佐藤食品は昨年12月、「今後のリスクを回避するため」(同社)に切り込みを上下面のみとしたため「判決による製造・販売への影響はないと考える」としている。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20120323ddm012040122000c.html
この訴訟については、私は越後製菓に分があるだろうと考えていたので、判決は妥当ではないかな、考えていた。
⇒2010年12月 1日 (水):「サトウの切り餅」と 越後製菓の特許/「同じ」と「違う」(24)
⇒2011年9月15日 (木):「サトウの切り餅」と 越後製菓の特許(2)/「同じ」と「違う」(30)
しかし、上記記事にもあるように、佐藤食品も特許を取得しており、そこのところをどう考えるべきか?
佐藤食品としては、特許が下りたので、と考えて事業を実施していたと想定される。
その事業が先行特許に抵触していると認定されたわけである。
2つの(原告:越後製菓、被告:佐藤食品)の特許はどういう関係にあるか?
餅へ切り込みの入れ方を、横への切り込み(四角形)と、面への切り込み(円形)とに分けて考える。
原告の特許公報には,下記のような文言がある。
本発明は、この切り込み3を単に餅の平坦上面(平坦頂面)に直線状に数本形成したり、X状や+状に交差形成したり、あるいは格子状に多数形成したりするのではなく、周方向に形成、例えば周方向に連続して形成してほぼ環状としたり、周方向に複数配置してほぼ環状に配置したり、あるいは側周表面2Aに周方向に沿って形成する
原告の特許は、周方向(横)への切り込みに限定されている(ように解釈できる)。
これに対し、被告の特許は以下のように請求している。
被告特許では、上面、下面への切り込みが必須であり、原告が除外した部分のみを権利範囲にしている。
つまり原告と被告とが権利範囲の棲み分けをしたことになる。
ベン図で表現すれば、下図のようである。
http://ipwo.kilo.jp/info/omou_mochi.htm
被告は、特許権が成立したので、その範囲で実施していたのである。
今回の判決は、以下のような点をどう解釈したのだろうか。
1.原告と被告の特許は棲み分けていないのか?
2.としたら、原告の特許がなぜ成立したのか?
それに、そもそもこれらの「技術」は特許に値するものだろうか、という問題もある。
特許の要件は以下のように要約できる。
⇒2012年2月27日 (月):ビジネスモデルとビジネスモデル特許/「同じ」と「違う」(43)
餅に刃物で切り込みを付けて焼くことは、ある意味で当たり前に行われていることと思われる。
新規性、進歩性共に疑問ではないか。
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