原発事故中間報告と廃炉へのプロセス/原発事故の真相(12)
フクシマ原発事故で、東電の社内事故調査委員会が2日、中間報告を発表した。
最終報告書ではないが、東電のスタンスの一端が示されているのではないだろうか。
報告書の詳細な全文を目にしたわけではないが、報道記事によれば以下のようである。
<事故の概要>
3月11日、1~3号機が運転中だったが、午後2時46分に発生した東日本大震災を受け原子炉はすべて自動停止。すべての外部電源が失われたが、非常用ディーゼル発電機が起動。その後襲来した津波により冷却用海水ポンプや非常用発電機、電源盤が冠水したため6号機を除き全電源喪失状態となり、炉心冷却機能が失われた。
つまり、原因は「津波で全電源を喪失した」ことであり、「地震損傷説」を否定している。
これは、西村肇さんたちの推算とは異なる説明である。
⇒2011年6月23日 (木):西村肇さんの水素爆発に至る過程の推算/原発事故の真相(2)
また、田中三彦さんの説明とも異なる。
⇒2011年9月13日 (火):フクシマは津波によりメルトダウンしたのか?/原発事故の真相(7)
西村さんや田中さんは、推論の根拠を示した上で発言をしており、東電の中間報告はどういう論理で否定しているのか。
今後次第に明らかにされてくることもあろうが、万が一にも従来の説明との整合性を優先させ、別の可能性に目を瞑るというようなことがあってはならないだろう。
先日も燃料の状況に関して新しい開示があったが、あくまでも推定である.。
炉の中を現認しているわけではない。
東京電力福島第1原発事故で、東電は30日、炉心溶融(メルトダウン)が起きた1~3号機について、溶けた核燃料の位置の推定を公表した。データ解析の結果、1号機は「相当量」、2、3号機は一部の溶融燃料が原子炉圧力容器から格納容器に落下したと推定。床面のコンクリートを1号機では最大65センチ浸食した可能性があるが、いずれも格納容器内にとどまっており、注水で冷却されているとしている。
・・・・・・
東電の解析によると、非常用炉心冷却装置が十分機能せず、注水停止時間が長かった1号機では、ほぼ全ての燃料が本来の位置から溶け落ち、圧力容器底部を破損したと推定。燃料が全て格納容器内に落ちたと仮定すると、高熱で格納容器床のコンクリートを最大65センチ浸食するという。ただ、床の厚さは最も薄いところで約1メートルあり、東電は容器を突き抜けていないとみている。
また、一定時間冷却が続いた2、3号機では、燃料の約6割が溶け落ちたと推定。そのまま格納容器に落ちたとしても、床コンクリートの浸食は2号機で最大12センチ、3号機で同20センチにとどまるとした。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201111/2011113000590&g=soc
いずれにしろシミュレーションの解析なので、実態がどうなっているかは現時点では分からないというべきだろう。
また、4号機の水位について、東電の作成したグラフが開示された。
静岡新聞111202
東電福島第1原発事故で、冷却機能を失った使用済み核燃料プールでは燃料の熱で水が蒸発、発熱量が多い4号機では水位が5・5メートル低下し、燃料の上端から1・5メートルに迫っていたとの評価結果を東電がまとめたことが1日、分かった。
水位低下は3月11日の事故発生後、4月20日すぎまで1カ月以上続き、燃料が露出する寸前の状態になった。22~27日に930トンを集中的に注水して満水状態に戻したが、東電が作成したグラフでは、この注水がなければ5月初めに燃料が露出していたと読み取れる。
燃料は露出が続くと溶け、放射性物質が環境中に放出される恐れがある。
http://www.47news.jp/CN/201112/CN2011120101001882.html
まさに危機的状況であったといえよう。
原子炉の燃料が溶融することをメルトダウンというが、Wikipedia では以下のように解説している。
燃料の融解が進行し圧力容器・格納容器外に漏出するのは「メルトスルー」、建屋を抜けて外部へ漏出した場合は「メルトアウト」などとも表現される。この細分的な定義上では、メルトダウンとは、溶融(メルト)した燃料が底部などへ落下する(ダウン)ことを指す。日本においては英文翻訳などの際に定義が厳密化、統一化されず、いくつかの認識や定義が錯綜し、意見が割れている傾向がある。
つまりフクシマは、メルトダウンではあるが、メルトスルーやメルトアウトではないということだろう。
今後廃炉に向けてどんなことが想定されるか?
1979年に起きたアメリカのスリーマイル島の事故では、溶けた燃料が原子炉にとどまっていて、今回の解析結果は、福島第一原発の今後の廃炉に向けて、格納容器の底にまで広がった燃料を取り出さなければならないという世界でも例がない厳しい課題を突きつけたことになります。東京電力は、格納容器の底には水がたまり、燃料は冷やされているので、コンクリートの浸食は止まっていて、年内を目標にしている原子炉周辺の温度が100度を安定して下回る「冷温停止状態」の達成に影響はないと説明しています。しかし、1号機の格納容器の底には水が40センチほどしかたまっておらず、燃料を安定して冷やせるかどうか不透明で、「冷温停止」の判断ができるか疑問を残す形になっています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111201/t10014325321000.html
福島県知事は廃炉を宣言した。
廃炉以外の選択肢はないように思えるが、原発立地自治体にはとまどいもあるという。
福島県の佐藤雄平知事が30日、県内の原発全10基の廃炉を宣言したことに、立地町の首長は戸惑いの表情を見せた。原発を抱える東北の他の立地町も一定の理解を示しつつ、福島県とは一線を画す考えを強調した。
http://www.kahoku.co.jp/news/2011/12/20111201t71023.htm
もちろん原発立地自治体だけの問題ではない。
受益者は沖縄県民以外のすべての国民である。
産業を含め、生活の総体をどう構想するかが問われているのだ。
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