オリンパス経営陣の罪と罰(2)
オリンパス前会長の菊川剛氏ら旧経営陣3人を含む計7人が逮捕された。
また、法人としての同社も金融商品取引法(旧証券取引法)違反(有価証券報告書の虚偽記載)罪で起訴される方向だという。
この事件は、オリンパス1社だけでなく、日本の企業統治(コーポレート・ガバナンス)に対する不信を内外で招いた。
オリンパス経営陣や関係者の罪は大きい。
⇒2011年11月 9日 (水:オリンパス経営陣は何を守ろうとしたのか?
⇒2011年12月27日 (火):オリンパス経営陣の罪と罰
菊川氏らの行為の全容はいずれ明らかにされるだろう。
もちろん、私には菊川氏らをかばうつもりはない。
しかし、劇場の観客席に身を置いて、彼らを糾弾する気にもなれないようだ。
今回の粉飾事件の源泉は、下山敏郎社長時代に遡るといわれる。
http://www.sankeibiz.jp/compliance/photos/111202/cpb1112021209001-p2.htm
旧日本陸軍の兵士として満州で終戦を迎えた下山。当時の指揮官から「地をはい、草をはみ、祖国再建のため尽くせ」と言われたことが、その後の会社人生の原点となった。
倉庫会社を経て昭和24年にオリンパスに入社。それまでの経験を生かして倉庫番となり、現場で商品の知識を蓄積した。頭角を現した下山は海外事業に携わり、38年にはトランク一つでドイツに乗り込み、1人で営業所を開いた。
ライバル会社を回って頭を下げて営業方法を研究したといい、雑誌のインタビューに「他社のまずいところを全部直してやってみたところ、うちの営業所は、3年で黒字になりました」。こうした功績が認められて出世階段を駆け上がり、59年に社長就任。オリンパスは消化器内視鏡の分野で世界シェア80%を誇るまでに成長した。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120217/crm12021707030002-n2.htm
まさに典型的な企業人の姿が思い浮かぶ。
山崎豊子の『不毛地帯』のモデルは、瀬島龍三氏とされるが、参謀(大本営、関東軍)だった瀬島氏よりも、おそらくは下の位だったと推測される。
私は、下山氏の陸軍での立場を知らないが、満州からの引き揚げには人に言えない苦労もあったはずだ。
五木寛之さんの『下山の思想』幻冬舎新書(1112)が広く読まれている。
五木さんは、朝鮮からの引き揚げ者だが、その体験が五木さんの生き方の根底を規定しているような気がする。
「下山」に掛けるわけではないが、下山氏のような人々が、荒涼とした敗戦後の山河の復興に尽力してきたのだろう。
つまり、戦後日本の登山期の功労者である。
1985年のプラザ合意を契機として、円高が進む。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5070.html
営業利益は大幅に減少。下山の下でオリンパスは財テクに走り、バブル崩壊で金融資産の含み損が膨れ上がった。
平成11年5月。当時、森と一緒に損失を簿外のファンドに移す「飛ばし」を実行していた前監査役の山田秀雄(67)が社長室を訪れた。部屋の主は下山から岸本正寿(76)に代わっていた。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120217/crm12021707030002-n2.htm
私の記憶でも、財テクをしないのは無能というような雰囲気であった。
堅実をもって旨とするはずの銀行も例外ではなかった。
ごくわずかの例外を除いて、みな財テクに励んだのではないだろうか。
バブル崩壊によって、金融資産の含み損が膨れ上がったのは、共通である。
「飛ばし」も、金融知識が豊富な企業はこぞって実行していたであろう。
その代表選手が、日本長期信用銀行であり、山一証券であった。
長銀も山一も、結果として破綻した。
オリンパスは、今のところ上場を維持している。
しかし、英国人元社長マイケル・ウッドフォード氏は言う。
問題の会社買収は誰が主導したのか。主力取引銀行の三井住友銀行が買収資金を出したのなら、審査は適正だったのか。『飛ばし』の詳細がもっと明らかにされるべきだ。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120217/crm12021708140004-n1.htm
菊川氏ですら、トカゲの尻尾かもしれない。
おそらくは、日本の企業社会そのものが問われているのだ。
| 固定リンク
「ニュース」カテゴリの記事
- スキャンダラスな東京五輪/安部政権の命運(94)(2019.03.17)
- 際立つNHKの阿諛追従/安部政権の命運(93)(2019.03.16)
- 安倍トモ百田尚樹の『日本国紀』/安部政権の命運(95)(2019.03.18)
- 平成史の汚点としての森友事件/安部政権の命運(92)(2019.03.15)
- 内閣の番犬・横畠内閣法制局長官/人間の理解(24)(2019.03.13)
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 藤井太洋『東京の子』/私撰アンソロジー(56)(2019.04.07)
- 暫時お休みします(2019.03.24)
- ココログの障害とその説明(2019.03.21)
- スキャンダラスな東京五輪/安部政権の命運(94)(2019.03.17)
- 野党は小異を捨てて大同団結すべし/安部政権の命運(84)(2019.03.05)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
Don't have enough money to buy a house? Do not worry, because that's possible to take the http://goodfinance-blog.com/topics/personal-loans">personal loans to solve all the problems. Therefore take a consolidation loan to buy everything you need.
投稿: LUISA33Mitchell | 2012年2月21日 (火) 07時13分