AIJ投資顧問をめぐる闇(4)ケイマンによる「見えさる化」/花づな列島復興のためのメモ(42)
企業人は、「見える化」ということに心を砕いているといえよう。
「見える化」とは最初耳にしたときは奇妙な日本語のようにも思えたが、すっかり定着しているようである。
⇒2011年2月 9日 (水):ファシリテーターと理路の見える化/知的生産の方法(10)
Wikipedia では、以下のように解説されている。
見える化(みえるか)とは、広義には可視化と同義だが、狭義には可視化されづらい作業の可視化を指す経営上の手法として、一部の人が使っている言葉である。学術的な用語として確立した言葉ではない。
この語は、もともと、企業活動の漠然とした部分を数値などの客観的に判断できる指標で把握するための可視化に対して用いられた。測れる化とも言う。ただし、今日では「可視化」全般に対して使われる例もある。
(特にビジネスにおいては)作業についての情報を組織内で共有させることにより、現場の問題などの早期発見・効率化・改善に役立てることを目的とする。業種などにより適用方法は異なるが、一般的には問題・課題の認識に利用される。図・表・グラフにして可視化する場合もあれば、音・光による体感認識を用いた可視化もある。
問題の解決策を講じるために、問題点の把握を目的として見える化を行うことがある。
ITインフラの整備により、電子データ化された各種業務内容を有効活用するために、蓄積されたデータの抽出・加工によって見える化を行う場合がある。
要は、認識の適切・的確を期すために行われるといっていいだろう。
情報とは何か?
情報の定義は数多くある。
情報産業の一隅にいたとき調べたことがあるが、一端を示せばたとえば下記のようである。
☆われわれが外界に適応しようと行動し,また調節行動の結果を外界から感知する際に,われわれが外界と交換するものの内容。
ウィーナー『人間機械論』みすず書房(1954)
☆①あることがらについての知らせ。
②判断を下したり行動を起こしたりするために必要な知識
『広辞苑(第4版)』岩波書店(1991)
☆人間と人間との間で伝達されるいっさいの記号系列。
梅棹忠夫『情報産業論』「放送朝日」(1963)
私のお気に入りは、次の表現である。
☆情報とは,均一なbackgroundの中に,これと区別できる何等かの特徴をいう。ただし,均一とか区別とかは,すべてわれわれの認識の限界内での話とする。
牧島象二『Patternに憑かれて』牧島象二先生記念会(1969)
それでは、人間は、「区別できる何等かの特徴」をどうして認識するか?
いわゆる五感といわれるものである。?
五感の比率について、確定したデータとはいえないが、下記のような説がある。
人間は、五感をどれくらいの割合で利用しているのでしょう。
視覚 87%
聴覚 7%
触覚 3%
臭覚 2%
味覚 1%
http://i.fromes.info/iroha/tclook1.html
つまり圧倒的に視覚に頼っているわけである。
可視化あるいは分かりやすく可視化することの重要性は当然ともいえる。
ところが、世の中にはわざわざ分かりにくくする工夫をする人もいる。
暗号や迷彩などがそうである。
これらは、敵対する側に真の姿を掴ませない工夫であり、生物の擬態や保護色なども同じであろう。
つまり、上記の定義によれば、「均一なbackgroundの中に,これと区別でき」ないようにしてしまう。
資金を海外の租税回避地(タックスヘイブン)と呼ばれる地域を経由させ、痕跡を消してしまうことが行われている。
なぜか?
分かっては都合が悪いからである。
典型的には何らかのブラックマネー、地下(秘密)資金等と呼ばれる類である。
資金洗浄(マネーロンダリング)である。しかし、洗浄したからといって、黒いものが白くなるわけではない。
大企業のほとんでがタックスヘイブンを利用しているとも言われもするが、実態は分からないというべきであろう。
ニコラス・シャクソン/藤井清美訳『タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!』朝日新聞出版(1202)という著書があるように、闇の中の世界であって、不可視なのである。
まさに可視化=「見える化」の反対である。
タックスヘイブンとして有名なのは、ケイマン諸島である。
スティーブンソンの海賊小説『宝島』のモデルともいわれる。
http://matsuokakatsuhiko8.blog.fc2.com/blog-date-20120302.html
「ケイマンへ資金を移動させて運用する」などというのは、それだけで何か後ろめたいことがあるのではないか、と考えるのが普通の感覚であろう。
AIJ投資顧問の企業年金消失問題で、浅川社長の国会招致のTV中継を見ていたが、予め仕組まれていた犯罪行為という心証は変わらない。
⇒2012年3月 3日 (土):AIJ投資顧問をめぐる闇/花づな列島復興のためのメモ(31)
⇒2012年3月 6日 (火):AIJ投資顧問をめぐる闇(2)/花づな列島復興のためのメモ(32)
⇒2012年3月23日 (金):AIJ投資顧問をめぐる闇(3)/花づな列島復興のためのメモ(40)
AIJ投資顧問の資金運用の姿の図解は種々あるが、下図はもっとも端的で分かりやすい。
http://www.asahi.com/business/update/0225/TKY201202250247.html
『「ケイマンを使う運用会社には預けない」では何も解決しない』と説く人もいる。
確かに、「ケイマンを使う運用会社には預けない」は十分条件ではないかも知れない。
しかし、必要条件ではあるようだ。
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