東北太平洋沖地震とゆっくり滑り現象
東日本大震災は、想像を絶する規模の災害となった。
特に多くの日本人は、津波のすさまじさを初めて映像的に見たのではなかろうか。
もちろん、地震の規模がマグニチュード9.0というブラックスワン的現象であったことが大規模被災の直接的な原因ではあるが、地震あるいは津波の規模の予測の精度が高ければ、被害は軽減されていたであろう。
かつて武谷三男は、科学的認識は「現象論・実体論・本質論」の三段階を経ながら発展するとした。
⇒2012年1月 6日 (金):菊竹清訓と設計の論理
科学的な予測は本質論の段階に至って初めて可能になるとされたが、地震や津波の研究はまだ本質論的認識の段階ではないということだろう。
現象論か実体論かはともかく、地震発生のメカニズムについては、少しずつ解明が進んでいるようである。
東京大地震研究所の加藤愛太郎助教らが、新しい知見をまとめた米科学誌サイエンス電子版に掲載した。
マグニチュード9.0の地震発生前に、震源付近のプレート(岩板)境界で「ゆっくり滑り(スロースリップ)」といわれる現象が連続して起き、ひずみが震源に集中して本震が誘発された可能性がある、というものである。
大地震の前に小さめの「前震」が起こることがあるが、本震発生までの推移には不明な部分も多い。加藤さんは「地震予測の精度向上には直ちにはつながらないが、M8~9級の地震で直前のスロースリップを観測で確かめたのは初めてではないか」としている。
加藤さんらは、東北地方太平洋沖地震の約1カ月前からの前震を分析。本震の震源北側の同じ領域で2月中~下旬と、M7.3の最大前震が起きた3月9日から11日までの2度にわたり、本震の震源に近づくように震源が移動しながら前震が続いていたことが確かめられた。震源の移動速度は2月が1日2~5キロで、3月は1日10キロと速くなっていた。
地震の特徴などから、前震はスロースリップに伴って起きていたことが判明。スロースリップは周辺でひずみがたまり、地震が起こりやすくなることが知られている。
加藤さんは、一連のスロースリップでM7.1の地震に相当するエネルギーが解放されたと推定。これにより震源にひずみが集中し地震を起こした可能性が高いと結論付けた。
http://www.kahoku.co.jp/news/2012/01/20120120t75001.htm
プレート境界の浅い部分で発生するのが「海溝型大地震」であり、その境界の延長上の深い所で発生するのが「ゆっくりすべり」である。
「ゆっくりすべり」の観測データが得られるようになった期間はまだ短く、今後データが蓄積されていくにしたがって「海溝型大地震」と「ゆっくりすべり」現象との関係が明らかになってくるであろう。
http://www.asahi-net.or.jp/~rk7j-kndu/kisho/kisho48.html
巨大地震の発生自体を防止することはできないだろうが、発生を予測できるようになり、対策に役立てることができる日が来ることを願う。
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