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2012年3月 4日 (日)

女性宮家創設問題とは何だろう/やまとの謎(57)

「女性宮家」創設を検討する政府の「皇室制度に関する有識者ヒアリング」が始まった。
女性宮家創設は、女性皇族が結婚後も皇室にとどまれるために、創設しようということである。
折しも明仁天皇の退院が報じられており、家族のことのように喜びを表している人々の姿がTVに映し出されている。
「象徴としての天皇」は定着しているように見える。

問題の1つは天皇が負っている行為が多くて、年齢や健康状態を考えた場合、過重ではないかということである。
それを分担するのが皇族である。
皇族は皇室典範で次のように限定されている。

第5条 皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃及び女王を皇族とする。

すなわち、内親王は、皇后、親王妃、王妃になる以外は、結婚を機に皇族ではなくなる。

第12条 皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる。
現在の規定のままでは皇族が減っていくことは避けられない。
皇族が果たすことを期待されている役割を考えた場合、皇室典範の規定を変える必要はないか、変えるとしたらどう変えるか?
論点は何か?

まず第一に、皇族に期待されている役割とは何なのか?
この種のQに対してはいろいろなアンサーが考えられよう。
たとえば、日本大学教授・百地章氏は、産経新聞「正論」欄120302の『男系重視と矛盾する「女性宮家」』において次のように指摘している。

皇室にとって最も大事な祭祀(さいし)については、陛下のお考えを最大限尊重申し上げるべきである。しかし国事行為については「代行制度」があり、皇太子殿下や秋篠宮殿下にお願いすることも可能である。問題は国事行為以外の公的行為(象徴行為)であろうが、中には、国会開会式でのお言葉など極めて重要なものから、民間行事へのお出ましまである。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120302/imp12030203170001-n2.htm

一般に、天皇の公務は大きく分けて次の3種類あるとされる。
 ・
国事行為
 ・公的行為
 ・その他の行為
⇒2011年12月 5日 (月):天皇の公務について/やまとの謎(52)

しかし、問題の中心は天皇の負担軽減ということではないようである。
たとえば、産経新聞の「主張」は以下のようである。

皇族の減少を防ぐためには、旧皇族の皇籍復帰も有力な方策である。今回、野田佳彦政権がこのような意見にも配慮し、聴取項目に「皇室活動維持のため、他に方策はあるか」との質問を加えたことは評価したい。
旧皇族は終戦後の昭和22年、占領政策に伴い、皇籍離脱を余儀なくされた旧11宮家のことだ。
・・・・・・
野田首相も今国会で、男系維持の重要性を重ねて強調した。ただ当面は、女性宮家問題を皇位継承問題と切り離して早急に結論を出し、来年の通常国会への皇室典範改正案提出を目指す意向だ。

http://sankei.jp.msn.com/life/news/120301/imp12030103270001-n1.htm

要するに、女性宮家創設が女系天皇容認に繋がりはしないか、ということである。
男系皇統論であり、皇統は、神武以来、男系によって維持されてきた、という認識がベースになっている。
その「主張」を解説しているのが、前記の日本大学教授・百地章氏の『男系重視と矛盾する「女性宮家」』である。
百地氏の意見を要約してみよう。

しかも、政府は、「私や皇太子の意見も」と述べられた秋篠宮殿下からさえお考えを聞こうとしない。これでは、「初めに結論ありき」と言われても仕方がない。
しかも、最初に伝えた読売新聞によれば、宮内庁側は、女性宮家問題を陛下のご負担軽減だけでなく、「安定的な皇位継承」や「皇位継承者の確保」のためと説明している(平成23年11月26日付)。報道通りだと、女系推進派は「女系宮家」から「女系天皇」まで視野に入れており、「皇位継承問題とは別」という説明はまやかしとなる。となれば、「女性宮家」の創設は「男系重視」の首相答弁と明らかに矛盾する。
・・・・・・
そもそも「宮家」は皇位継承の危機に備えるものであって、室町時代以降は「伏見宮」「桂宮」「有栖川宮」、それに「閑院宮」の4宮家(世襲親王家)によって2千年に及ぶ皇統が支えられてきた。この4宮家から、3方の天皇が即位されており、戦後、GHQの圧力の下、臣籍降下させられた旧11宮家は、これらの家系に属する。

http://sankei.jp.msn.com/life/news/120302/imp12030203170001-n2.htm

政府の「皇室制度に関する有識者ヒアリング」の様子は以下のように伝えられている。

意見陳述したのは今谷明帝京大特任教授(日本中世史)とジャーナリストの田原総一朗氏。共に現在の皇室典範のままでは皇室が秋篠宮ご夫妻の長男悠仁さま(5)だけになるとの懸念を示し、女性宮家を創設する場合の皇室の規模については「できるだけ小さい方がいい」とした。
http://www.at-s.com/news/detail/100103437.html

今後ヒアリングの対象となる「有識者」が誰なのかは分からないが、今谷氏と田原氏の意見が、政府の意向を代弁するものであろうことは容易に推測される。
それは、以下の2点に要約されるであろう。
・女性宮家は必要である。
・しかし、皇族は限定すべきである

すなわち、旧皇族の復活という産経新聞の「主張」は容れられないようである。
まあ、政府の意向は、もう少し議論の煮詰まるのを待つべきだろうが、既に結論ありきという感じは拭えない。
意見の違いは、皇位継承を男系に限るか女系を認めるかであるが、根底に天皇制というものをどう考えるかという問題がある。

私は、同じ「天皇制」という言葉でも、明治維新以前、明治維新後敗戦まで、戦後と、それぞれ意味内容が異なっていると思う。
戦後のいわゆる「象徴天皇制」は現時点では定着しているように思える。
特に、東日本大震災あるいはフクシマ原発事故のような非常事態、まさに国難のときに、国民を統合する役割を果たしたのは天皇であって、政治家ではなかったように思う。

現在の状況をみれば、天皇以外に、国民統合原理として有効なものは見出せないであろう。
しかし、果たして、次代以降も、天皇が国民統合の象徴であり得るのか?
百地教授のいうように、最も大事なのは祭祀なのか?
祭祀の意味、機能は何なのか?
それは、農耕と関係があるとすれば、国民の大部分が、農業と無縁になっても最も大事と言えるのか?
男系論者のいうように、万世一系が続いてきたのか?

私には、「天皇制」というものがよく分からない。

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