避難勧告をめぐって/原発事故の真相(10)
フクシマの原発事故で、アメリカ政府が半径50マイル(約80km)にいる自国民に退避勧告を出したとき、日本政府との対応の違いに戸惑いを覚えた。
「日本政府は、重要な事実を開示していないのではないか?」という疑念が湧いてきたのを覚えている。
⇒2011年3月15日 (火):地震情報と「伝える力」
この疑念は、不幸にして的外れではなかった。
⇒2011年5月 6日 (金):政府による情報の隠蔽と「見える化」/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(22)
日米政府のやりとりの一端が明らかにされつつある。
東日本大震災で米政府が、放射能漏れ事故を起こした東京電力福島第1原子力発電所から際、日本政府が日米同盟への悪影響を理由に勧告を出さないよう要請していたことが分かった。複数の日米関係筋が明らかにした。退避勧告をめぐる日米交渉の具体的な舞台裏が判明したのは初めて。米軍による“トモダチ作戦”が遂行される一方、日米双方がぎりぎりのやりとりを行っていたことが浮き彫りになった。
日米関係筋によると、米政府は原発が水素爆発や火災を起こしていた3月16日、米国民の保護が急務との判断から、在ワシントン日本大使館の藤崎一郎大使を国務省に呼び、キャンベル国務次官補が福島第1原発から半径50マイルにいる米国民に退避勧告を出す方針を伝えた。
・・・・・・
藤崎大使の打電内容を伝え聞いた首相官邸側が在京米大使館側に接触、「米政府が退避勧告を出せば米国への不信感が増大して同盟関係に悪影響が出る」などとして、退避勧告の見送りを要請したという。
これに対し、米側は「政治的影響を議論している悠長な場合ではない。自国民保護は最重要だ。日本国民の理解を得られると確信している」と伝えたという。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/111002/amr11100200590000-n1.htm
この様子は以下からも窺える。
3/15、アメリカは日本にいるアメリカ人に対して、原発から80キロ以上避難せよと勧告を出した。
しかしその80キロは、同盟国である日本がパニックにならないよう控えめで「楽観的な距離」だった。
「最悪の場合、日本のほとんどになるだろう」とアメリカが見ていることがわかる
http://www.youtube.com/watch?v=yPf4UaNMTUs
以下はツイッターからの記録である。
3月18日の枝野幸男官房長官定例会見。
上杉隆氏 @uesugitakashi の質問に対する枝野官房長官回答。
枝野「原子力発電所からの退避指示の内容については、いくつかの国が、日本におられる自国民に対する指示等の内容と、政府が発表している内容が確かに異なっている」
「しかしながら、これは海外におられる自国民保護という観点からは、一般的に求められている水準よりも、より保守的な水準で様々なことを指示するのは、それぞれの政府の当然の対応だと思っている」
「私が同じ立場、つまり、日本の国外で同種の事態が生じて、日本国民の退避について様々な判断をするにあたっては、科学的、客観的に適切だと思われる数値を超えて、様々な指示をすることは当然、自国の政府の責任としてあり得ると思っている」
「日本政府としては、いま私どもが把握している専門家の意見を含めたデータのなかで適切と思われる退避に対する指示等を出している。その数字の違いについては、アメリカ政府の方の中からも日本政府の判断は適切であるという趣旨のご発言も出ていると承っている」
不思議発見なう。
枝野「一般的に求められている水準よりも、より保守的な水準で様々なことを指示」「科学的、客観的に適切だと思われる数値を超えて、様々な指示」。
ルース「(80km)圏外への避難勧告は、米国で同様の事態が起きた場合に準拠」。
あれれ? 以上。
http://togetter.com/li/115169
枝野前官房長官の苦しいレトリックからも、日本政府がいかにして事態を深刻なものにみせないか、ということに努力していることが理解されよう。
しかし実際は、最深刻の「レベル7」という事態になっていたのである。
⇒2011年4月12日 (火):福島はレベル7/やっぱり菅首相は、一刻も早く退陣すべきだ(5)
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