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2011年11月21日 (月)

ジャイアンツ清武代表の解任と球団経営の革新

巨人清武英利GMが18日解任された。
清武氏が記者会見でナベツネ批判を行ったのが11日のことだから、1週間後の粛清である。
ジャイアンツ(株式会社読売巨人軍)側の見解は、読売巨人軍が記者会見で配付した文書の全文 を読めば、概略以下の通りである。

 (1)手続き
親会社である株式会社読売新聞グループ本社が、臨時取締役会を開き、取締役9名全員、監査役4名全員の計13名が出席して、当社取締役・清武英利を解任し、取締役山岸均を選任するため、会社法第319条第1項に基づく提案を行い、かつ書面によって同意することにより、当該議案を可決する旨の当社の株主総会決議があったものとみなされた。
続いて、ジャイアンツが臨時取締役会を開き、取締役8名全員、監査役3名全員の計11名が出席して、取締役の新たな担当職務を決定した。
株式会社読売巨人軍の株主は、株式会社読売新聞グループ本社1名である。
 (2)解任の理由
清武英利は、取締役として不適格である。
〈1〉正当な手続きによることなく、独自で記者会見を開いて、社内外に混乱をもたらした。
〈2〉記者会見で、誤った事実や論評を公表し、当社及び読売新聞グループの名誉、信用を傷つけた。
〈3〉前記会見で、コーチ人事構想にかかわる機密事項を暴露し、その実現を困難にさせ、業務遂行を阻害した。
〈4渡辺主筆が反論を出すと、ただちに再反論を公表するなど、反省の態度を示すどころか、逆に敵対姿勢を強めている。
〈5〉年内限りで当社取締役を辞任するのと引き換えに、渡辺主筆を球団取締役会長から辞任させることが事態収拾の条件であるなどと、自らの地位等について不当な要求をするなどしている。

要するに、解任の手続きおよび理由が正当であるということを言いたいのであろう。
「手続き」についてわざわざ説明しているのは、清武氏がコンプライアンスを持ち出したからであろうが、何となく後ろめたさの反映か、などと思ってしまう。
こういうのを形式要件というのであろう。

それでは、実質はどうなのか?
端的に言えば、ナベツネ氏の逆鱗に触れたということであろう。
ナベツネ氏は大正15年生まれだから、満85歳である。普通なら引退して悠々自適の生活を送り、自分の生きてきた道を回顧録などにまとめる歳だ。

上記文書の中で、「なお、当社の株主は、株式会社読売新聞グループ本社1名です」と「なお書き」が入っている。
わざわざ、ナベツネ氏の権力の源泉、独裁的な統治のメカニズムに注意を喚起している。
ひょっとすると、「社会の指弾を誘起しようという高等戦術か?」などと考えたが、そんなことはありえないだろうなあ。

独裁のメカニズムとして、もっとも民主的なルールを希求するはずの共産主義政党における「民主集中制」が知られている。
例えば、日本共産党は「民主集中制」について次のように説明している。
日本共産党の民主集中制とはどんなもの?

(1)党の意思決定は、民主的な議論をつくし、最終的には多数決で決める。
(2)決定されたことは、みんなでその実行にあたる。行動の統一は、国民にたいする公党としての責任である。
(3)すべての指導機関は、選挙によってつくられる。
(4)党内に派閥・分派はつくらない。
(5)意見がちがうことによって、組織的な排除をおこなってはならない。

もっともなことのように思うが、運用によっては少数意見を封殺することになる。
上級機関で決定されたことには、「行動の統一」として従わざるを得ない。「派閥・分派をつくらない」ことが、「組織的な排除」をもたらすのである。
読売グループの場合、読売系列の各社を、読売新聞グループ本社が代表し、読売新聞グループ本社は、代表取締役が代表するという形で、読売新聞グループ各社は本社代表取締役に逆らうことを許されない。
かつてコクドグループで同じ構図がみられたが、支配下に上場会社があったことから、問題化した。
その構図に反旗を翻した清武氏の記者会見は、「清武の乱」などと呼ばれているが、「乱」というほどには同調者が出なかったようだ。

ドリームインキュベータ会長の堀紘一氏は「夕刊フジ111119…発売は18日」で、「いまさら『私物化』と糾弾するのは勘違いも甚だしい」と清武氏を批判している。
要するに、ナベツネ氏の理不尽ぶりは何十年も前からのことで、その理不尽な人事の差配に部下が反旗を翻しただけのガバナンスの問題であって、読売新聞グループが非上場である以上、トップの言動や行動をチェックするものがないわけで、私物化は当然、ということである。

ずい分、身もフタもない言い方である。
「新聞は社会の公器あるいは木鐸」ではなかったのか?
理不尽が何十年も継続しているとしたら、それ自身大きな問題であろう。
堀氏は奇を衒っての発言かもしれないが、「コーポレートガバナンスのプロ」の意見として紹介されいるだけに引っかかる。

産経新聞の花田紀凱氏の「週刊誌ウォッチング」(111119)は以下のように書いている。

いつかは誰かがやらなければならなかったのだろう。
それくらい読売新聞渡辺恒雄“主筆”(正式には球団会長)のワンマンぶりは目に余った。今回は球団のことだが読売新聞内に異を唱える人物がおらず、論調はすべてナベツネさんの言をオウム返しという状態は大マスコミとしては異常だ。

異常な事態を異常だと言えない言論機関。
まさにナベツネ氏は「裸の王様」といえよう。
「コーポレートガバナンスのプロ」の堀氏よりずっとよく問題点を衝いているのではないか。
花田氏曰く

渡辺氏は「球界の紳士たれ」を標榜する巨人にあって、最も紳士らしくない過激な発言を続けている

私は今回の「乱」を、プロ野球革新の好機にすべきだと思う。
「Baseball Journal」というサイトに、「ジャイアンツは誰のものか 」という記事が載っている。

一連の騒動は、渡辺球団会長と清武球団代表兼GMの対立という枠におさまらない。球団親会社と球団の対立という、わが国のプロ野球が抱える構造的な問題がこのような形で噴出した形だ。
・・・・・・
わが国のプロ野球球団は事実上、親会社に実権を握られている。もともと親会社の広告宣伝部門として誕生したことと、今でも多くの球団で親会社に赤字を補てんしてもらっている背景から、球団は親会社の意向には絶対に逆らえない。
さらに残念なことに、球団親会社はその業界では一流企業だが、スポーツ興行では一流とは言い難い。それにも関らず、球団の方針に過剰に口出しすることがある。
・・・・・・
ジャイアンツとタイガースは、すでに経営的に独立している球団だ。決算内容を公表していないため、あくまでマスコミからの情報になるが、両球団とも親会社からの資金援助無しで黒字を計上している優良子会社だ。
つまり、両球団は経営的に、親会社に自分の意見を述べられる立場にあるのだ

横浜ベイスターズは、親会社がTBSからゲームサイト運営会社DeNAに変わった。
今年の日本一・ホークスの親会社は、南海→ダイエー→ソフトバンクと、産業構造の盛衰と軌を一にしてきた。
プロ野球が親会社にとっての広告宣伝機能という位置づけは宿命的とも言えるが、広告宣伝機能は、人気があってこそである。

ジャイアンツの内紛と渡辺会長の理不尽ぶりは明らかにプロ野球にとってマイナス材料だと思う。
日本シリーズのさ中に「清武の乱」騒動が起きたことは残念ではあったが、もはやジャイアンツも横並びの1球団に過ぎない。
「球界の盟主」などと思っているのは、騒動の本人たちだけではないか。

プロ野球人気は、優れた選手のメジャーリーグ流出が一般化したことなどから、低迷化のトレンドにある。
しかし、ゲームが面白ければ、必ず観客は増えるだろう。
落合監督率いる中日ドラゴンズとの文字通りの死闘を制したホークスの秋山監督は、涙を抑えきれないようだった。
優勝スピーチは、選手を思いやるとともに東日本大震災のことにも触れていた。

開幕前に東日本大地震の発生により、計画停電や交通機関などの混乱が続くなかで、ナイター強行しようとしたのがセリーグであったことを思い出す。
その強引、傲慢な態度は、日本シリーズ中に球団内部の争いを繰り広げることと共通するのではないか。

プロ野球も単に親会社の広告宣伝機能を担うというだけでは早晩存在理由を失うことになるに違いない。
球団は親会社からの自立を果たし、新たな歩みを始めなければならないのではないかと思う。

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