富士六湖の水文学/花づな列島復興のためのメモ(6)
今年は水文現象から目が離せない。
水は地球を循環する過程で、さまざまな形で人間活動と係りを持つ。
和辻哲郎が『風土―人間学的考察 (岩波文庫)』(7905)において、風土の類型を、モンスーン、沙漠、牧場の3つとしたことはよく知られている。
水資源は人間だけでなく、あらゆる生物に必須の資源であり、その存在の仕方が「風土」を規定する根本要因である。
水は恵みだけでなく、災厄ももたらす。
今年は特にその印象が強い。
大津波、台風12号、13号……
大津波は、日本史に残る被害を遺した。
台風12号等は、紀伊半島を中心に記録的な大雨を降らせた。
⇒2011年9月 6日 (火):台風12号による降水被害/花づな列島復興のためのメモ(3)
台風15号は、日本列島の脆弱化している部分を狙い撃ちした。
⇒2011年9月22日 (木):台風15号と国土の条件/花づな列島復興のためのメモ(5)
これらの台風は、富士山とその周辺にも大量の水を降らせ、その雨は富士山麓地域を潤す。
⇒2009年7月30日 (木):富士山湧水の水文学
大量の雨は当然富士山麓地域の地下水位を上昇させる。
富士山と共に有名な富士五湖。
山中湖・河口湖・西湖・精進湖・本栖湖をいう。
しかし、降水量が多く地下水位の高い年にはプラス1の湖が出現する(10年に1度くらいの頻度)。
今年は、7年ぶりに赤池が出現した。
110925撮影
富士山のふもと富士五湖の一つ、精進湖の近くで幻の池・幻の湖と呼ばれている「赤池」が2011年9月22日に姿を現しました。
この池は精進湖の水かさが増えた時にだけ現れるもので、富士五湖の6番目の湖ということで富士六湖とも呼ばれています。
大きな被害を山梨にもたらした台風15号の副産物でもあるわけです。
前回は7年前に現れました。
http://yamanashinow.blog137.fc2.com/blog-entry-423.html
赤池と精進湖は繋がっているらしい。
各湖の断面高は次のようである。
また、赤池の位置は下図を参照。
http://www.navi-city.com/tokusyu/akaike.html
三島市内の小河川も水量が増加している。
これらの河川はかつては豊富な水量だった。
太宰治の『老ハイデルベルヒ』にも、次のように描かれている。
三島は取残された、美しい町であります。町中を水量たっぷりの澄んだ小川が、それこそ蜘蛛の巣のように縦横無尽に残る隈なく駈けめぐり、清冽の流れの底には水藻が青々と生えて居て、家々の庭先を流れ、縁の下をくぐり、台所の岸をちゃぷちゃぷ洗い流れて、三島の人は台所に座ったままで清潔なお洗濯が出来るのでした。昔は東海道でも有名な宿場であったようですが、だんだん寂れて、町の古い住民だけが依怙地に伝統を誇り、寂れても派手な風習を失わず、謂わば、滅亡の民の、名誉ある懶惰に耽っている有様でありました。
⇒2009年6月18日 (木)」太宰治と三島・沼津http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/238_20005.html
上流域の開発が進んだ結果、太宰の描いたような様子は、時折の増水期しか味わえないことになった。
市内の楽寿園の小浜池も普段は枯山水状態であるが、現在は写真のような状態である。
110925撮影
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