公務員宿舎問題にみる政治家の(言葉の)軽さ
朝霞の公務員宿舎の建設問題で、当初「いまは特段変更するつもりはございません」と建設計画の見直しは行わない方針だった野田首相も、さすがに世論の激しい批判を受けて凍結を指示した。
野田佳彦首相は3日午後、埼玉県朝霞市で建設中の国家公務員朝霞宿舎について「少なくとも東日本大震災の集中復興期間(2011〜15年度)の5年間は事業を凍結するように」と安住淳財務相に指示した。震災復興のための臨時増税で国民に負担を求めようとしている中、「無駄遣い」との批判が強まっている朝霞宿舎の建設続行は困難と判断した。建設に反対する野党への配慮もあるとみられる。
http://jp.wsj.com/Japan/Politics/node_318255
しかし、今の時点で建設を進めるべきかどうかは瞬間的に判断できる問題だろう。
それを「迷走」といわれるような状態になること自体、民主党の底の浅さ、政治家の軽さを示しているとせざるを得ない。
自民党の鴨下一郎政調会長代理は2日午前、フジテレビの番組で、埼玉県朝霞市の国家公務員宿舎建設をめぐる野田政権の対応について、「前言をひるがえして(建設を)やめます、という話になったら、二転三転だ。迷走としか言いようがない」と批判した。また、「事業仕分けで凍結したんだから、『解凍』するならそれなりの大義名分が必要だ」と指摘した。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2011100200075
野田首相をはじめ、民主党の判断はチグハグとしか言いようがない。
担当の蓮舫大臣は次のように発言した。
蓮舫行政刷新担当相は30日午前の記者会見で、与野党から批判が出ている埼玉県朝霞市の国家公務員宿舎の建設について「行政刷新担当相の私が了としている」と述べ、建設を見直す必要はないとの認識を示した。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110930/plc11093012150011-n1.htm
蓮舫大臣が「私が了としている」から、建設してもOKだというのは、あまりにも不遜というべきだろう。
問われているのは、権限の所在ではない。「了としている」という判断そのものなのである。
事業仕分けの存在意義すら危うくするものである。
それにしてもこれを事業仕分けで100%中止と断言していた責任者である蓮舫の言い訳が噴飯ものだ。
「確かにこの時期の建設再開には批判が来ても仕方が無いが、事業仕分けでは全体として15%もの削減が実行できた。全体としては正解だったと思っている。」
ナニヤラ寝ぼけた頭で聞いていると騙されそうだが、これほど異常で悪質詐欺業者のような言い訳も見苦しい。そもそも事業仕分けとは、個別事案の無駄性について討論する場であったはずが、個別具体な問題性は度外視で、全体的に15%削減だからOKとは呆れ返る。それでは不要な官舎は建設されて、スパコンやロケットなど必要な経費が削減されていても同じ15%なら、何の意味も無いどころか、帳尻合わせの為のおかしな切り詰めが横行する事になり、タコ足食いの批判がますます正当化されるだろう。
http://bluegreen-iza.iza.ne.jp/blog/entry/2444472/
事業仕分けで、「宿舎が真に必要な公務員に限定し、原則として賃貸とすべきだ」との意見が出て、新築を凍結して、宿舎のあり方を検討することになったのは、一昨年のことである。
当時の環境と、東日本大震災の復興にこれから取り組もうとしている現時点の比較においても、限られた財源をどう使うかということに、もっと敏感になるべきではないか。
安住財務相が「周辺の宿舎の売却で差し引き10億から20億円のプラスが生まれるから、これを復興財源にあてる」と説明しても説得性はない。
新築と売却の差額の話を持ち出して、復興に貢献していると胸を張る。事業仕分けでの「原則として賃貸に」という指摘など知らん顔だ。
およそ、「民の視点」は、どこにもない。
http://www.asahi.com/paper/editorial20111002.html#Edit2
民主党の閣僚よ!
もっと重心と目線を低くせよ!
鳩山・菅と2代続けて、人心はもうウンザリしていることに、自分たちも気がついているはずではないか。
加地伸行立命館大教授の言葉を借りれば、
軽いのである、人間として。もちろん、民主党の入閣者のこと。
野田佳彦内閣が発足して8日目、早々の鉢呂吉雄経産相の失言。
死の町、そうだ。だからこそ〈それにどのように対処してゆくか〉その具体的方針を示すのが大臣の役割なのである。それを「死の町」と評するだけでは、〈槐門たりえず〉。
「槐門」とは、閣僚たりうる出自ということ。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110925/stt11092502470000-n1.htm
松本前復興大臣や鉢呂前経済産業大臣は失職したが、山岡拉致担当大臣なども、自分のミッションが分かっていないのではないか?
9月22日の週刊文春や青山繁晴氏のニュース解説などによれば、山岡大臣は家族らと初めて面会した控え室で、とんでもない暴言を吐いたという。
拉致被害者の有本さんが「娘が拉致されたのは1983年です」と告げたのに答えて「それは私の初当選の年だ」と返したのだ。
周囲の家族は唖然とし、場の空気は一変したという。山岡大臣は、集会でもあいさつを終えると早々に退席した。
http://www.youtube.com/watch?v=0B-6s1JnStU
大臣になって舞い上がっている、との評もあるが、人間性の問題のように思う。
『存在の耐えられない軽さ』などという小説のタイトルを思い浮かべてしまう。
言葉は人間だけが持つ道具である。
大事に使うべきだと思うが、言葉は思考の媒体だから、結局は思考が軽いノダろう。
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