日本経済のクァドリレンマ/花づな列島復興のためのメモ(8)
日本経済が「失われたX年」と言われて久しい。
例えばGDP成長率の推移を見ると、下図の通りである。
http://www.tuins.ac.jp/~ham/tymhnt/butai/keizai2/shotoku/prefincm/ch_gnp.html
⇒2011年6月 1日 (水):花づな列島の奇跡
大局的に見て、戦後復興を遂げてからの日本経済には3つのフェーズがあるといえる。
1.1956~73年:いわゆる高度成長の時期
2.1974~90年:石油危機を経て「低成長」に移行した時期
3.1991年~:バブルが崩壊し、事実上成長がストップした時期
「失われた」の起点を1991年と考えれば、まるまる20年間継続していることになる。
リーマンショックからようやく立ち直ろうとしていた矢先、東日本大震災が起きた。
今回の大震災のもたらす影響についてはさまざまな見方があるだろうが、少なくとも短期的のマクロ経済的にはマイナスであることは間違いない。
2011年度のGDP成長率はマイナスを余儀なくされるであろうと見られている。
しかし、震災からの復興を、中長期的な成長のチャンスにできないだろうか、という議論がある。
私もそうあってほしいと念じる者であるが、その可能性ははたしてあるのだろうか?
盛山和夫『経済成長は不可能なのか - 少子化と財政難を克服する条件 (中公新書)』(1106)によれば、いまの日本経済の構造は「クァドリレンマ」の状態だ、ということになる。
「クァドリレンマ」とは聞きなれない言葉だが、ジレンマ→トリレンマ→クァドリレンマである。
4つの問題を解決したいが、それは同時にはできずに、1つは必ず犠牲にせざるを得ない状況、ということである。
上掲書によれば、解決を迫る問題とは以下の4つである。
1.デフレ不況問題
2.財政難問題
3.国の債務残高問題
4.少子化問題
①財政難の克服のためには
A.税収を増やす
ⅰ)経済全体のパイをふやす=GDPの拡大⇔デフレ不況問題(が解決していないから望めない)
ⅱ)増税⇒不況を悪化させる⇒GDPを縮小させる
B.政府の歳出を削減する⇒景気悪化
②デフレ状況を克服するためには
需要の拡大が必要⇒減税か政府支出を増やす⇒財政を悪化
③国債を増発すると
財政的にはプラスだが、債務残高問題が悪化する
④債務残高を減らすためには
税収を増やすか歳出を削減する⇒①の問題
⑤少子化を食い止めるためには
A.出産と育児の費用を国が負担⇒財政難問題
B.若年層の雇用や所得の改善⇒デフレの改善が先決
復興財源をどう捻出するかが問われているが、震災の前からクァドリレンマの状況にあったのである。
それに加えての震災復興である。
自民党の従来の政策、民主党の2年間の実績では、解は見出せてはいないノダ。
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