「3・11」を迎えて/花づな列島復興のためのメモ(36)
貞観(859年~877年)以来といわれる大地震の発生から1年たつ。
TVが東日本大震災の追悼式の模様を放映している。
退院したばかりの天皇陛下が美智子皇后と並んで立ち、お言葉を述べられた。
ただならぬ気配が伝わってくるように感じられる。
「かたじけなくて・・・」ということだろうか、胸に表現しがたいものがこみ上げてくる。
天皇制という制度には疑問が残るものの、国民統合の象徴として機能していることを実感する。
ところで、大地震(大津波)が、貞観という途方もない歴史の彼方に起きたことの再来といわれても、ピンとこない。
一回性の歴史に法則性があり得るだろうか?
「歴史は繰り返す」という言葉があるから、あるともいえるだろうし、1回生の事象に法則などあり得ないともいえよう。
つまり、法則性という言葉の内容如何ということになる。
古典力学のように、必然性のある予測が可能な精度の法則が歴史にあるとは思えない。
しかし、たとえば、「驕れる者は久しからず」というような格言のように、一定の蓋然性を示すことを法則性といえば、ある程度はあり得るといえるだろう。
⇒2011年10月14日 (金):栄枯盛衰の法則性?
地震の規模と発生頻度はべき分布に従うといわれている。
⇒2011年5月12日 (木):地震の発生確率の意味/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(26)
⇒2012年1月20日 (金):ブラックスワンはどこに棲んでいるのか?/原発事故の真相(16)
地震の発生確率がべき分布に従うにしても、過去に起きた地震の解析のツールとしては有効だろうが、予知のツールとして、特定の政策課題の前提として使うにはムリがあると思われる。
歴史の法則性という場合、まず思い浮かぶのは、唯物史観のようなものだろう。
歴史を以下のような「しくみ」を基礎として捉える考え方である。
Wikipedia
生産力が何らかの要因で発展すると、従来の生産関係との間に矛盾が生じ、その矛盾が突き動かす力により生産関係が変化(発展)する。これが階級闘争を生み出し歴史を突き動かす基本的な力であると考える。
言ってみれば、歴史が一定の「しくみ」に従って推移していくということである。
それは、必ずしも、進歩とか発展という言葉で表さなくてもいいのかも知れない。
もちろん唯物史観以外にも、歴史の発展法則についてはさまざなな見方が提起されている。
たとえば、梅棹忠夫氏による「文明の生態史観」や「文明の情報史観」などである。
⇒2009年4月14日 (火):文明の情報史観
私は長年情報関係の仕事に携わっていたことも1つの要因であろうか、唯物史観よりも情報史観の方に親近性を感じる。
人類史の全過程を視野に入れたこれらの「史観」は、ものごとを考えるフレームとしては魅力的であるが、余りに巨視的であって、時空のサイズが自分の人生とマッチしない。
言い換えれば、過去の歴史しか検証の材料がないので 、「永遠の仮説」的な性格にならざるを得ない。
もう少し短期の法則性はないものだろうか?
最も代表的な法則性は、繰り返し出現するということであろう。
言い換えれば、循環ということである。
馴染みのあるのは、マクロ経済における景気循環である。
資本主義経済で、経済活動が拡張する好況と収縮する不況とが交互に発生する、その周期的変動のこと。波動のタイプとして代表的なものには、在庫変動に起因する約40か月周期のキチンの波、設備投資の変化に起因する約10年周期のジュグラーの波、建設需要に起因する約20年周期のクズネッツの波、技術革新に起因する約50年周期のコンドラチエフの波がある。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch/0/0na/05423800/
もう少し社会一般に適用できるようなものはないか?
神田昌典『2022―これから10年、活躍できる人の条件』PHPビジネス選書(1202)に次のような法則性が載っていた。
通常は手にしない類のタイトルである(これから活躍ということは私には縁遠い)が、若い知人に薦められて読んだものだ。
70年サイクルが必然的なサイクルとは思えないが、70年といえばおよそ3世代である。
記憶が切実性を失う時間ともいえる。
70歳はやがてやってくる。
歴史がどのような展開をみせるのか、見届けることができれば幸いである。
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