八ッ場ダムの事業継続の判断は“まっとう”なのか
八ッ場ダムの建設再開が発表された。
建設の是非をめぐり議論が続いていた群馬県の八ッ場ダムについて、国土交通省は22日、建設再開を発表し、前田国交相はさっそく地元を訪れ、事業の継続を報告した。
前田国交相は「お待たせいたしました。八ッ場ダム続行という結論を出させていただきました」と述べた。
八ッ場ダムは、2009年の政権交代後、事業が凍結されていたが、国土交通省は22日、八ッ場ダムの完成による治水効果などを強調し、建設再開を発表した。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00214137.html
構想から60年になろうとし、賛否が鋭く対立してきた八ッ場ダムだ。
私も、工事がここまで進んでいるのに、中止するのはどうかなと思う。
また、利根川の治水上八ッ場ダムの有効な代替案があるのか疑問に思う。
⇒⇒2009年12月 5日 (土):専門家による「八ツ場ダム計画」擁護論
しかし、民主党が政権を獲得した2009年のマニフェストの冒頭部分である。
いわば民主党政権の正統性を判断する標識のようなものではないだろうか。
その標識を扱うにしては、安易な態度のように思う。
http://www.dpj.or.jp/policies/manifesto2009
今となっては、「衆院定数を80削減します」という文句が空しい。
八ッ場ダムはムダな公共事業の象徴として名前が挙げられている。
もちろん、民主党の中でもスンナリ建設再開が決まったというわけではない。
前原政調会長は建設再開に慎重姿勢を崩さなかったし、群馬県連会長代行の中島衆院議員(比例北関東)はマニフェスト違反を理由として離党届を提出した。
しかし、藤村官房長官は、「国土交通省で(検証の)手続きをしており、それを重視する。政治的判断はしない」と記者会見で述べている。
「政治的判断をしない」政治家こそ仕分けされるべきであろう。
建設再開の方向で検証を終えた国土交通省の方針を尊重するなら、官僚主導である。
しかも同省の検証はもっぱら「河川ムラ」という閉鎖的な集団の中で行われたという批判もある。
12月25日の産経抄欄は、この問題に関して、前原氏の野田首相に対する「嫉妬」に矮小化して、次のように書いている。
▼民主党政権発足と同時に建設を中止させたのは当時の国交相、前原氏だった。それだけでも再開はおもしろくない。しかも同じ松下政経塾出身の野田氏が自分を追い抜いて、首相になっている。その幸運を嫉妬する気持ちが恨みに輪をかけた、と見られても仕方ない。
▼むろん前原氏は「感情で動いてはいない。国のためだ」と反論するだろう。だが八ツ場ダムがそこまで争わねばならない政治課題とはとても思えない。中止時点で総事業費の7割が投入されていた。水没地からの移転も進み、いわば「解決済み」だったのだ。
▼それを民主党がむりやり「公共事業見直し」のシンボルにしてしまった。遅すぎたとはいえ、地元の要求を受け再開に踏み切った政府の判断の方が、はるかにまっとうである。願わくば政治はもう少しカラッとありたい。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111225/plc11122502550000-n1.htm
私はマニフェストの冒頭に掲げた政策を、地元の要求や官僚の意向に屈し、反故にする政府判断が「はるかにまっとう」とは到底思えない。
そんなことでは、衆院定数の削減も覚束ないだろう。
対照的に、消費税アップだけは妙に熱心に見える。
橋下大阪市長の“突破力”が頼りがいがあるように見えてくるのは、危険な兆候だろうか。
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