『検証原発事故報道』/原発事故の真相(21)
上記は、『検証原発事故報道-DAYS JAPAN4月号臨時増刊』の冒頭に記されている言葉である。
『DAYS JAPAN』は、広河隆一氏が発行人・編集人となっている月刊の写真誌。
クオリティは高いが、『文藝春秋』などと比べると割高な感じがするので、定期購読はしていないが、気になる特集の号は購入する。
上掲号は、以下の構成の特別号である。
第一章 運命の1週間
第二章 12人の証言
A4版で細かい字で段組されている。
224ページもあるので、永久保存して必要に応じて読むことになるだろう。
この「はじめに」は、フクシマ原発事故の報道に対して私が抱いていた思いの通りである。
圧巻は第一章である。
「東電・保安院・官邸他」、「NHK」、「民放」、「新聞」、「Twitter、ブログ」、「検証」に分けて、当時の記録をタイムスタンプ入りで整理してある。Twitterなどは、秒単位の時刻が示されている。
たとえば、「検証」の部分で気になっていたことの1つが次のように解説されている。
佐野眞一さんの『津波と原発』講談社(1106)に記されている文章が、ずっと心に引っかかっていた。
福島県警の通信部隊はその作業を終えて、間もなく、引き上げていった。
「そのとき彼らは、『国はデータを隠している。もうここにいない方がいいですよ』と言った」
――えっ、それは重大な証言だ。もう少し詳しく話してください。
「『今回の原発事故は重大で深刻だから、国は隠す。私らも撤収して帰れって命令が来たから帰りますが、ここにはいない方がいいですよ』と言って、帰っちゃったわけ」
――彼らが来たのは間違いなく十二日でしたか。
「間違いなく十二日の朝だった。そしてその日の夕方には撤収命令が出たからって、帰っちゃった」
――くどいようですが、そのとき彼らは「国は隠すから、あなたたちも撤収した方がいいですよ」と言ったんですね」
「うん、『ここはいない方がいいいですよ』と、言った」
福島第一原発の一号機で水素爆発が起きたのは、三月十二日の午後三時半過ぎだった。浪江の牧場を借りて通信機材をセットした福島県警の通信部隊は、ヘリコプターで撮影されたその爆発時の動画を通信衛星で県警本部に送った。県警本部はその動画を解析した結果、危険と判断したから、通信部隊に撤収命令を出した。
(p94)
⇒2011年9月11日 (日):政府による「情報の隠蔽」は犯罪ではないのか
「検証」欄で、その間の様子が説明されている(pp52~54)。
朝日新聞連載「プロメテウスの罠」は2011年10月から開始され、その第一回は「防護服の男1 頼む,逃げてくれ」(朝日新聞 前田基行記者)だった。
・・・・・・
『何? どうしたの?』みずえが尋ねた。『なんでこんな所にいるんだ! 頼む、逃げてくれ』
みずえはびっくりした。『逃げろといっても……、ここは避難所ですから』
車の2人がおりてきた。2人ともガスマスクをつけていた。『放射性物質が拡散しているんだ』。真剣な物言いで、切迫した雰囲気だ。
・・・・・・
これは福島県の測定班だった。彼らは國に先んじて測定し、高濃度の放射性放出の事態を知った。しかし県はこれを隠し、人々を被爆させたのである。
「東電・保安院・官邸他」の欄を見てみよう(p61)。
3月13日 02:17~(VTR/12日21:00前)
枝野幸男(政府官房長官)「原子力施設は、鋼鉄製の格納容器に覆われております。そしてその外がさらにコンクリートと鉄筋の建屋で覆われています。この度の爆発はこの、建屋の壁が崩壊したものであり、中の格納容器が爆発したものではないことが確認されました」(NHK)
このような状況で、「自分の手で、自分や家族を守れ」と言われても、果たして可能だろうか?
せめて分かっている情報は、細工をしないでオープンにしてほしい(当たり前のことだけど)。
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