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2011年11月13日 (日)

コンプライアンスとCSRと権力

大王製紙やオリンパスの株式が監理銘柄に指定されることになって、改めてコンプライアンスの問題が社会的に関心を集めている。
そんな折に、プロ野球の読売ジャイアンツで、コンプライアンスの問題をめぐる確執が表面化した。

プロ野球・読売巨人軍の清武英利球団代表は11日、東京都内で会見し、コーチ人事をめぐり、渡辺恒雄球団会長を「プロ野球の私物化」などと強く批判した。
読売巨人軍の清武球団代表は「巨人軍の『代表取締役』でもない『取締役会長』である渡辺氏が、オーナー職を突然、剥奪するというのは、会社の内部統制、コンプライアンスに大きく反する行為であると思います」と語った。
清武球団代表は会見で、来シーズンのコーチ人事について、岡崎ヘッドコーチの留任が10月下旬に決定し、すでに渡辺会長の了解を得ていたが、11月9日に突然、渡辺会長から「ヘッドコーチは、江川 卓氏にする。交渉も始めている」と、一方的に通告されたことを明らかにした。
・・・・・・
そして、巨人の桃井恒和球団オーナーも会見し、清武球団代表の突然の会見にショックを受けたことを明らかにした。
読売巨人軍の桃井球団オーナーは「きょうの会見について私を含めて、球団の誰もそういう会見があるということを承知しておりませんでした。残念というか、個人的にショックです。それから、専務取締役ですから、そういう人間が、代表取締役である私の知らないところでああいう形でやったというのは、とんでもない話だと思っています。まだ全然、今のところ彼の処遇についてどうするか決めていない。きょうの彼が独断で開いた会見については、『僕はかばうことはできないよ』ということは、彼に伝えました」と話した。

http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00211385.html

これに対して、批判された渡辺会長は次のように反論している。

プロ野球、読売巨人軍の清武英利球団代表が、コーチの人事問題などをめぐり、渡辺恒雄球団会長を批判した問題で、渡辺会長が「清武代表の事実誤認」とする談話を発表した。
談話で、渡辺会長はコーチ人事について、クライマックスシリーズで惨敗した以上、多少の変更が必要と説明している。
そして、コンプライアンス違反とされたことに対し、「著しい名誉毀損(きそん)」と述べ、謝罪を求めるとしている。
一方で、清武代表から「GM(ゼネラルマネジャー)の仕事を続けさせてほしい」との要望があり、了解したとし、今後の対応は本人の反省次第で、現時点で直ちに処分を求めるつもりはないと述べている。

http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00211438.html

清武球団代表は、渡辺会長の行為を「会社の内部統制、コンプライアンスに大きく反する行為」と批判し、渡辺会長はそれが「著しい名誉毀損」であると主張しているわけである。
どちらの言い分が理があるのだろうか?
読売ジャイアンツの場合、内部の統制がとれていないことはよく分かるが、コンプライアンスというのはいささか分かりにくい概念である。
コンプライアンスは次のように説明されている。

企業が経営・活動を行ううえで、法令や各種規則などのルール、さらには社会的規範などを守ること。一般市民が法律を遵守することと区別するために、企業活動をいう場合は「ビジネスコンプライアンス」ともいう。
もともとは1960年代に米国で独禁法違反、株式のインサイダー取り引き事件などが発生した際に用いられた法務関連の用語であるため、「法令遵守」と訳されることが多いが、英語のcomplianceは「(命令や要求に)応じること」「願いを受けいれること」を意味し、近年では守るべき規範は法律に限らず、社会通念、倫理や道徳を含むと解釈される。
企業を取り巻く法律や規則は、民法や商法をはじめ独占禁止法、不正競争防止法、労働法、消費者保護法など多数あり、監督官庁の命令・指導などもある。さらに、営業活動や市場競争の公正さ、消費者などへの情報公開、職場環境(過労死、セクシュアル・ハラスメントなど)、公務員や政治家との関係、証券市場における取り引きなど、多くの面で高い倫理(企業倫理)が求められるようになっている。
企業は、こうした多岐にわたる規則・規範を全役員・従業員が遵守し、もし違反行為があった場合には、早期に発見して是正できるマネジメント体制を作ることが求められる。また、業界慣行、社内ルールがより広い視点で法律や社会通念と相反していないかといった第三者的チェックも必要になるだろう。
コンプライアンスの重要性が叫ばれるようになった背景には、違法行為や反社会的行為を行って、消費者や取引先の信頼を失い、事業継続が不可能になる企業が頻発するようになったことがある。企業にとってコンプライアンスは、リスクマネジメント活動としてとらえられている場合が多いようだ。しかし、complianceの原義に戻って、社会からの信頼を高めるための戦略的活動として取り組んでいる企業もある。
さらに広い概念として、
CSRが知られる。
http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/compliance.html

一般的には法令遵守と解され、大王製紙やオリンパスの場合は、少なくとも適正な意思決定と会計処理が行われていなかったわけで、まさにこの意味でのコンプライアンスが問われている。
しかし、読売ジャイアンツの場合は、若干ニュアンスが違うようである。
感じとしては、企業として定めている業務分掌の規程に抵触しているか否かといった様子である。

企業統治、内部統制、企業倫理、リスクマネジメント、CSRなどの関連する概念との関係はどのように考えられているか?
下図のような説明がある。
Csr
http://www.dir.co.jp/publicity/column/060418.html

つまり、CSRが最も包括的な概念であるということになる。
企業の使命は、事業を通じて社会に貢献することである。そのためには、限られた資源を効率的に使用し、顧客にとっ て付加価値の高い製品・サービスを提供し続けなければならない。
実際的には、貸借対照表の制約の中で、損益計算書なかんずく営業利益を継続的に増大させていくことといえよう。

そのためには、企業統治などが必要条件となるということである。
内側の要素は外側のことを達成するための必要条件である。
つまり法令遵守は必要最低限の条件ということになる。

読売ジャイアンツの場合、内部の職務分掌などの事情はよく分からない。
プロ野球の熱心なファンでもないから、表面的な情報で言うしかないが、思い起こすのは江川卓氏の入団時の騒動である。
今回も清武氏は、「渡辺会長から「ヘッドコーチは、江川 卓氏にする。交渉も始めている」と、一方的に通告されたという。
当の江川氏は当惑している様子のようだが、部外者から見ると、「ナベツネさん、いい加減にしたら」という感じではなかろうか。

江川入団問題を振り返ってみよう。
高校時代「怪物」と呼ばれた江川卓が、熱望していた巨人に入団したいため、1973年の高校卒業時のドラフトの交渉を拒否し、法政大学へ進学した。そして大学卒業時にも交渉権を得た球団との交渉を拒否し続けた。
1年後の1978年、いわゆる「空白の1日」に巨人との契約を果たす。

野球協約には、「交渉権を得た球団はその選手に対し、翌年のドラフト会議前々日まで交渉権を持つ」と規定されていた。
ここで、「前々日」とされているのは、「前日」だと不測の事態に対応できない可能性があることを考慮したものだった。
それはいわば関係者の公然の了解事項だったが、文言だけをタテに契約を強行したのが、巨人-江川であった。

他の球団は契約は無効だとして予定通りドラフト会議を実施し、その結果阪神が交渉権を獲得したが、江川は交渉に入ることを拒否し続けた。
最終的にはコミッショナーの裁定によることになった。

指名権をとった阪神と、巨人の間でトレードを行う。4月7日の開幕日を待ったのでは遅すぎるから、2月1日のキャンプインまでにトレードを実現させる。このことはあくまでも特例のものだ。
その後、年が明けた1979年1月7日に阪神は江川サイドと初めて接触し、1月31日に契約。そして阪神は巨人に対し、交換相手として小林繁を指名。
キャンプイン直前に突然のトレード通告を受けた小林だったが、泣く泣く移籍を了承。2月1日に阪神・小津球団社長、巨人・長谷川実雄球団代表が出席のもと、江川と小林繁のトレードが発表された。
1979年のシーズン、怨念が後押ししたのか、小林は巨人戦に8連勝、17完投うち5完封の22勝をあげ、最多勝利投手、最優秀投手、沢村賞を獲得した。
一方、江川は6月2日に阪神を相手にプロ初登板。阪神はスタントン、若菜のソロホームラン、そしてラインバックの逆転3ランで、プロの洗礼を浴びせた。
http://www.tora-life.net/memories/memories4_19.html
悲劇のヒーローとなった小林は人気が上昇し、江川にはダーティなイメージが付き纏うことになった。

「空白の1日」は、コンプライアンスの視点からはどう考えるべきか?
協約の文言から外れているわけではない。しかし、関係者の合意には反する。
私は、表面的な文章の解釈によってトリッキーな行動に出たジャイアンツの行動を好まない。
ただ、高校卒業時から大学時代を経てジャイアンツへの入団を希望し、1年の浪人生活も厭わなかった江川には同情したい気持ちもある。
この事件について、小林繁投手が、一言も不満を言わなかったのは清々しかった。

一連の出来事で思うのは、「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対的に腐敗する=Power tends to corrupt, and absolute power corrupts absolutely.」という言葉である。
読売ジャイアンツの場合、渡辺会長が最高権力者であることはよく知られている。
大王製紙でもオリンパスでも、会長自身が不祥事の根源であった(らしい)。

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コメント

江川が 努力して? 怪物だった江川は 記録を残して
好きな球団に 就職したい。学歴社会で エリートは
好きな会社に挑戦する。しかし ドラフトないと また
巨人が 強くなるかなぁ
プロ野球同好会(名前検討中

投稿: 村石太CD | 2012年1月24日 (火) 16時50分

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