« 五木寛之と親鸞の思想/花づな列島復興のためのメモ(38) | トップページ | 河津桜異変 »

2012年3月14日 (水)

冷温停止「状態」とは?/原発事故の真相(20)

野田首相がフクシマ原発事故に関し、冷温停止状態に達したことから、「収束宣言」を発したのは昨年の12月16日のことだった。
⇒2011年12月17日 (土):フクシマは「収束」したのか?/原発事故の真相(14)
冷温停止状態とは次が達成されていることを意味する。
①原子炉内の温度が100度未満となっていること
②原子炉が安定的に停止していること

②には「安定的」という言葉にファジーな要素があるが、①は、以上か未満か二者択一のデジタルな基準である。
と考えていたら、こちらもかなりファジーであるようだ。
2月に温度計が上昇するという現象が起きた。

東電によると、温度計の故障は電気ケーブルが海水や高温で断線気味になったためという。
・・・・・・
冷温停止状態の確認のため、今後は、圧力容器底部の他の温度計を使うほか、格納容器内の放射性物質の濃度、放射性物質の放出量など7項目を監視する。温度が上がると圧力容器内などの水蒸気量が増えるのに伴い、空気中の放射性物質の量が増えるため、判断材料になるという。

http://www.asahi.com/national/update/0216/TKY201202160242.html

断線気味というのはどういう状態かと思うが(断線か断線でないかハッキリしろ)、それはともかく下記のように、82℃に上昇した。
82℃ならば問題ないではないかというと、さにあらず、80℃以下が運転の基準となっている。

2月に入ってから上昇傾向にあった2号機圧力容器底部の温度は11日夜から再び上昇し、14時20分には82度に達した。ただし、温度の上昇を示しているのは圧力容器底部の温度計3個のうち1個だけで、ほかの温度計は35度前後で安定しているという。東電は温度計の故障の可能性も考慮しつつ、原子炉への注水量を増やして温度を監視する。なお、再臨界を示す兆候は見られないとしている。
政府と東電が発表した「冷温停止状態」は、原子炉の温度が100度以下であることなどが条件となっており、東電では20度程度の測定誤差を考慮して運転制限の基準を80度以下に定めている。

http://www.j-cast.com/2012/02/12121896.html

結局この温度計が故障(だろう)ということになったが、3個あって「2:1」ということだとすれば(そうとしか読めない)、実に不確実な状態といわざるを得ないだろう。
だいたい「20度程度の測定誤差」を前提にせざるを得ないような状態なのか、と考えてしまう。
通常ならば考えられないことだが、放射能が強く、対処できないということだろう。
私には、「収束宣言」はフライングにしか思えない。

「文藝春秋」12年4月号に、「3・11日本人の反省」という特集があり、その中に、『原子炉内部はどうなっているのか』という水野倫之NHK解説委員の文章がある。
水野さんは以下のように書いている。

そもそも冷温停止とは、原子炉や格納容器が健全な原発が運転を止め、冷却水で冷えて放射性物質が放出される恐れがなく安全な状態を言う。今回は三基とも原子炉や格納容器に穴があき、いまだに放射性物質の放出もわずかながら続いているわけで、通常の冷温停止とはかけ離れている。

政府はなぜこのような状態をもって「収束」としたのだろうか?
「安全」をアピールすることが狙いだとすれば、むしろ逆効果ではないか。
菅内閣が、原発事故を過小に発表してきたことのツケがいま出ているように思う。
満足に温度測定もできない原子炉を、「冷温停止した」と言うのは、「状態」というレトリックを使っているとはいえ、リスキーなことと思われる。

|

« 五木寛之と親鸞の思想/花づな列島復興のためのメモ(38) | トップページ | 河津桜異変 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

思考技術」カテゴリの記事

原発事故の真相」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 冷温停止「状態」とは?/原発事故の真相(20):

« 五木寛之と親鸞の思想/花づな列島復興のためのメモ(38) | トップページ | 河津桜異変 »