ホームレス歌人・公田耕一/私撰アンソロジー(10)
その人は、あたかも写楽のようだといわれる。
2008年12月8日、朝日新聞の短歌欄に突如として登場。
約9カ月の間に驚異的な入選率の歌を投稿。2009年9月7日を最後として、忽然と消えた。
本名、生没年、出生地などは不明。
確かに写楽に似ている。
東洲斎写楽。
寛政6年(1794年)5月から翌年の寛政7年3月にかけての約10ヶ月の期間だけ活動した謎の浮世絵師。
独特の画風が強い印象を残すが、本名、生没年、出生地などは不明。
未だにその素性を明らかにしようと追求する人が後を絶たない。
⇒2010年12月19日 (日):江戸の仕掛け人-蔦屋重三郎
公田耕一と名乗るその人は、朝日新聞短歌欄の投稿の住所欄に、ホームレスと記載した。
ホームレス歌人・公田耕一、だが姓の正しい読み方すら分からない。
コウデン、クデン、キミタ、コウダ……、人それぞれに読む。
その年の12月は、ことさらに多くの人にとって寒々しかっただろう。
リーマンショックの直後である。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5075.html
2008年9月15日、サブプライムローン問題等により、リーマン・ブラザーズが破綻した。
日本経済にも大きな影響を与え、日経平均株価も暴落し、バブル以降の最安値をつけた。
失業者が増大し、2008年12月31日から翌年1月5日まで、日比谷公園に開設された「年越し派遣村」が話題になった。
そんな中での、自称ホームレスである。
本当にホームレスなのか?
だとしたら、どのような経緯でホームレスになったのか?
作歌のスキルは、いつ、どこで、身に付けたのか?
作風からは相応の教養が感じられもする。
旧かなづかいを自然に使いこなしているのは、意識的に身に付けたスキルなのか、自然に身に付くような年齢の故か?
後者だとすれば私よりも年長者である。
三山喬『ホームレス歌人のいた冬』東海大学出版会(1103)のような追求の書もあるが、いまだ本人確認に成功していない。
誰かが詠んでいたように、まさに「伊達直人公田耕一そのひとを知りたくもあり知りたくもなし」。
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