グループ一九八四年とは?/花づな列島復興のためのメモ(30)
「グループ一九八四年」という名前の匿名の筆者が論壇に登場したのは、1975年の『文藝春秋』2月号だった。
私は、その雑誌論文を読んだ記憶はあるが、私自身若かったこともあって、自分の未来についてさほど悲観的な心境にはならなかったような気がする。
また、「共同執筆・グループ一九八四年」と書かれている以上、当然、筆者は複数人が関与しているものだと思っていた。
『文藝春秋』の最新号(1203)に、再掲されている。
きっかけは、朝日新聞の1月10日の一面で、若宮啓文主筆が注目したことによる。
朝日新聞と文藝春秋あるいはグループ1984年とは、基本的なスタンスに大きな違いがある、と思うのが私だけでなく一般的な印象ではなかろうか。
しかし、若宮主筆は、この論文に肯定的に言及しているのだ。
「朝日の右傾化がきわまった」のか、「グループ1984年の先見性があった」のか、はたまた・・・。
ところで、グループ1984年とはどのようなメンバーなのか?
『文藝春秋』の元編集長田中健五氏が、1203月号に『「グループ一九八四年」とは何者か』を書いている。
田中氏によれば、「日本共産党『民主連合政府綱領』批判」を掲載した『文藝春秋7406月号』の「編集部あとがき」に、「グループ一九八四年は、各分野の専門家二十数名からなる学者の集団」と記されている。
そして、メンバーの中心は香山健一(元学習院大学教授)であることがわかっており、他に公文俊平(元東大教授、現多摩大学情報社会学研究所所長)、佐藤誠三郎(東大名誉教授)らが関わっていたのではないかと推測している。
これらのメンバーは、いずれも中曽根首相のブレーンであり、国鉄改革や行政改革を推進した。
今日の産経新聞の「from Editor」というコラムで、編集委員大野敏明という署名で、内幕(の一部)を明らかにしている。
「グループ一九八四年」は同誌昭和49年6月号に初めて登場したが、その元の原稿を初めに読んだのは私である。それは昭和49年3月で、私が学習院大学の3年から4年になるときの春休みだった。香山教授から本人自筆の分厚い原稿を渡され、「グループ執筆という形にするから、学生数人で手分けして書き写してほしい」と頼まれたのだった。
・・・・・・
教授から原稿を渡されたのは最初の論考の一回きりだったが、全文、几帳面(きちょうめん)な教授の字であった。教授が何人かの仲間と論考の研究をしたことはあり得るだろうが、執筆が香山教授ただひとりであったことは確信をもっていえる。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/business/media/547880/
果たして、「グループ一九八四年」は、大野氏のいうように香山健一氏の単独原稿だったのか、田中氏の推測しているように、複数人が関わっていたのか?
まあ、どちらにしても香山氏が中心にいることに違いはない。
香山健一氏は、元全学連委員長だが、日本共産党と対立して除名され、島成郎とともに日本共産主義者同盟(ブント)を結成した。
⇒2007年10月12日 (金):ベンチャーとしてのブント
安保闘争以後は運動から退き、清水幾太郎が主宰する現代思想研究会に拠り、未来学あるいは保守系の論壇で活躍するようになった。
私は未来学関係の書もそれなりに読んだが、未来学が科学として成り立ち得るかどうかについては未だに疑問である。
しかし、昨今の軽躁な民主党の政治家を眺めていると、1970年代初めの頃の未来学派(?)の俯瞰的な議論が懐かしいような思いがする。
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