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2012年1月23日 (月)

監査役と監査法人/「同じ」と「違う」(40)

オリンパスの巨額損失隠しの不祥事は、東京証券取引所が、株式の上場維持を決め、監理銘柄の指定を解除したことにより、一段落したかに見える。
東証がオリンパスに科したお咎めは、株式市場に対する投資家らの信頼を失わせた罰として、上場違約金一千万円の支払いということである。
ただ、 内部管理体制に不備があることを投資家に周知する「特設注意市場銘柄」に指定して改善を促すとしており、いわば執行猶予ともいえるが、これは罰というよりも指導ということだろう。

東証グループの自主規制法人の説明によれば、上場維持を決めた理由について、「不正は組織的に行われたが、上場廃止にするほど、うその中身は重大ではなかった」ということである。
私などは、これが上場廃止にあたらないとしたら、どういうケースが上場廃止になるのかと思う。
もっとも、説明の中で、東京地検特捜部などの捜査過程で上場維持と判断した前提を覆す事実が判明した場合は、審査をやり直すとしている。東証自身が調査能力の限界を言明しているともとれる。

オリンパスの「監査役等責任調査委員会」は、現旧監査役10人のうち5人について、不正を見逃した法的責任があるとする調査報告書を公表した。
これを踏まえてオリンパスは同日中にも、5人に計数億円程度の損害賠償を求めて東京地裁に提訴する方針を固めた。
一方、対象期間中に会計監査に携わったあずさ監査法人と新日本監査法人についてはその責任を認めず、取締役会に参加していなかった現旧執行役員24人についても責任はないとした。
監査役と監査法人の責任の差違は何か?

「監査役の職務と役割」というサイトでは以下のように説明している。

監査役の職務は、取締役の職務の執行(当然、取締役の指示で行う従業員の職務執行を含みます)を監査することですが、監査には、業務監査と会計監査とがあります。
・・・・・・
業務監査とは、取締役の職務の執行が法令・定款を遵守して行われているかどうかを監査することで、一般に適法性監査と呼ばれています。ただし、法令には善管注意義務も含まれますので、取締役の経営判断にかかわる事項についても、不当な点がないかどうかを監査(妥当性監査)することにもなります。
会計監査とは、計算書類及びその付属明細書を監査することですが、大会社(資本金 が5億円以上か、または負債が200億円以上の会社)では公認会計士または監査法人を会計監査人として選任しなければなりません。大会社では、会計監査は第1次的には会計監査人が実施し、その監査報告が取締役会と監査役に提出されます。監査役は、会計監査人の監査の方法・結果の相当性を判断します。もし相当でないと認めた場合は、自ら監査した上で、その結果について監査報告に記載します。
http://homepage2.nifty.com/houmu/page088.html

つまり、監査には業務監査と会計監査がある。
業務監査については監査役が担当し、会計監査については監査役と監査法人が共に関わる。
監査法人は、第1次的な会計監査を行い、監査役はその方法・結果の相当性を判断する、という棲み分けである。

以上のように理解した場合、当該案件はどう位置づけられるか?
山田秀雄前常勤監査役は事案の主導者だったようであるから除外するとして、責任があるとされた5人の監査役は、損失隠しに使われた過去の不正な買収案件を見過ごしたことなどが問われたのである。

「損失隠しに使われた過去の不正な買収案件を見過ごしたこと」は、業務監査のミスか会計監査のミスか?
もちろん、違法性を疑われているわけであるから、業務監査のミスという面も否定できない。
しかし、有価証券への不正な記載が問われているのであるから、会計監査のミスに焦点が絞られているのではなかろうか。
とすれば、第1次的に監査を行った監査法人が責任に責任がなくて、監査役には責任があるということ首肯し難いのではないか。

特に、監査法人が「あずさ」から「新日本」に交代している。
常識的には、不正会計処理と監査法人の交代が無関係であるとは思えない。
焦点は、不正事実の認識である。

一般に、認識がどうであったかを証明することは難しい。
しかし監査法人はプロの会計士集団である。
不正を認識し得なかったとすれば、会計士としての力量が疑われるし、認識していたとすれば、「監査役等責任調査委員会」の下した「責任なし」の結論は間違いということになる。
両監査法人は、専門職の矜恃にかけて、検察の捜査などによらず自ら説明責任を果たすべきであろう。

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