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2011年12月17日 (土)

フクシマは「収束」したのか?/原発事故の真相(14)

野田首相は、フクシマ原発事故の「収束」を宣言した。

Photo_3野田佳彦首相は十六日、政府の原子力災害対策本部の会合で、東京電力福島第一原発で原子炉を安定して冷却する「冷温停止状態」を達成し、事故収束に向けた工程表「ステップ2」が完了できたとして「事故そのものは収束に至った」と宣言した。
三月十一日の事故発生から九カ月余り。記者会見した細野豪志原発事故担当相は、今後は住民の帰還に向けた対策に政府を挙げて取り組む方針を示した。
しかし、今月四日には敷地内の放射能汚染水の海への流出が確認され、溶けた核燃料の状態も分からない。そんな中で早々と「事故収束」を宣言したことには、住民や専門家から批判が出ている。
事故対応に当たってきた国と東京電力の統合対策室は十六日に解散し、新たに「政府・東京電力中長期対策会議」を設置した。近くとりまとめる中長期の工程表をもとに、三十年以上かかるとされる同原発1~4号機の廃炉に向けた作業に取り組む。周辺住民の帰還に向け、避難区域の見直しに向けた考えも示す方針。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011121790070938.html

判断の基準は、原子炉が「冷温停止状態」にあるか否かである。
「冷温停止状態」とはどういう状態か?
新語時事用語辞典では、次のように定義している。

原子力発電所などにおいて、原子炉内の温度100未満となり原子炉安定的停止した状態のこと。

つまり次の2つの条件が満たされている場合である。
①原子炉内の温度が100度未満となっていること
②原子炉が安定的に停止していること

フクシマの場合、上記記事では以下のように書いてある。

炉心溶融を起こした1~3号機の原子炉内の温度が三〇~七〇度程度に落ち着き、安定的に冷却できる状態になった。放出が続く放射性物質による被ばく線量は、敷地の境界で年〇・一ミリシーベルトと一般人の限度の十分の一にとどまっているとされる。
さらに、東電や経済産業省原子力安全・保安院は、東日本大震災と同規模の地震や津波に襲われても安全性が保たれると確認。国として安全が確保できたと判断したという。

①は、炉内温度が30~70度に保たれているとすれば、達成されているといえるだろう。
②の判断は専門家に委ねるべきだろうが、果たして現状は原子炉が「安定的に停止している」といっていいのだろうか?
フクシマの地元紙の見方はどうか?
福島民報の論説「あぶくま抄」は次のように書いている。

「収束宣言」は現状からすれば、あまりに唐突で違和感を覚える。
・・・・・・
原子炉の損傷具合や溶けた核燃料の現状は確認できていない。注水による温度変化や格納容器内の放射性物質の解析から推定するしかないという。放射性物質の外部放出も止まっていない。原子力安全委員会の班目春樹委員長は「炉の中の状態が分からず、何が起こるかきちんと予想することが難しい」と認める。
炉建屋や使用済み燃料プールは水素爆発によって傷みが激しい。循環注水冷却システムも綱渡りの状態が続く。崩落や汚染物質漏えいの危険性が依然残る。安全・安心とは言い難い。炉内部の調査・測定や不測の事態に対応できる体制の確立が不可欠だ。

要するに、炉の中の状態は、分からないとするべきではないか。
という状態で、「原子炉が安定的に停止していること」と言えるのか、疑問である。
そもそも、「収束」という言葉で、野田首相は、何を説明しようとしたのだろうか?
「収束」とは、辞書的には以下の通りである。

1 分裂・混乱していたものが、まとまって収まりがつくこと。また、収まりをつけること。「事態の―を図る」「争議が―する」
2 数学で、ある値に限りなく近づくこと。収斂(しゅうれん)。⇔発散
 ①ある無限数列が、ある値にいくらでも近づくこと。
 ②数列の項が、ある値に限りなく近づくこと。
 ③級数の途中までの和が、ある値にいくらでも近い値をとること。
3 多くの光線が一点に集まること。収斂。集束。
4 海洋学で、流線が周囲から一点に向かって集まること。収斂。

2,3,4は特定分野の用語であるから、当然1の意味で使われていると考えていいだろう。
フクシマは「収まりがついた」といえるだろうか?
こう問い直せば、誰でも「NO」と答えるのではないだろうか?

私も、なるべく早く廃炉に向けてのプロセスに進んで欲しいと思う。
しかし、あえていえば、「収束」を宣言することにより、ミスリードするものではないのか?

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