佐高信『電力と国家』⑦電力中研と産業計画会議/花づな列島復興のためのメモ(22)
ポツダム政令公布後、電力再編成を実施する機関として公益事業委員会が組織され、5名の委員が選ばれた。
委員長には松本烝治が就任し、松永も委員の1人となった。
松本は憲法草案を起草した国務大臣として知られるが、もともとは東大で商法学を講じる学者だった。
昭和26年5月1日に、電力の国家管理に終止符が打たれ、9電力体制が発足した。
公益事業委員会は、世論を敵に回して電力料金の大幅な値上げを実施した。
産業の発展、生活の高度化により電力需要は急増していくが、それを賄うためには巨額の資金を必要としたのである。
しかし、国会の反感は大きく、公益事業委員会は昭和27年8月に廃止された。
松永にとって、公益事業委員会の廃止は織り込み済みであった。
昭和26年11月に財団法人電力中央研究所を発足させていた。
電力中央研究所(電力中研)は、電力に関する技術、経済の研究を行って、電力会社の要望に応ずることであった。
Wikipediaで次のように解説されている。
戦後、高度成長期には、電源の火主水従化、火力発電用燃料の油主炭従化、火力発電における原油生焚き、原子力発電の商業化、佐久間周波数変換所の設置など、電気事業の根幹にかかわる重要事項について、独自の研究成果に基づきシンクタンクとして提言した。オイルショックから現在に至る間には、電源のベストミックスの概念、火力発電用燃料の海外炭の導入による石炭回帰、エコキュートの開発を基にしたオール電化による二酸化炭素排出削減などを提言している。
日本のシンクタンクとして草分け的な存在といって良い。
フクシマ原発事故が起きるまでは、安定な職場であったはずだ。
以下のような声も紹介しておく。
http://blogs.yahoo.co.jp/voicevoice0316/62751118.html
電力中央研究所なるお役所がある。東京都狛江市には小田急線喜多見駅近くに広大な敷地をようして、遊びの施設としか思えないものがある。
土日には敷地内のテニスコートはボールを打つ華やかな音が周りに響いている。都内にあるリゾート施設というう感じだ。
・・・・・・
私は猛烈な怒りを感じる。原発の被害を少しでも抑える研究と実際設備を指導したのか。予算339・1億円を使い役員21名、評議員30名、研究員740名、事務100名。339億円は電力研究所の自分たちの給与、遊び代ではないか。
私自身は、電力あるいはエネルギーのシンクタンクがあっていいと思うし、それなりの待遇をしなければ優秀な人材も集められないだろうと思う。
しかし、電力会社の利益ではなく、国の利益を優先して欲しいと思う。
松永は、産業計画会議という名前の私設シンクタンクも作った。
以下、Wikipedia 。
政・財・官・学の重鎮が委員であったため、その影響力は大きく、事実上の政府の諮問機関であった。電力中央研究所が松永のブレイン役と運営を担当した。松永の死後、後継者がいなかったことから、産業計画会議は解散となった。
産業計画会議が行った「提言」は、戦後史の上で興味深いものである。
◇産業計画会議第一次勧告(31.9.14
「日本経済立直しのための勧告」
◇産業計画会議第二次勧告(32.1.16)
「北海道の開発はどうあるべきか」
◇産業計画会議第三次勧告(三三・三・一九)
「東京 - 神戸間高速自動車道路」について
◇産業計画会議第四次勧告(三三・七・三)
「国鉄は坂本的に整備が必要である」
◇産業計画会議第五次勧告(三三・七・三)
「水問題の危機はせまっている」
◇産業計画会議第六次勧告(三三・一〇・ニ二)
「あやまれるエネルギー政策」
◇産業計画会議第七次勧告(三四・七・二九)
「東京湾二億坪埋立てについて」
◇産業計画会議第八次勧告(三四・七・ニ九)
「東京の水は利根川から - 沼田ダムの建設」
◇産業計画会議第十次勧告(三五・二・二五)
「専売制度の廃止を勧告するー専売公社の民営、分割は議論の時代」
◇産業計画会議第十一次勧告(三五・一ニ・一五)
「海運を全滅から救えー海運政策の提案」
◇産業計画会議第十二次勧告(三六・七・二〇)
「東京湾に横断堤を」
◇産業計画会議第十三次勧告(三九・三・四)
「産業計画会議の提案する新しい東京国際空港案」
◇産業計画会議第十四次勧告(四〇・二・一〇)
「原子力政策に提言」
http://www.sesshuukai.com/HTML/OkinanoIgyou0.html
上記サイトでは、「第九次勧告」が欠落しているが、その理由は分からない。
しかし、賛否は別として、国の大局を見据えたシンクタンクといえよう。
「政局よりも大局」は野田首相の言であるが、残念ながら、民主党も自民党も、大局観に基づいて発想しているとは思えない。
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